
解説:「2024事務年度金融行政方針を踏まえた金融機関の内部監査のポイント」
2024年の金融行政方針が8月30日に公表され、内部監査に関しては、昨年追加された高度化に向けた取組が業界横断的なモニタリング方針が本年も継承されています。これを踏まえ、内部監査部門が今後の監査方針等を検討するにあたって着意すべきポイントを紹介します。
2021-08-06
近年、グローバル化の進展やクラウド活用の拡大といったテクノロジーの高度化によって、企業活動の推進にあたってはパートナー企業、ベンダー、サービス提供会社などの委託先(サードパーティ)が拡大する傾向にあり、それらを適切に管理することは経営者にとって喫緊の課題となっています。これに伴い、各国の規制当局は金融など各業界の企業に対して、サードパーティに関する包括的な管理体制の構築を求めています。
米金融当局(FRB、FDIC、OCC)は2021年7月、これらの当局が監督する全ての銀行(banking organization)を対象とする「サードパーティリスク管理に関するガイダンス案」(以下、「ガイダンス案」)の市中協議を開始しました*1(市中協議は9月中旬締切)。サードパーティリスク管理については、過去にFRB、FDIC、OCCがそれぞれ異なるタイミングで個別のガイダンスを発出していましたが、今回のガイダンス案はこれら3当局の既存のガイダンス内容の整合性を図る目的で策定されており、OCCが2013年10月に発表したガイダンスの内容を概ね踏襲しています。
ガイダンス案は、「銀行は、サードパーティの利用をもって、安全かつ健全なアクティビティの遂行または関連法規制への適合性に係る責任を免れるものではない」としています。また、「各々の銀行はサードパーティとの関係から生じるリスクや複雑性のレベルに応じてサードパーティリスク管理プロセスを構築すべきである」としたうえで、サードパーティリスク管理をライフサイクルで捉え、ライフサイクルの各局面に適用される原則を以下のとおり列挙しています。
銀行のサードパーティの拡大や多様化に伴い、企業のリスクは変化し、同時に高まっており、米3当局によるガイダンスの統一は、サードパーティリスク管理に対する当局目線の高まりを表していると考えられます。なお、ガイダンス案はサードパーティとの関係を、必ずしも書面での契約や金銭授受の発生の有無を伴うものではない、あらゆるビジネスアレンジメントとして位置付けています。そのため、今後は日本の金融庁のスコープも、現在の外部委託からより広範な概念であるサードパーティに広がっていくことが考えられます。また、ガイダンス案では「サードパーティリスクに対しては継続的なモニタリングが不可欠な要素である」とされており、日本国内においても銀行のモニタリングのあり方が、定期的なものから継続的なものへと、あらためて議論される可能性があります。一方、サードパーティが個々の実務ごとに散らばっている現状に鑑みると、銀行の2線・3線がどのようなモニタリング態勢によってサードパーティリスクを総合的に捉えていくかも重要になってきます。
1FEDERAL REGISTER, 2021「Proposed Interagency Guidance on Third-Party Relationships: Risk Management」
https://www.federalregister.gov/documents/2021/07/19/2021-15308/proposed-interagency-guidance-on-third-party-relationships-risk-management
村上 美樹
スーパーバイザー, PwCあらた有限責任監査法人
※法人名・役職などは掲載当時のものです。
2024年の金融行政方針が8月30日に公表され、内部監査に関しては、昨年追加された高度化に向けた取組が業界横断的なモニタリング方針が本年も継承されています。これを踏まえ、内部監査部門が今後の監査方針等を検討するにあたって着意すべきポイントを紹介します。
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