日本のプラットフォームビジネスの成長戦略

第4回 プラットフォーマーに求められるケイパビリティ

  • 2026-07-03

1.プラットフォーマー分類別の戦略とアプローチまとめ

本連載ではこれまで、日本のプラットフォーマーが直面する課題と、分類別の成長戦略を整理してきました。第1回コラムでは、国内プラットフォーマーを「スタンダード型」「エコシステム型」「経済圏型」に分類し、それぞれが置かれている競争環境の違いを整理しました。

第2回コラムでは、主に経済圏型プラットフォーマーを対象に、「競争優位性を高めるために、プラットフォームビジネス間のネットワーク効果が強力に働く強固な経済圏の構築をいかに実現するか」を扱いました。ここでは、個々のプラットフォームビジネスを「立体」、複数の立体が統合された経済圏全体を「構造体」と捉え、構造体をより強固にするための戦略を整理しています(図表1)。

図表1:経済圏ビジネスにおける「立体」と「構造体」モデル​

構造体を強くするための戦略は、「A)立体を適切に配置する戦略」「B)立体間の誘引力を高める戦略」「C)立体の組み合わせによって競争優勢性を高める戦略」の3つに整理されます。

Aでは、各立体のユーザー基盤や3つのビジネス指標(顧客必需性/顧客解像度/顧客単価)を適切に把握し、構造体の中での相互の関係性(距離感)を正確に捉えることが重要です。Bでは、経済圏内でIDなどの共通基盤の導入や、各立体の接合点となる「ハブサービス」の配置を通じて、経済圏全体の価値を最大化するアプローチを提示しています。Cでは、立体間の顧客データを統合することで顧客理解を深め、新たな価値提供につなげるとともに、既存サービスを支援する「補完サービス」を配置することで競合の参入障壁を高める戦略を提示しています。

第3回コラムでは、エコシステム型プラットフォーマーに焦点を当て、経済圏型との差別化戦略を整理しました。その柱は「A)将来の規模拡大に耐え得るスケーラビリティを見据えた早期準備」「B)エコシステムユーザーと外部企業を含めたビジネスエコシステムの強化」「C)プラットフォームビジネスの価値提供方法の刷新」の3点です。Aでは、共通機能の整備に加えて、生成AIやAIエージェントを取り入れた運営モデルへの変革に、成長初期から取り組むことが重要です。Bではエコシステムユーザーに対するM&Aを通じたノウハウ獲得と横展開、プラットフォーム外部企業との戦略的なアライアンスについて、Cでは第2回コラムと同様、「補完サービス」の構築により競合の参入障壁を高めることの重要性を、また成果報酬モデルの導入などの新たな価値提供方法を提案しています。

また第3回コラムでは、プラットフォーマーの海外展開戦略を取り上げました。巨額な資本投下を前提としたグローバルプラットフォーマーの戦略に対し、国内プラットフォーマーならではの海外展開戦略を提示しています。単一のビジネスを個別に海外展開するのではなく、国内で完成させた経済圏ビジネスモデルをまとめて展開するという「コンパウンド・エコシステム戦略」を提案しましたが、その際は、展開地域の取引慣行や文化・固有事情を踏まえつつ、第2回コラムで整理した「立体」と「構造体」のモデルを海外市場の環境に当てはめ、どの立体をどのように配置・連携させて新たな価値を創出するかを戦略的に検討することが重要です。

プラットフォーマーの成長には、単発のサービスの改善・施策の積み上げではなく、複数のサービスの連携・補完・統合などを俯瞰的に捉えて戦略を立てることが不可欠です。本稿では、プラットフォーマーが成長を持続するために必要な5つのケイパビリティと、その実現に向けたPwCコンサルティングの具体的な支援アプローチを提示します。

3.ケイパビリティ実装を支えるPwCコンサルティングのソリューション

2.で整理したケイパビリティの重要性は、多くの企業で既に認識されています。一方で、全てのケイパビリティを高い水準で保持する企業は必ずしも多くありません。どの企業にも得意・不得意が存在し、また事業フェーズや経営状況に応じて、注力すべき領域の優先順位も異なります。

そのような中、外部知見や専門性を戦略的に活用するという選択肢を持つことは、現実的かつ有効なアプローチとなります。自社のケイパビリティやリソースが限られる局面においても、適切な外部パートナーを活用することで、戦略の実行スピードを落とすことなく、成長に向けた取り組みを推進することが可能となります。

PwCコンサルティングでは、2.で整理したケイパビリティに対応するさまざまなサービスを提供しています(図表3)。これらのソリューションは、個別の課題解決にとどまらず、プラットフォーマーがコンパウンド・エコシステム戦略を実装していく上での実行基盤として位置づけられるものです。

図表3:プラットフォーマーに求められるケイパビリティ×PwCが提供するソリューション​

3-1. 未来創造型の新規進出領域の選定支援

新規進出領域の選定では、「市場の魅力度」ではなく「自社が構造的に勝てるか」を見極めることが重要です。PwCコンサルティングは、自社のサービス群・顧客接点・データ・収益構造の可視化と競合分析を起点に、第2回コラムで示した「立体の配置・誘引力・組み合わせ」の観点で目指すべき構造(将来像)を描きます。こうして描かれた将来像に対する実行シナリオを複数構築し、経営の意思決定可能なオプションへ落とし込みます。

3-2. プラットフォーマーの知財戦略立案支援

プラットフォーマー領域では、競合他社による模倣のスピードが速く、プロダクトやサービス単体での差別化を長期にわたって維持することが難しい傾向にあります。そうした中で知財は単なる守りの防波堤としてではなく、エコシステムを設計し、競争優位を拡張するための戦略的な武器として位置付けることが重要となります。

PwCコンサルティングの知財戦略に関する基本的な考え方や、事業戦略と知財を連動させるアプローチについては、以下の記事で詳しく紹介しています。

3-3. ファイナンス変革支援

プラットフォーマーの投資判断は、複数事業を横断した資源配分の下、スピード感をもって行う必要があり、ファイナンスは「管理・報告」から「意思決定のエンジン」への進化が不可欠です。PwCコンサルティングは、データとAIを前提に、事業・投資選択肢ごとのキャッシュフローやリスク、拡張余地を可視化。ビジョニングから組織・人材の役割定義、オペレーティングモデル構築までを一貫設計し、事業成長を支える経営基盤として再構築します。

3-4. AIエージェントによる外部コスト適正化支援

AI活用の主戦場は「作業の部分最適」から「業務プロセスの再定義」へと移りつつあります。業務プロセスの再定義により委託領域の内製化が促進され、外部コストが構造的に下がることで成長投資の余力が生まれます。PwCコンサルティングは「何を置き換え、どこから内製化するか」をプロセス変革と一体で整理し、外部コスト適正化を「守り」ではなく「成長の基盤づくり」として推進します。

3-5. プロダクト・マーケット・フィット(PMF)支援

プラットフォーマーのPMFは、単一プロダクトの適合ではなく、複数サービス・ユーザー・パートナーが交差するエコシステム全体の均衡点を探り続けるプロセスです。鍵となるのが仮説検証のスピードと手数であり、AI駆動開発によりPMF検証サイクル自体を高速化できます。PwCコンサルティングはPMFを「一度きりの到達点」ではなくマーケットを取り切るまで回し続ける運営能力と捉え、競争優位を実行力として定着させる支援を行います。

3-6. ID・ポイント統合支援

ID・ポイント統合は、顧客理解の深化とプラットフォームビジネス間の誘引力強化を同時に実現し、経済圏全体の価値を押し上げる基盤ですが、多くの企業でROI評価の壁に阻まれ停滞するケースが見られます。

PwCコンサルティングは「ID・ポイントを活用してどのような世界を実現したいのか」を明確にする構想策定から支援を行い、計画・実行(移行・運用設計)までをワンストップで伴走し中長期で経済圏価値を拡張する現実解へ落とし込みます。

3-7. リスク・ガバナンスマネジメント支援

プラットフォーマーにとって、リスク・ガバナンスマネジメントはもはや守りの管理機能ではなく、事業の存続と成長を左右する経営の最重要課題です。事業のスケールに伴いインシデントの影響範囲は経済圏全体へ拡大し、リスクの捉え方そのものが企業価値を左右します。求められるのは、リスクを経営判断の前提条件として組み込む「戦略的ERM」の構築です。PwC Japanグループは、ガバナンス、内部監査、BCP/BCM、サイバーセキュリティ(OT/IoT・海外拠点・サプライチェーンを含む)まで、事業変革と一体で統合的に支援します。

3-8. 全社横断的な人事変革支援

自律型AIの時代においては、業務の置き換えと人・AIの協働再編により、必要な人材の役割や構成が変わります。PwCコンサルティングは、従来の職種の延長ではなく新たな役割・人材タイプを定義し直すところから人事変革を支援。事業の振れ幅を織り込んだ人材ポートフォリオを設計し、リソースを再配分可能な状態をつくることで、スリム化と事業成長を両立するAIX(AI起点の企業変革)を実装します。また、事業・地域を越えた人材交流や発掘・育成も支援します。

3-9. AI駆動開発/保守による人事関連システムの提供支援

業務・組織の前提が短サイクルで更新される自律型AIの時代においては、従来型の人事システムでは適合が困難です。PwCコンサルティングはAIエージェントを起点としたフロントエンド統合により、問い合わせ・申請・判断支援・業務実行を一貫した体験に刷新。AIエージェント自体を労務管理対象として、権限・稼働・品質をシステム設計に組み込みます。AI駆動開発/保守を前提に短期実装と継続改善を実現し、人事主導の変革を持続的に支える基盤を構築します。

おわりに

本連載では、プラットフォーマーの成長戦略を、単発の施策や部分最適の積み重ねではなく、「構造」として捉え直してきました。複数のサービス、各サービスの受益者や提供者(企業・生活者)が相互に作用する中で、どのような構造を描き、その構造をどれだけのスピードで実装できるかが、競争力の源泉となりつつあります。

その前提の下、本稿では、①狙うべきマーケットを見極める力、②集中的に経営資源を投資できる力、③マーケットを取り切る実行力、④信頼によって維持する力、⑤自律型AI時代を見据えた人事主導の企業変革力という5つのケイパビリティを整理しました。これらはいずれかを高めれば足りるものではなく、同時かつ継続的に発揮されて初めて、構造としての競争優位が成立する点に特徴があります。

重要なのは、競争環境の変化の中で構造を更新し続けられる運営能力を持つことです。生成AIやAIエージェントの進展により、戦略から実行までのスピードは飛躍的に高まっていますが、それ自体が競争優位をもたらすわけではありません。テクノロジーを前提に、投資・実行・信頼を含む経営の仕組みそのものを更新し続けられるかが、今後の分水嶺となります。

本稿が、プラットフォーマーとしての成長を構造的に捉え直し、その実装に向けた思考を深める一助となれば幸いです。

執筆者

松岡 英自

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

土岐 正二

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

水上 啓

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

Email

柳川 素子

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

Email

諸橋 佑介

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

Email

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

本ページに関するお問い合わせ