契約の遵守に関するモニタリング

企業がグローバル市場で競争優位を確立するため、他の企業と戦略的に提携、または連携することは、現在の市場においては一般的であり、時に不可欠です。

他の企業と提携・連携する際に締結する契約の類型には、ジョイントベンチャー契約(合弁契約)、ライセンス契約、代理店契約、サプライヤー契約、販売契約などさまざまなタイプのものがあります。これらの契約には、提携・連携の目的を達成するために必要な条項がいくつも含まれますが、この契約を相手方が遵守していると自信を持って言えるでしょうか。契約には通常、契約相手に対して契約の遵守状況を確認するための監査条項が含まれています。この監査条項を行使し、契約相手が契約書の内容を適切に遵守しているかを検証・分析することは非常に重要です。

契約遵守のモニタリングを実施することで、本来支払われるべきだった収益やマージンを遡って回収し、収益性の改善を図れるなど、企業の業績に直接プラスの影響を及ぼす場合もあります。もちろん、相手方が契約を遵守し、適切に支払いを行っている場合もあります。しかし収益を回収する以外にも、自社製品の取り扱いや管理方法についての規定や、保管場所といった品質を担保するために必要な条項など、契約において遵守すべき事項は数多くあり、それらを確認することは顧客の信頼にもつながります。契約遵守に係る取り組みは収益性の改善に寄与するだけでなく、顧客からの信頼を得ること、最終的には株主価値を守ることにつながります。

株主をはじめとする各利害関係者の利益を重要視する日本のコーポレートガバナンスにおいて、契約遵守に向けて真摯に取り組むことは株主などの期待に応え、戦略的優位性を獲得するために重要であると言えます。

PwCのアプローチ

PwCのフォレンジックサービスでは、ライセンス契約に基づくロイヤリティ監査(ライセンス監査)をはじめ、企業間のさまざまな類型の契約の遵守状況のモニタリングを支援しています。ビジネスパートナーが契約によって定められた方法で適切に事業や取引を行っているかを、独立した第三者が客観性を踏まえて確認することで、今まで気付かなかった契約の不履行や、契約内容の解釈の違いなどを発見することが期待できます。また海外の複数の国にまたがる複雑な契約についても、PwCのグローバルネットワークを活用することで効果的かつ効率的に調査することができます。

ビジネスパートナーが世界のどこで事業を行っていたとしても、契約の遵守状況をモニタリングする必要があります。PwCのフォレンジックサービスは、あらかじめ高リスクの対象を特定するフォレンジックアプローチによって、費用対効果の高い方法で、高リスクな契約相手のリスクを低減することを支援します。

PwCのアプローチ

契約の遵守に関するモニタリング事例

合弁事業契約

日本のメーカーが中国企業と現地合弁会社を設立したものの、当初の予想を下回る業績で推移していました。合弁会社の従業員はほとんどが中国パートナー企業からの転籍で、日本からは技術責任者を駐在させているのみでした。業績低迷の原因や経営実態について問い合わせても納得のいく説明は得られなかったため、合弁事業契約に基づく調査として、PwCのフォレンジックサービスが下記手続きを実施しました。

  • 中国パートナー企業経由で購入している原材料について、市場価格との乖離を検証。
  • 他にも中国パートナー関連企業に対するさまざまな名目での支払いが継続的にあったため、各項目に関する当該関連企業との契約書を閲覧し、合理性の検証および支払い記録を検証した。結果として下記事項が発見されました。
    • 中国パートナー企業経由で購入している原材料については、市場価格よりも平均して約10%高い単価で購入されていました。
    • 合弁企業は中国パートナー企業のITインフラを利用していたため、高額のレンタル料を支払っていました。
    • 中国パートナー企業が保有する倉庫について、使ってもいないのに毎月一定額の倉庫料を支払っていました。
    • 中国パートナー企業に対してマネジメントフィー(Management Fee)という名目で、毎月一定額の支払いがありましたが、具体的に提供されたサービス内容は確認できませんでした。

その後クライアントである日本企業は、上記の調査結果に基づき中国パートナー企業と折衝を重ね、合理性のある項目についてのみ支払うことで合意しました。

ライセンス契約(ライセンスマネジメント)

世界各国に多くのライセンシーを有するクライアント(ライセンサー)から依頼を受け、ライセンシーに対するロイヤリティ監査(ライセンス監査)を、ライセンシーの所在国にあるPwCのメンバーファームとともに実施しています。クライアントと事前に協議し、各ライセンシーからの報告書や過去の経緯などを確認した上で、監査上注意を要するリスクエリアを特定し、さまざまな手続きを支援しています。

  • ライセンシーの関係部署の担当者にインタビューを実施し、ライセンシーにおけるロイヤリティ申告金額の計算プロセスを理解
  • ライセンシーがロイヤリティの計算に使用したデータの正確性と網羅性を検証。同時にライセンサーが許可していないロイヤリティ対象製品を販売していないかを確認
  • ライセンシーがロイヤリティ報告対象としていない製品の仕様書などを確認し、ロイヤリティの報告漏れがないかを検証
  • ロイヤリティ金額を再計算し、ライセンシーが契約書に遵守してロイヤリティを計算しているかを確認

これらを行うことで、例えば、ライセンシーがライセンサーの許可を得ずに製造・販売していたロイヤリティ対象製品があること、一部のロイヤリティ対象製品の出庫を把握していないことなどを発見することができます。このようなケースでは、クライアントは、ロイヤリティ監査(ライセンス監査)を通じ、過去の過少報告分のロイヤリティを回収するだけでなく、契約に対する解釈の齟齬を是正することで、将来にわたっての収益性の向上を実現することが可能となります。

販売契約

日本での販売を日本企業に委託しているグローバル企業(クライアント)から依頼を受け、委託先を訪問し、委託先が委託元との販売契約で定められている条項に遵守して販売を行っているかどうかを確認しています。具体的には、下記の手続きを支援しています。

  • 各委託先と締結している販売契約書と覚書を確認
  • 各委託先の営業担当者、サプライチェーンマネジメント担当者にインタビューを実施し、営業プロセス、販売後の導入支援、アフターサービス、担当者の稼働時間管理、請求プロセスなどについて確認
  • 商談議事録、発注書、注文書、請求書、稼働時間管理表、配達証明書、経費精算書などの証憑類をサンプルベースで確認
  • 製品の棚卸を実施
  • 上記の手続きを通して発見した契約違反事項について報告書を作成

これらを行うことで、例えば、一部の委託先が契約に違反し、委託元からの許可なしで業務を再委託していることや、委託元に過大請求をしていることなどを発見することができます。このような結果を踏まえ、クライアントは過大請求された分の返金を受けられる可能性があります。

サプライヤー契約

欧州に本拠地を置くサプライヤーと、日本の大手メーカーとの間のサプライヤー契約に関する契約遵守モニタリングサービスを実施しました。具体的には、下記の手続きを現地にて実施しました。

  • サプライヤー契約に記載されている調達価格の計算式に則って、調達価格が算定されているかについて検証
  • サプライヤーの購買担当、技術担当、営業など関連する部署の人員に対するインタビューの実施
  • 調達価格算定のプロセスの確認と、サンプルベースによる証憑類の確認
  • サプライヤー契約に記載されている原料メーカーから、正規手続きを経て購入されているかどうかについて検証

結果として、算定プロセスにおける計算式のミスや、契約書に記載されている為替レートと違うレートを使用したことによる差額、および未承認の原料メーカーからの原料を使用した契約違反などが発見されました。

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主要メンバー

山上 眞人

執行役常務, PwC Japan有限責任監査法人

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平尾 明子

ディレクター, PwCリスクアドバイザリー合同会社

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奈良 隆佑

ディレクター, PwCリスクアドバイザリー合同会社

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