11.企業内容開示

1.上場企業に求められる企業内容開示

株式上場後は、自社の株式が証券市場において広く一般の投資家の間で売買されることとなるため、上場時の募集・売出しにより株主の数が増加することに伴って、利害関係者の数も飛躍的に増加します。その結果、各種法令や規則に基づいて、適時適切な情報開示が求められ、上場会社としてそのための体制を構築する必要があります。

具体的には、金融商品取引法の規定による開示制度、会社法の規定による開示制度、各市場による開示制度などへの対応が求められることとなります。上場後に必要となる主な開示書類は以下のとおりです。

根拠法令/
提出先

提出書類(開示書類)

提出事由

提出時期

監査/レビューの要否

金融商品取引法/

財務局

有価証券報告書

内部統制報告書

年度決算

3カ月以内

必要1

四半期報告書

四半期決算

45日以内

必要

臨時報告書

合併、事業譲渡、増資など

適時

有価証券届出書

増資など

適時

取引所の規則/

取引所

決算短信

年度決算、
四半期決算

おおむね45日以内

適時開示など所定の様式

業績予想の修正など

適時

会社法/

株主・株主総会

事業報告書

年度決算

株主総会の
開催は
3カ月以内

株主総会開催日の2週間前までに招集通知を送付する

個別(連結)計算書類

付属明細書

年度決算

必要

※1:一定の要件のもと、内部統制報告書の監査を3年間免除することを選択することができます。

3月決算の会計監査人設置会社の決算日程例

最終事業年度に係る貸借対照表に計上した資本金の額が5億円以上となった場合には、会社法が定める「大会社」に該当することとなり、最終事業年度に係る定時株主総会において会計監査人を選任し、翌期以降、会計監査人の監査(会社法監査)を受けなければなりません。従来は、株式上場時の公募により資本金が5億円を超える場合に対応を行う必要がありましたが、現在はTOKYO PRO Marketを除き、原則として上場申請時に会計監査人を設置することが求められています。

日付

主要事項

法定期限

3月16日

基準日公告

基準日の2週間前

3月31日

基準日(決算日)

定時株主総会の会日の前3カ月以内

4月22日

取締役は計算書類を会計監査人と監査役に提供

取締役は連結計算書類を会計監査人と監査役に提供

取締役は計算書類の付属明細書を会計監査人と監査役に提供

取締役は事業報告を監査役に提供

取締役は事業報告の付属明細書を監査役に提供

5月19日

会計監査人は特定監査役2および特定取締役3に対し、会計監査報告の内容を通知

計算書類および付属明細書については、計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日、計算書類の付属明細書を受領した日から1週間を経過した日、特定取締役、特定監査役および会計監査人の間で合意により定められた日のいずれか遅い日

連結計算書類については、連結計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日、特定取締役、特定監査役および会計監査人の間で合意により定められた日がある場合にはその日

5月25日

特定監査役は特定取締役および会計監査人に対し、計算関係書類の監査報告の内容を通知

連結計算書類以外の計算関係書類については、会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日、特定取締役および特定監査役の間で合意により定められた日のいずれか遅い日

連結計算書類については、会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日、特定取締役および特定監査役の間で合意により定められた日がある場合にはその日

特定監査役は特定取締役に対し、事業報告およびその付属明細書の監査報告の内容を通知

事業報告を受領した日から4週間を経過した日、事業報告の付属明細書を受領した日から1週間を経過した日、特定取締役および特定監査役の間で合意した日のいずれか遅い日

取締役会は計算書類、事業報告およびその付属明細書を承認

取締役会は連結計算書類を承認

6月11日

計算関係書類、事業報告およびその付属明細書ならびにこれらの監査報告書を本店に、その謄本を支店に備え置く

定時株主総会の会日の2週間前より

定時株主総会招集通知の発送

定時株主総会の会日の2週間前

6月25日

定時株主総会

定時株主総会決議通知発送

7月1日

貸借対照表および損益計算書を公告、または貸借対照表の要旨を公告

承認または報告後遅滞なく

※2:特定監査役とは、会計監査人が行う会計監査報告の内容の通知を受けるものとして別途定めた監査役をいい、特に定めがない場合には全ての監査役になります。

※3:特定取締役とは、監査報告の内容の通知を受けるものとして別途定めた取締役をいい、特に定めがない場合には監査を受けるべき計算関係書類の作成職務を行った取締役になります。

2.目論見書、有価証券報告書

目論見書とは、有価証券の募集または売出しにあたって、その取得の申し込みを勧誘する際などに投資家に交付する文書を指します。

また、有価証券報告書(Iの部)とは、新規上場申請の際に上場審査を受けるために取引所に提出する書類であり、有価証券届出書とは、上場承認後に株式の募集または売出しのために金融庁に提出する書類を指します。

目論見書や有価証券届出書に記載すべき内容は、Iの部に記載すべき内容に「証券情報」を加えたものであり、その他の記載内容は、ほぼ同じです(目論見書には、Iの部、有価証券届出書に記載されている「特別情報」は記載されません)。

1.目論見書とは

目論見書とは、有価証券の募集または売出しにあたって、その取得の申し込みを勧誘する際などに投資家に交付する文書であり、当該有価証券の発行者や発行する有価証券などの内容について説明した勧誘文書を指します。
目論見書は引受証券会社や会社のウェブサイトなどから入手することができます。

2.有価証券届出書との関係

有価証券の募集や売出しをする際、その発行者が金融庁に提出する書類は有価証券届出書と呼ばれますが、その内容は目論見書と大きな差はありません。有価証券届出書を提出して有価証券を発行する者は、当該募集または売出しに際して目論見書を作成する必要があります。

有価証券届出書の提出要件は以下のように分類されます。

発行価額または売出し価額の総額

1,000万円以下

1,000万円超~1億円未満

1億円以上

不要

有価証券通知書

有価証券届出書

発行価額、または売出し価額が1,000万円から1億円未満の有価証券の募集または売出しについては、有価証券届出書ではなく有価証券通知書を提出する必要があります。

3.目論見書の記載事項

目論見書を交付する目的は、投資家の投資判断の基準となる情報を提供することにあります。そのため、一般的には、発行者名、事業内容、資本構成、財務諸表、手取り金の使途などの発行者に関する情報、発行総額、発行価格、払込日などの発行する有価証券に関する情報および引受人名、引受額、手数料などの引受に関する情報を記載することになります。

4.目論見書の訂正

公開価格決定のプロセスにおいては、想定公開価格に基づき、まず仮条件を決定することが通例となります。その際、届け出の効力が発生する前に目論見書を使用して有価証券の取得の申し込みを勧誘することになるため、内容が未確定の旨を表示して、目論見書を交付することになります。その後、条件が確定することに伴って未確定部分も確定するため、目論見書を訂正することになります。また、記載項目が誤っていた場合も目論見書を訂正する必要があります。

5.目論見書の信頼性

目論見書は投資判断の重要な基礎資料となるため、その記載事項について虚偽の表示がある場合、または重要な事実の表示が欠けている場合は、発行者および当該目論見書を使用して有価証券を取得させた者は、当該有価証券の募集または売出しに応じて当該有価証券を取得した者に対し、損害賠償責任を負います。

3.上場前の有価証券報告書開示

有価証券報告書とは、上場会社が投資家に対して企業内容を開示する資料を指します。通常は、上場企業が提出する書類ですが、下記の場合には開示が要請されます。

(1)株式公開する場合

(2)1億円以上の有価証券(株券や社債券など)の募集または売出しを行い、有価証券届出書を提出した場合

なお、「(1)株式公開する場合」に提出する書類は、新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)であり、上場申請時に証券取引所に提出され、上場承認時には証券取引所のホームページにて公開されます。

4.リスク情報開示に関する留意事項

リスク情報は、新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部)および有価証券届出書などの「企業情報」の「事業の状況」において「事業等のリスク」として開示されます。

事業等のリスクの開示は、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」に列挙されている項目に沿って記載します。記載するリスクは、連結会社の財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に重要な影響を与え得ると経営者が認識している主要なリスクとなります。また、具体的な内容として、当該リスクが顕在化する可能性およびその時期、顕在化した場合に連結会社の経営成績などに与える影響、当該リスクへの対応策などを記載する必要があります。

上場審査の際も、会社実態を正確に表した事業上のリスクが開示されているか、網羅的に記載されているかが確認されます。

リスク情報を開示することは会社の魅力の低下につながる恐れもありますが、投資家に適切な判断を促すものであるため、不利な情報であっても積極的に開示する必要があります。

また、事業等のリスクは多岐にわたるものであるため、その記載にあたっては主幹事証券会社や弁護士などと検討する必要があります。

なお、企業内容等開示ガイドラインに列挙されている記載例は次のとおりです。

(1)会社グループがとっている特異な経営方針に係るもの

(2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の異常な変動に係るもの

(3)特定の取引先等で取引の継続性が不安定であるものへの高い依存度に係るもの

(4)特定の製品、技術等で将来性が不明確であるものへの高い依存度に係るもの

(5)特有の取引慣行に基づく取引に関する損害に係るもの

(6)新製品及び新技術に係る長い企業化及び商品化期間に係るもの

(7)特有の法的規制等に係るもの

(8)重要な訴訟事件等の発生に係るもの

(9)役員、従業員、大株主、関係会社等に関する重要事項に係るもの

(10)会社と役員又は議決権の過半数を実質的に所有している株主との間の重要な取引関係等に係るもの

(11)将来に関する事項について

5.内部統制報告書の記載事項

内部統制報告書とは、事業年度ごとに、その会社の属する企業集団およびその会社に係る財務計算に関する書類、その他の情報の適正性を確保するために必要な財務報告に係る内部統制の有効性の評価を記載した報告書(金融商品取引法第24条の4の4)であり、有価証券報告書と併せて提出する必要があります。内部統制報告書の記載項目は下記のとおりです。

(1) 財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項

(2) 評価の範囲、基準日および評価手続きに関する事項

(3) 評価結果に関する事項

また、付記すべき事項や特記すべき事項がある場合には、上記(1)から(3)の次に付記事項、特記事項の欄を設けて記載します。

なお、内部統制報告書については、金融商品取引法に基づく監査の対象となるため、監査法人の意見表明が必要となりますが、新規上場期を含む3期間は内部統制報告書に係る監査の免除を選択することが可能になりました(上場日の属する事業年度の直前事業年度に係る連結貸借対照表もしくは貸借対照表に資本金として計上した額が100億円以上、または当該連結貸借対照表もしくは貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が1,000億円以上の会社は適用除外)。