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日本は本格的な人口減少社会に突入し、企業はこれまで以上に限られた需要を奪い合う厳しい競争にさらされています。持続的な成長を遂げる上では、既存事業の延長線上ではない、新たな価値創造が求められています。その中で、異なるユーザーをつなぎ、新たな価値を生み出してきたプラットフォームビジネスは、有効なビジネスモデルとして今後も時代に合わせた展開ができると考えられます。
プラットフォームビジネスは、これまで関わりのなかった複数のユーザーを新たに結びつけることで、サービスや製品を提供するビジネスです(図表1)。一般的なビジネスとは異なり、プラットフォームビジネスは双方向的にユーザー間の取引・情報を仲介します。ユーザー数の増加に応じてプラットフォームの価値が高まるネットワーク効果が働きます。このネットワーク効果が働くことで、プラットフォームビジネスは規模の経済が働き、ユーザーの獲得も加速度的に進むという特性を持っています。
プラットフォームビジネスは、企業あるいは生活者が提供者サイドと受益者サイドのどちらのユーザーにもなり得るため、BtoB、BtoC、CtoCの取引形態をまたぐものとなる可能性があります。ユーザー層の例としては、物販系eコマースの買い手と売り手、宿泊予約サービスの宿泊施設と旅行者、広告取引の出稿主と媒体運営者、媒体利用者などさまざまです。
図表1:プラットフォームビジネスの基本的構造
2010年代に入りスマートフォンが普及すると、モバイルアプリを通じて利用するプラットフォームが主流となってきました。また、デジタルプラットフォーム技術の発展による取引コストの減少によって、モノを「所有」に代わって「共有」するシェアリングエコノミーが急速に拡大しました。日本国内においても、CtoCプラットフォームサービスを展開するスタートアップが台頭・躍進し、その事業領域を拡大していく中で、既存のプラットフォームビジネスとの競争が激化しています。
2020年代に入り、ユーザーの行動データの蓄積が行われるようになると、経済圏がさらなる拡大を見せると同時に、ユーザー獲得競争も激化しています。国内プラットフォーマーはユーザーニーズに対応すべく複数サービスの提供を行った結果、他社の類似サービスにユーザーが横断的に行き来しやすくなる状況が生まれました。
このように他社の類似サービスを展開することで経済圏を拡大するプラットフォームビジネスのあり方が成熟期を迎える中、国内プラットフォーマーはユーザーのロイヤルティ(Loyalty)構築に課題を抱えています。
本連載では、国内プラットフォーマーの現状と戦略方向性、そして持続的成長に向けた進化の鍵となるポイントを考察していきます。
海外の巨大IT企業は、世界的な規模でプラットフォームビジネスを展開しています。彼らは早期からプラットフォームビジネスに参入しており、例えば他の産業よりも多くのR&D投資や設備投資を行い、新規市場に進出あるいは新規市場を創出するなど、リスクをとって、winner-takes-most(勝者独占)の市場を志向するとともに、その先行者利益を最大限に活かしながら、グローバル市場を席捲しています。また、こうした戦略は、膨大な資金力とリソースに裏打ちされています。
国内プラットフォーマーが同様の戦略を取ることは容易ではありません。国内プラットフォーマーは、成熟した日本国内市場を主たる戦場として、海外の巨大IT企業が届かないようなユーザーニーズに細かく対応するという戦略を展開してきました。また、国内市場での主導権を維持するために独自の経済圏を形成し、ユーザーをとめ置くこと(ロックイン)を図ってきました。
しかし、各社がそれぞれの得意分野でサービスを展開した結果、ユーザーが複数のプラットフォームのサービスを利用できる状況においては、ユーザーは一時的なキャンペーンに惹かれるなどして他の類似サービスも利用するようになり、特定のサービスだけを利用し続けることはなくなりました。その結果、eコマースならAサービス、決済ならBサービスなど、ユーザーの利用が分散する状況が生まれています。新たなキャンペーンが行われるたびに別の類似サービスの利用頻度が上がるなど、国内プラットフォーマー間でのユーザーの奪い合いが繰り返されており、国内プラットフォーマーにとってはユーザーを獲得するための絶え間ない消耗戦に陥っています。
このような状況において、国内市場に限定されたプラットフォームでは、ユーザーの完全な囲い込みを実現するのは極めて難しい状況にあります。そのため、他社との類似サービス単独で価値を創出しようとするのではなく、複数のサービスを効果的に連携させ、シナジーの最大化を通じてユーザーの固定化を図っていくことが、国内プラットフォーマーにとって重要な経営課題となっています。
加えて、人口減少や高齢化などの社会構造の変化、生成AIやAIエージェントなどの新技術の台頭といった外部環境の変化が、プラットフォーマーのビジネスモデルにも大きな影響をもたらす可能性は高いと考えられます。こうした外部環境の変革の波に柔軟に対応できるよう、プラットフォーマーは常に自社のサービスポートフォリオのあり方を見直す必要があるでしょう。
図表2:ユーザーとの関わり方に基づく国内プラットフォーマーの分類
国内プラットフォーマーは、プラットフォームのユーザーとの関わり方に基づいて、主に次の3つのタイプに分類できます(図表2)。
第1に、「スタンダード型プラットフォーマー」があります。これは、これまで関わりのなかった複数のユーザーを結びつけてサービスや製品を提供するもので、主に売買の「場」を提供することが目的です。主に新規参入企業やスタートアップが展開するもので、個人間のフリマアプリなどがその典型例です。彼らの主な目的は、新たな収益源の開拓やユーザーのロイヤルティの強化、ビジネスの機動性向上にあります。さらには、提供するプラットフォームビジネスを安定して黒字化するまでのビジネススケール戦略の実行が求められます。
次に、「エコシステム型プラットフォーマー」です。これは自社のプラットフォームを核にビジネス上のエコシステムを構築し、ユーザーとの持続的な共存共栄を目指す企業です。ビジネスエコシステムを形成するためには、ある程度の規模があり、かつオープンなプラットフォームビジネスを有していることが必要です。ここでいうオープンとは、プラットフォームへの参加条件が明確で、実質的にユーザーが限定されていないことを指します。つまり、条件を満たせば誰でも参加できる仕組みが整っているということです。また、ユーザーの価値創出を支援する仕組みが備わっており、かつプラットフォームの求心力が維持できていることも重要です。例えば、アプリストアを運営する企業が、開発者向けのツールやマーケティング支援を提供するケースがこれに当たります。多様なユーザーが互いに利益を得られる環境を創り出し、それを維持・発展させることで、ユーザーとプラットフォーマーが共存共栄できるようになります。
スタンダード型プラットフォーマーやエコシステム型プラットフォーマーにおいては、特定の事業領域に特化したサービスを提供する傾向にあります。しかし、限られた領域のサービス提供だけでは、ユーザーの変化するニーズに対応しきれなかったり、大手の経済圏型プレイヤーが参入してきたりといった場合、市場から淘汰されてしまうリスクもあります。ユーザーを自社サービスにとどめ続けるためには、差別化戦略やサービスポートフォリオの多様化が重要になるため、経済圏型を志向するプレイヤーも出てきます。
最後に、「経済圏型プラットフォーマー」です。経済圏型プラットフォーマーは、主に大手企業による独自の経済圏を構築するビジネスモデルです。彼らはメッセージングアプリやeコマース、金融、通信などの主力サービスを核として、周辺に多様な事業を展開します。その過程で、積極的なM&Aを行ったり、他社との提携を行ったりすることで、独自の経済圏を作り上げます。また、共通ポイントや共通アカウントの導入を通じて、経済圏内のサービス間をユーザーにシームレスに行き来させる仕組みを備えていることも特徴です。
こうした企業は、サービス間の相互補完や会員基盤の共有などでシナジーを発揮しつつ、ユーザーを自社の経済圏内にロックインし、自然とサービス間を回遊させることを狙っています。これにより、ユーザーに多面的かつ長期的にサービスを利用してもらうことで、一人当たりのLTV(顧客生涯価値)の最大化を図ります。
これらのように、国内プラットフォーマーには多様な形態と特徴があり、それぞれに利点と課題があります。したがって、企業は、自社の主力サービスや理念、競争環境に基づいて最適な戦略を実行する必要があります。
以上、第1回では海外の巨大IT企業と国内プラットフォーマーの違いや重要な経営課題、国内プラットフォーマーの分類について説明を行いました。
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