ESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2026年3月)

「ビジネスと人権」に関する行動計画の改定およびEUにおけるオムニバス法案に関する状況のアップデート

  • 2026-03-25

近時、日本を含む世界各国において、ESG/サステナビリティに関する議論が活発化する中、各国政府や関係諸機関において、ESG/サステナビリティに関連する法規制やソフト・ローの制定または制定の準備が急速に進められています。企業をはじめさまざまなステークホルダーにおいてこのような法規制やソフト・ロー(さらにはソフト・ローに至らない議論の状況を含みます。)をタイムリーに把握し、理解しておくことは、サステナビリティ経営を実現するために必要不可欠であるといえます。当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターでは、このようなサステナビリティ経営の実現に資するべく、ESG/サステナビリティに関連する最新の法務上のトピックスをタイムリーに取り上げ、その内容の要点を簡潔に説明して参ります。

今回は、過去のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターで紹介した、①「ビジネスと人権」に関する行動計画の改定(2025年12月)および②EUにおけるオムニバス法案(2026年2月)に関して、それぞれその後のアップデートについてご紹介します。

1. 「ビジネスと人権」に関する行動計画の改定

2025年10月、令和8年度(2026年度)から開始する「ビジネスと人権」に関する行動計画の改定版の原案1(以下「新計画原案」といいます。)が公表されました。新計画原案は、パブリックコメント(以下、当該パブリックコメントを「本パブコメ」といい、これに対する回答2を「パブコメ回答」といいます。)を経て、2025年12月24日、ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議において、「『ビジネスと人権』に関する行動計画(改定版)」3(以下「新計画確定版」といいます。)として承認されました。

当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2025年12月)4では、新計画原案について紹介していましたが、一部表現等について調整の対象となっている部分はある(新計画原案につき、記載の趣旨の明確化や、異なる解釈が行われる余地のある記載の削除などが行われています)ものの、その記載の大部分は、新計画確定版においても妥当しますので、当該ニュースレターをご参照ください。一部新計画原案から、修正等が行われている点としては、例えば、以下のような点が挙げられます。

①企業による人権尊重の取組に関する位置づけについて(第1章3):企業による人権尊重の取組の位置づけについて、原案においては、「新計画においても、こうした行動計画の策定目的及び位置づけは変わらない。新計画の実施に当たっては、企業による人権尊重の取組を、社会貢献活動やコンプライアンスとしての捉え方と合わせ、企業の持続的・安定的な成長に寄与し得る行動として位置付けて行くことも重要である。」と記載されていたところ、本パブコメにおいて、「『社会貢献活動やコンプライアンスとしての捉え方と合わせ』を削除すべき。人権への取組は企業活動を行う上での大前提であるという認識を示すべき。」という趣旨のコメントが多数寄せられたということです(本パブコメ4(1)No.8)。かかるコメントを踏まえ、当該部分が修正されました。

②企業における人権尊重の責任と経済合理性について(第1章3):原案における「仮に、企業による個々の人権尊重の取組が、短期的に一企業における経済合理性にそぐわない場合でも、サプライチェーン上の脆弱な立場の人々の人権への負の影響が生じることがないよう、政府が人権保護のため必要な施策を講じて補完することが必要となる場合も想定される。」という記載について、「企業に課される『人権尊重責任』は、『経済合理性』に関わらず存在する。『経済合理性』をめぐる不明点を解消するため、下記の部分を全面的に削除、あるいは誤解を招かないよう全面的に修文すべき。」との趣旨のコメントが多数寄せられたということです(本パブコメ4(1)No.9)。かかるコメントを踏まえ、当該記載は削除されています。

③政府から企業への期待表明の部分における記載の調整(3章):新計画原案において、「具体的には、企業は、指導原則に沿って、その人権尊重の責任を果たすため、(1)人権方針の策定・公表、(2)人権DDの実施、(3)自社が人権への負の影響を引き起こし又は助長している場合における救済が求められる」と記載されていた(新計画確定版においても、一部調整の上で維持されている)ところ、その後の部分に、「自社の事業等が人権への負の影響に直接関連している場合は、影響力の行使や強化をし、又は支援を行うことにより、負の影響の防止・軽減に努めるべきである」旨が追記されました(パブコメ回答4(10)No.2、No.3)。

上記で取り上げたほかにも、パブコメ回答においては、「ビジネスと人権」に関する行動計画に関する種々の論点について、参考になる議論が記載されています。

新計画は令和8年度(2026年度)から開始されます。また、公表から5年後を目途に「ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議」において、改定の必要性を適切に判断することとなっています。

2. EUにおけるオムニバス法案の成立

当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2026年2月)5において、欧州議会によるオムニバス法案(CSRD及びCSDDD等の規制の簡素化に関する指令の法案)(以下「オムニバス法案」といいます。)の承認についてお知らせしていました。その後、オムニバス法案は、2026年2月24日、欧州理事会による承認を受け6成立し、同月26日にEU官報に掲載7されました。その20日後に発効することから、本ニュースレターが発行される時点においては、オムニバス法案は発効していることとなります。

今後のスケジュールとしては、加盟国は、発効後1年以内に指令の内容を国内法において規定する必要があります。ただし、CSDDDに関する国内法の策定については、遅くとも2028年7月26日までに行わなければならないとされており、その適用は、2029年7月26日から求められることとなります。

「ビジネスと人権」に関する行動計画の改定およびEUにおけるオムニバス法案に関する状況のアップデート

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執筆者

北村 導人

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