
生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較 ―進まない変革グローバル比較から読み解く日本企業の活路―
本調査では日本における生成AIの導入とその効果の実態を明らかにするとともに、米国・英国・ドイツ・中国との比較を通じて、日本企業の構造的な課題を考察します。また、効果を上げている企業に共通する成功要因を抽出し、日本企業が変革を実現するための具体的な示唆を提示します。
2021-08-05
M&A(合併・買収)で日本企業の鬼門になっているのがPMI(買収後の統合作業)だ。方法論は確立されてきているものの、マニュアル通りに進む生易しいものではない。旧知のメンバーがいない、現場感覚がない中で、自分が知らない会社を経営し、さらに価値を向上させることができるか。PMIは買収者のありとあらゆる力が試される総合格闘技である。
この戦いを勝ち抜くために、AI(人工知能)は必要不可欠な存在となりつつある。実際の活用は次の3つのステップに分けて進めることがポイントである。
ステップ1はAIの土台となる「データの整備と見える化」だ。企業のデータはフォーマットが異なっていたり、各システムに分散されていたりする。使えるようにするには想定よりも手間と技術が必要である。データを整備し、モデル化できれば、経営ダッシュボードを構築し、可視化する。
経営ダッシュボードとはKPI(主要成果指標)をモニタリングできる経営ツールだ。昨今のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを活用すれば、ビジュアライズできる。一度構築すれば、毎月データが更新されても半自動で結果を反映できる。何百枚のデューデリジェンス(資産査定)リポートよりもよっぽど活用度が高い。
ステップ2は「シナジートラッキング(買収効果の追跡)」だ。コスト削減や新たな戦略が着実に進んでいるかを確認する。誰が、何を行い、どのような効果が出たかを、通常の管理会計とは違う軸で捉える必要がある。日本企業は、欧米企業に比べて、ステークホルダー(利害関係者)への説明責任に対する認識が薄い傾向がある。今後は買収後の効果を検証し、対外的に説明する必要性が増すであろう。
これら2つのステップを踏んだうえで、ステップ3として「AIによる予測・判断・最適化」をする。使用場面はAIを用いて需要を予測し在庫量を最適化したり、離脱する顧客を予測し対応するオペレーションを強化したり、様々である。海外子会社のガバナンス(企業統治)を強化するため、調逹や経費などのキャッシュアウト(資金流出)の妥当性をAIに判断させ、不正を予防するといった取り組みも進んでいる。導入にあたっては、ステップ1、2を踏まえて課題と効果を明確化し、優先順位の高いものから取り組む。
これら3つのステップはPMIに限らず、日常の経営マネジメントそのものである。ただ、土地勘のないアウェーの環境となるPMIでは客観性と網羅性を兼ね備えるAIは最高のパートナーになり得る。その意味でPMIは次世代の「AI経営」にいち早く挑戦する絶好の機会と言える。そしてその経験値をグループ全体に逆輸入する発想を持つべきである。
ステップ1「データの整備と見える化」 |
経営ダッシュボードを構築し、分散しているデータを集積・自動化・リアルタイム化 |
ステップ2「シナジートラッキング」 |
目的を設定し、その進捗、効果を管理会計軸を超えた部門横断視点で測る |
ステップ3「予測・判断・最適化」 |
AIで最も効果の高い要素を予測し、意思決定・アクションを最適化する |
※本稿は、日経産業新聞2021年4月2日付掲載のコラムを転載したものです。見出しおよび図表は同紙掲載のものを一部修正/加工しています。
※本記事は、日本経済新聞社の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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