サプライチェーンにおける ESG: ESG対策で先手を打つ

サプライチェーンの運用におけるESGの重要性がますます高まる中、企業にはESGに関する施策としてできることがまだ多くある

近年、環境・社会・ガバナンス (ESG) に対する関心が高まっています。長年にわたって安泰だと考えられてきた多くの企業も、昨今はサプライチェーンの混乱による負担を感じています。ガバナンスと規制の変化、進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による危機、政治的対立の間で、ESGは中心的な課題となりつつあります。

PwCは、「サプライチェーンのデジタルトレンド調査 2022」として、サプライチェーンの専門家からCHRO(最高人事責任者)やその他の経営幹部まで、244人のグローバル オペレーション部門および情報部門のリーダーを対象に調査を行いました。その結果、規制の変更に対応し、サプライチェーン機能に対するリスクを特定することが、ESG関連の最優先課題であることが明らかになりました。しかし、多くの企業は競合他社に差をつける機会を逃しています。

以下が調査結果の概要です。



サプライチェーンにおけるESGの最大の課題は?

絶え間なく変化するESG規制を常に認識しておくこと

サプライチェーンに対する ESG 関連の最重要課題として挙げられたのは、規制変更への対応です。

  • 回答者の66%は、関係する地域の急速に変化する法令・規制枠組みを常に認識しておくことが現在の課題であると述べています。
  • 経営幹部の約4分の1(23%)が、ESG規制の変化を重大な課題と考えています。

スコープ3排出量を削減するには

気候への影響に関して企業が直面する主な懸念事項の1つは、スコープ3排出量の削減です。スコープ3排出量とは、自社で直接生み出された排出や購入したエネルギー消費を通じての排出ではなく、バリューチェーンの他の部分、特にサプライヤー、顧客、さらには従業員から生み出される排出のことです。

気候変動に関するレポーティングを徹底し、脱炭素化のメリットを享受するには、企業は次のことを行う必要があります。

  • スコープ3排出量を確実に測定するプロセスを確立する。
  • 顧客からのスコープ3の要求と、それが調達、RFP(提案依頼書)、さらには幅広い消費者の意識にどのように影響するかを理解する。
  • 国境炭素調整措置について理解を深め、ビジネスにどのように関係するかを把握する。
  • サプライヤー各社との対話を開始して、各社が二酸化炭素排出量削減の重要性を理解できるようにし、協力して脱炭素化に取り組む。
  • 気候変動やその他の災害によるサプライチェーンのリスクをモデル化して、企業の脆弱性を把握するのに役立てる。

スコープ 3排出量に関しては、環境省のウェブサイトをご参照ください。

今後取り組んでいくべきこと

上述した全ての課題は、多くの企業がESGに関していまだ守りの姿勢であることを示唆しています。

しかし、企業は今後の課題と機会を捉えて、攻めの姿勢に転じる必要があります。そのために必要ないくつかの重要な手順を以下に示します。

  • 政策の変更に関しては概要レベルでも掴んでおきましょう。ビジネス展開している全ての市場でその地域の法令・規制に準拠するように努めてください。
  • 自社が多様性・公平性・包括性の課題にどのように対処しているかだけでなく、「サプライヤーが何をしているか?」「サプライヤーの方針が自社にどのような影響を与えるか?」について考えましょう。目先のリスクと長期的なリスクの両方について戦略的に考えるよう心がけてください。
  • 同様に、気候リスクとそのモデリングについてしっかり検討しましょう。自社の施設のリスクシナリオ(火災、干ばつ、洪水) をすでにモデル化している企業は、全てのサプライヤーに自社と同様の取り組みをするように求める必要があります。社内だけに留まらず、バリューチェーン全体でのESG の循環性と持続可能性への道筋を検討するようにしましょう。

ESGの影響によって企業の成長やサプライチェーンの在り方が変化し続ける中、私たちはビジネスの機敏性と協調性を維持できるような、新しく、革新的な戦略を選択する必要があることは明らかです。PwCは企業のESG変革の次の一手を打てるようさまざまな支援を提供しています。

調査方法

2021年11月から2022年1月にかけて実施されたPwC の「サプライチェーンのデジタルトレンド調査」では、エンタープライズテクノロジーとエマージングテクノロジーの活用を含めたサプライチェーン管理のオペレーティングモデルにどのように取り組んでいるかを分析するため、サプライチェーン業務との関わりが深い業種を選び、オペレーションおよびITの責任者、経営幹部、その他のサプライチェーン担当役員244名にを対象に調査を行いました。

調査対象の業種は、航空宇宙、自動車、化学その他の製造業・工業製品、消費者市場・小売業、エネルギー、公益事業、鉱業、医薬品・生命科学、テクノロジー、メディア、通信などです。

※本コンテンツは、ESG in supply chains: Early integration can bolster your businessを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

主要メンバー

田中 大海

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

藤倉 麻実子

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

本ページに関するお問い合わせ

We unite expertise and tech so you can outthink, outpace and outperform
See how