データトラストリーディングカンパニーが示すデータ価値の創出・保護方法

少数の企業グループがデータトラストの構築方法をリード。 セキュアかつ倫理的にデータから価値を引き出す能力を高める手法の指針に。

アプリをクリックするだけで入手できる地元のさまざまなパーソナルサービス、1日の移動をサポートする音声アシスタント、街に繰り出せばすぐにお気に入りブランドから届く自分宛てのメッセージ、持病を考慮してカスタマイズされた効果的な治療計画―こうしたリアルタイムでカスタマイズされた経験は、データによって可能となっています。

データは、モノ、人、組織のユビキタスな接続から無尽蔵に生成されます。アナリストは、さまざまな経験、産業、都市を変えていく力を持つデータの価値は数兆米ドルに達すると試算しており、これは1つの経済大国に匹敵する規模です。

データ価値評価の正式なプロセスを整備していない企業は少数派で、PwCが実施したDigital Trust Insights調査において、回答者の3,500名以上(72%)が、既にそういったプロセスを整備していると述べています。

調査の回答結果にて、データ投資で目指す目標として最も多かったのは「データを活用した製品やサービスという形で顧客へ業界最高の価値を提供すること」(41%)であり、それに続いて多かったのは「業界で最も効率的な運営を行う組織になること」(35%)でした。

では、そうした野心的な目標の達成を阻む最大の課題は何か。データ品質の信頼性不足がまず挙げられますが、さらに重大な課題は、データの奪取や漏えいを防ぎ、データの完全性とデータドリブン型のプロセスと意思決定を保護し、プライバシーリスクを管理する能力の不足です。「企業は責任を持ってデータを取り扱っている」と考える消費者が25%にとどまっているという数字からも、データ保護への注目が高まっていることが分かります。

こうした背景から、今や、単なるデータ戦略ではない「データトラスト戦略」へと移行する時代が到来しているといえます。価値創出の可能性、例えばデータを活用した新製品・サービス創出方法のみに注力するのではなく、プライバシー侵害対策コストや不正確なデータに依存するリスクなど、価値破壊リスクの低減に取り組むことも不可欠です。

「データの価値評価を行う正式なプロセスがある」と答えた企業のうちの37%が、同プロセスにおいてデータプライバシーチームを継続的に関与させている、と答えています。これらの企業がまさにデータトラストリーディングカンパニーです。

あなたの組織はデータトラストリーディングカンパニーですか?

「データの価値評価を行う正式なプロセスがある」と答えた企業のうち37%が、同プロセスにおいてデータプライバシーチームを継続的に関与させています。

データトラストリーディングカンパニーの登場

データトラストリーディングカンパニーでは、新製品やサービスの開発から、データドリブン型コスト対策によるコスト削減、買収先の検討、生産性向上施策の検討など、企業のあらゆる取り組みにおいてデータ価値評価の統制が行われています。

どのようなデータを使っているか、企業活動の中でどのようにデータを活用しているかにかかわらず、こうしたデータトラストリーディングカンパニーには1つの共通点が見られます。いずれの企業も、データを活用した収益(bottom line)の改善に長けている点です。例えば、データトラストリーディングカンパニーの61%が、データを活用して事業活動の効率化を成功させています。それ以外の企業も含めた全体で見ると、同数値は46%まで低下します。その結果として、ROI(Return on investment)についても、データトラストリーディングカンパニーのROI(24%)とデータトラストリーディングカンパニー以外の企業のROI(7%)では、3倍以上の差が生じています。

データトラストリーディングカンパニーが秀でている点はこれだけではありません。データの増加とともに、プライバシーやデータを保護する規制も増加していますが、データトラストリーディングカンパニーは、こうした規制を障害ではなく機会と捉えています。彼らは組織内の信頼構築およびデータの集中管理を確実に行い、コラボレーションの促進につなぐことができています。PwCが調査を行ったデータトラストリーディングカンパニーの75%以上が「規制は事業活動の円滑化と迅速化を進めるのに役立つ」と答えています。

データ価値評価にデータプライバシーチームを関与させるべき理由

顧客データ(プロファイル、トランザクション、選好傾向、行動)の価値は、そのデータを所有し、利用する組織によって大きく変わります。また、コンテキストや、組織がデータに何を望み、データを用いて何を実行できるかによっても変わります。

こうした理由から、データ価値評価は習熟すべき重要なスキルです。所有するデータにどれ程の価値があるか?新しいデータを入手するのにどれ程の費用をかけるべきか?他のデータと組み合わせた場合、データの価値はどれ程増加するか?データ保護にどれ程の費用(収益の何割)をかけるべきか?

これらの問いに正しく答えるためには、データ価値評価を支援できるデータプライバシーチームが必要となります。データの所有と利用には責任が伴い、最終的には組織自体の価値にも影響をもたらします。現在、多くの規制が、データの処理方法(コンプライアンス関連コストが発生する)、データの利用制限(商業的利用の可能性が低下する)、データの損失またはデータ侵害の危険性を放置した結果に対する責任(リスクおよびこれに伴うコストが増加する)を定めています。プライバシー関連法案が続々と制定されているため、世界各地のプライバシー規制に関する情報をリアルタイムに収集・一覧化し、それに依拠することが重要です。

価値評価にデータプライバシーチームの協力が必要となる意思決定の1つは、データ取引に貢献し、利益を得る場合です。例えば、医療情報取引の場合、提供者の個人データセットよりもはるかに規模の大きい母集団データを使用します。カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)は、消費者に対するデータ提供者/データ利用者双方の義務を定めています。

もう1つの意思決定は、データ資産がディール価値を左右する重要な要因となるような、ディールをまとめる方法を検討する場合です。例えば、AIを入手するディールの場合、システムに学習させるのに十分な品質のデータをAIに供給することを目的として、さまざまな調整を行う必要があります。また、EU一般データ保護規則(GDPR)は、買収企業が被買収企業の消費者データ保護義務を果たせなかった場合、前者に罰金を科す権限を当局に認めています。

ディール事業統合計画では、顧客から自身のデータを要求された場合の対応能力など、運用面での影響も考慮する必要があります。2019年10月に実施した、CCPAに対する企業投資計画および方針に関するPwCの調査では、調査対象企業の3分の2が、1日あたり500件以上の消費者からの問い合わせに対応することが想定されると回答し、調査対象企業の11%が、1日1万件以上の消費者からの問い合わせに対応することが想定されると回答しました。こうした理由から、CCPAへの準備に関連したオートメーション化への支出・投資が増加しています。

データトラストリーディングカンパニーの5つの特徴

PwCの分析によれば、データトラストリーディングカンパニーは、5つの領域で秀でています。セキュアかつ倫理的に正しい方法で、データから価値を引き出したいと考えている企業にとって、データトラストリーディングカンパニーの取り組みは1つの指針となるでしょう。「データのさらなる活用」への意欲が高まる中、プライバシー関連規制が確立されているため、組織内に生じる規制対応に関する神経質さに注目していた専門家にとって、これらの特徴は特段驚くものではありません。むしろ、これらの特徴が示しているのは、データ保護・プライバシー関連規制に対して、協調的アプローチがいかに有用かという点です。データトラストリーディングカンパニーは、規制を障害として恐れるのではなく、機会として歓迎しています。

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データトラストリーディングカンパニー:

1.データの価値評価におけるデータプライバシーチームの継続的な関与がある

新たなデータドリブン型ソリューションにより、新たな脆弱性も生じる。データ開発プロセスにリスク管理を組み込むことにより、データトラストリーディングカンパニーは潜在的課題を特定し、大惨事の発生を未然に防いでいます。例えば、ハイパーパーソナライゼーションの取り組みは、身元確認・検証ソリューションによって保護することができます。デジタルツイン上でハイリスクハイリターンのシミュレーションを行うことにより、現実世界のモノに壊滅的な影響を与えるデータ操作を阻止できます。また、AI関連の取り組みについても、アルゴリズムが組織(そして社会全体)の価値観に沿った意思決定を行えるよう、責任を持って実施されています。


2.データ価値評価のプロセスを確立している

データトラストリーディングカンパニーは、効果的にデータ価値評価を行うだけでなく、データセット全体について一貫した価値評価を行うプロセスを確立しています。既にプライバシーデータの問題に取り組み、データ収集の経験も豊富である医療・金融サービスなどの業界でさえ、データ価値評価に関して、必ずしも先進的なレベルに達してはいません。

データトラストリーディングカンパニーは、各データ要素の限界費用便益分析を行い、入手する価値のあるデータを決定します。これは、上層部による未検証の仮定だけに依拠するのではなく、投資に対するリターンを示す上で役立ちます。データ価値評価を適切に実施した場合、サプライチェーンの適切な優先順位付けなど、事業運営面に直接的な効果をもたらすことも可能です。

今後、データトラストにおいてはデータ価値評価方法を高度化する必要があります。CCPAは企業に対して「消費者データの価値評価においては、妥当かつ誠実な方法を用いること、またその方法を文書化すること」を求めています(§999.337)。これにより、業界標準がほぼ存在しない消費者データ戦略およびそれに対応する財務モデルを形式化する取り組みの先駆けとなることが期待されます。


3.データの倫理的利用に関する先進的なプラクティスを採用している

データトラストリーディングカンパニーは、データ利用に関する計画だけでなく、プラットフォームへの統合に関する計画について概要を示したデータ戦略を定めています(次の特性を参照)。また、その計画について、全体的な戦略ビジョンとのすり合わせを行うとともに、データに対して価値ベースのアプローチを採用しており、これは、自分たちにとって必要なデータのみ保存し、そうでないものは削除するということを意味します。また、彼らはデータの倫理的な使用を保証するために、組織全体で責任を定義しています。データトラストリーディングカンパニーは、こうしたプラクティスの一環として、データの保護、管理およびガバナンスを強化・推進する技術を採用しています。

生体認証センサー、顔認識、感情認識AI、自律型デバイス・機械をはじめとするさまざまなテクノロジーが追い風となり、組織は今後、価値を明確化し、制限を定めるとともに、プライバシーに関する誓約事項や事前に表明した利用目的に厳しい目を向ける消費者への対応を行っていくことになります。当然、こうした取り組みにはトレードオフも存在する。PwCのDigital Trust Insights調査によると、自分たちの利益とプライバシーのどちらを優先するかという質問に対して、回答者の60%が顧客のプライバシー、34%が利益を優先する、と答えています。


4.データプライバシーとセキュリティの分野における先進的なプラクティスを採用している

データトラストリーディングカンパニーは、セキュリティとプライバシーをシステム、製品、サービスに組み込む設計ツールを作成しています。また、リスク評価・管理策テストのための包括的なデータマップを作成し、データの価値変化を継続的にモニタリングして必要となる保護水準の再評価を行っています。彼らは、ベンダーがデータ処理、セキュリティ、プライバシーについて求められる基準を確実に遵守するよう、積極的な管理も行っています。

かつてデータベースは、データの保存、ソート、検索が可能であるという理由から重宝されてきました。しかし、いまだにデータベースに依存している企業は、「時代遅れのツール」を使っています。データベースの場合、その静的性質のため、収益への貢献度は限られます。それに代わるものとして、よりコラボレーティブなプラットフォームの開発が必要となります。このプラットフォームは、データの欠落だけでなく、品質、利便性、セキュリティ、潜在的リスクに関する欠落もピンポイントで特定可能な、真のデータ検出を実現します。こうしたプラットフォームを利用することで、組織は、未加工情報を信頼性の高い、事業に不可欠なデータへと継続的に変換していくことが可能となり、これが成長の基盤にもなり得ます。信頼できる唯一の情報源(single source of truth)を提供することで、プラットフォームは、組織の戦略的目標に基づくデータ破壊の判断基準にもなります。


5.部門横断的な協力体制を築いている

多くの企業では、データ管理の責任はさまざまな役員に分散しています。データトラストリーディングカンパニーは、データの理解およびデータの倫理的利用プロセス開発を行うために、部門横断型データガバナンスチームを設けています。

信頼できないデータは負債であり、信頼できるデータは重要な資産です。データトラストリーディングカンパニーでは、(ビジネスサイドからの)価値創造者と、(リスク、IT、サイバーセキュリティサイドからの)価値保護者の双方を参画させて、顧客、社員、規制当局、企業のニーズを満たすデータポリシーとプラクティスを策定しています。

ネクストステップ―データからより迅速に、より大きな利益を得るために

組織内の意思決定者が、所有するデータやそのデータ保護能力を信頼できない場合、データは役に立たないだけではなく、むしろリスクの源になる。不正確またはセキュアではないデータに基づくビジネスモデルを構築する企業は、規則違反や規制当局による調査、会社の評判へのリスクを負うことになります。PwCが実施したIoTに係る調査によれば、コネクテッドデバイスおよびソリューションへの投資規模が大きい企業ほど、プライバシーに対応する具体的な取り組みを行っている傾向が強いです。その多くが、AIとIoTが顧客のプライバシーにどのような影響をもたらすかについてのポリシーを策定しているか、データプライバシー監査を実施しています。

データトラスト戦略は、データを継続的成長の原動力へと変えるものです。データトラストは時間の経過とともに要求も変化するものであり、データの取得、保護および削除は終わりなきプロセスです。

PwC US

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