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近年、企業を取り巻く経営環境は加速度的に変化しています。デジタル化の急速な進展、新たなビジネスモデルの台頭に伴う産業構造の変容、開示制度や各種規制の改定、多様化するステークホルダーの要求など、マクロ環境の変化を受けて企業経営の前提が変わりつつあります。同時に、マーケットのボラタリティやインフレーション、地政学リスクなどの影響を受けて短期的な不確実性が高まっており、経営の舵取りはこれまで以上に困難になっています。PwCが2022年に実施した「第26回世界CEO意識調査」によると、日本企業のCEOの実に72%が「現在のビジネスのやり方が通用するのは10年以下」だと考えており、CEOの危機感が強く表れているものと考えられます。
このような環境変化を受けて、ファイナンス機能は従来以上に、企業価値の持続的な向上に向けた「ナビゲーター」としての役割を果たすことが求められています。今後ますます激化する経営環境に対応し、競争力を維持するためには、ファイナンス機能の変革が不可欠です。
これまで、持続的な成長や企業価値の向上に向けて、コーポレート・ガバナンスの強化や資本コストを意識した経営への転換など、数多くの取り組みが進められてきました。一方で、日本企業の約半数の企業がPBR一倍割れという状況であり、実態として日本企業の価値創造が遅々として進んでいないことが伺えます。本質的な価値創造を実現するためには、従来の財務情報・短期視点に偏重した「業績管理」から脱却し、「価値構造」と「時間軸」の範囲を拡張することで、将来を見据え、非財務資本も含めた統合的な思考で経営を実践していくことが肝要です。
「業績管理」とは、 「結果管理」または「経済価値管理」と言い換えることができます。結果を管理しても「成果」は生まれない点を踏まえて、財務諸表に現れない資産・価値・活動を含めて「財務」だけではなく「人的資本」「知的資本」などの「無形資産」、社内だけでなく価値提供先である「顧客」「社会」「環境」も価値として捉え、経営を行うことを意味します。
時間軸に「過去・現在」だけではなく「将来・未来」を要素に加えて、中長期的な「将来」に照準を定めます。経営の本質が「企業価値を高め、企業の将来を作ること」である点を踏まえて、単価や数量、ケイパビリティ、顧客属性といったビジネスドライバの標準化と蓄積を通じて、将来のストーリーからバックキャストして経営を行うことを意味します。
PwCは、「思考(捉える要素を変える)」と「志向(目指す時制を変える)」の2つの“シコウ”を企業価値向上のための両輪と捉え、持続的かつ科学的に戦略性のある価値創造活動を管理することが必要だと考えます。
ファイナンス機能に求められる変革は、役割の抜本的な見直しと構造の大規模な変更を伴う点において、これまでの取り組みと大きく異なります。最先端のテクノロジーを最大限に活用しつつ、経営や事業部門に対する提供価値を再定義するためには、ファイナンス機能のビジョンを再定義するとともに、マネジメントシステムの再整備、オペレーションの最適化、組織・人財の高度化を図ることが求められます。
ファイナンス機能が抱える課題は複雑化しており、前例に捉われない創造的な解決策が求められます。PwCコンサルティングでは、グローバルネットワークのプロフェッショナルと連携を取りながら、最先端のソリューションを通して、クライアントのファイナンス機能改革を戦略の立案から実行まで一貫して支援します。
「価値創造経営」の実現に向けて、ファイナンス機能は価値棄損に対する番人としての役割を担うと同時に、価値創造の導き手となることが求められます。これらの期待役割を担うにあたり、ファイナンス機能には改めて組織としてのビジョンやミッションを再定義するとともに、それらを実現するための将来像、組織・人財、プロセス・システムに跨る変革のグランドデザインを描くことが求められます。
ESGの視点や、非財務資本(製造、知的、人的、社会・関係および自然資本)の重要性が高まる中で、企業のパフォーマンスを従来とは異なる方法で測定、管理することが求められるようになってきています。また、経営環境の不確実性が高まるなかで、マネジメントから現場までの幅広い場面において、現時点で収集可能な事後情報だけでなく、その情報をもとに導出された将来予測やシミュレーションに基づいて意思決定を行うことのニーズが高まっています。
これらの課題を解決するのがテクノロジーです。データ活用のためのテクノロジーは急速に発展しています。PwC Japanグループなどの調査によると、先行する米国では経営の意思決定に人工知能(AI)を活用している企業の半数以上が、AIの効果を実感しています。経営管理を担うファイナンス機能は、データという資産を企業価値に転換するための変革を推進することが求められます。
日本国内の多くの企業が次世代型ERPシステムへの移行を進める中で、ベストプラクティスに則ったシンプルかつ効果的なプロセスへの変革が求められます。PwCの調査によると、RPA、OCR、AIなどのデジタルテクノロジーを組み合わせることにより、経理財務プロセスのより多くの部分の自動化が見込まれています。これらの取り組みには、単に生産性を向上させるだけではなく、品質向上やガバナンスの改善、さらには高速化や処理能力の拡張を通して、これまで実現できなかった新たな提供価値を創出することが期待されています。
ファイナンス機能の現行業務の多くは、先端デジタルテクノロジーを用いることで自動化が可能であり、人的資源を煩雑なマニュアル作業やルーチン業務から開放することができます。同時に、ファイナンス機能には経営や事業の意思決定を支えるアドバイザーロール(ビジネスパートナー)としての期待が高まっており、組織改革も視野に入れた人材の配置やスキル構成の抜本的な見直しが必要となっています。
また、将来のファイナンス人材には、会計・財務の専門性に加え、経営やビジネスに対する深い理解、分析力やコミュニケーション力、変革推進力などのソフトスキル、さらにはデジタルリテラシーが求められます。人材の変革は一朝一夕には実現できません。経営層は将来求められる人材像を明確化し、中長期的な視点に基づくアップスキリングとリスキリング(学び直し)に早急に取り組まなければなりません。