日本の航空機産業の未来

2022-05-18

世界的な成長が確実視されていた航空業界では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による旅行需要の蒸発と、その後も続く航空旅客需要の減少に直面しています。さらに、気候変動への対応として厳しいCO2削減の目標達成が求められています。世界の航空機産業の未来がはっきりと見通せなくなった今、私たちは改めて、客観的なデータをもとに、日本の航空機産業の課題を整理し、進むべき方向性や業界・国の役割についてまとめることが必要だと考えました。本レポートが、航空機産業のさらなる発展の一助となれば幸いです。

私たちが考える航空機産業の未来

  • 事業規模の小さい日本の航空機産業を一定の事業規模まで育成、一元化しつつ、高い技術開発力や品質管理能力を活かしてグローバルでのプレゼンスを高めることで、産業規模を拡充していきます。
  • CO2削減要請や航空輸送事業の変革を好機と捉え、航空機産業における新規技術の開発や新領域への進出を、国の後押しを得ながら加速させていくことで、自動車産業に次ぐ国の基幹産業として発展していきます。

1 航空機産業の概観

航空機産業全般としては、COVID-19の一時的な影響はあるものの、需要は回復し、CO2排出量削減に向けた技術開発競争が激化するため、日本の航空機産業も備えが必要です。

2 航空機産業のトレンド

中~小型機に対する航空機需要は堅調が続くと見込まれます。航空機の需要回復に備え、安くて高品質な機体を納期通りにデリバリーする高い生産能力が求められるようになるでしょう。また、CO2削減に向けて世界中の航空機産業が開発を加速させている中、特に欧米が開発の主導権を掌握していくと考えられます。

加えて、グローバルではエンジン単体の販売から、運用サービス(飛行時間)に課金するビジネスモデルを模索しており、納入後の運用データのデータプラットフォーム化に向け、IT技術の活用が進んでいくと考えられます。

3 日本の航空機産業の課題

  • 日本の航空機産業の強み:防衛分野において、国内でライフサイクル全体に対応できる技術力を有しており、国産旅客機を開発し、TC(型式証明)取得直前まで到達した完成機事業についてのノウハウが蓄積されています。

  • 日本の航空機産業の課題:グローバルの10分の1以下の事業規模の中で国内重工各社が競合しており、規模の経済が働きません。航空機産業を国の基幹産業と位置付けている米国やEU、ブラジルに比べ、日本では基幹産業化に向けた支援や関与の度合いが強くないため、産業規模拡大に至っていないという点が課題です。

4 日本の航空機産業の未来

私たちは日本の航空機産業について、その在り方、技術開発の方向性、そして標準化への取り組みの観点から、高い技術開発力や品質管理能力を活かして産業規模を拡充すること、同時に、CO2削減要請や航空輸送事業の変革を好機として、国の後押しも得ながら国の基幹産業として発展させていくこと、が必要だと考えています。分析や提言の詳細は、本レポートを参照ください。

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執筆者

渡部 達

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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宮川 淳一

アドバイザー, PwCアドバイザリー合同会社

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甲斐 正彰

アドバイザー, PwCコンサルティング合同会社

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澤井 康明

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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中村 真徳

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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