日本企業のDX推進実態調査2022

1割のDX成功企業から見えてきたDXMOの役割とは?

はじめに

突発的なゲームチェンジが頻発する不確実性の高い時代においては、変革の成否がビジネスの鍵を握ります。そのような状況下において、多くの日本企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を自社の重要アジェンダと捉え、積極的に取り組んでいます。しかし、グローバル企業と比べるとその取り組みが遅れていると言わざるを得ず、また、成功確率の低さを指摘されています。

本レポートでは、日本企業におけるDXの現状を解説し、DXを成功に導くキーアジェンダを取り上げます。その上で、今後DXに着手する予定の企業や、DXの推進に行き詰まっている企業に対して提言を行います。

本レポートをまとめるにあたり、PwCコンサルティングは2022年1月より日本企業に対してDXに関する調査を実施し、DXを推進している企業(売上高10億円以上)に所属する1,103名の幹部(管理職以上)から回答を得ました。(売上別回答者比率 5,000億円以上:27%、1,000億円以上5,000億円未満:21%、100億円以上1,000億円未満:33%、100億円未満:19%)

日本企業はDXに成功しているのか?

回答者のうち59%は「経営戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と答えており、半数以上がデジタル技術を活用したビジネスモデルへのトランスフォーメーションや、企業そのものの変革に取り組んでいることが分かります(図表1)。

図表1 DXの取り組み状況

一方で、「十分な成果が出ている」と答える回答者は10%に留まっています。「何らかの成果が出ている」と評価する回答者が半数あまり存在する一方で、成果が芳しくないとみる回答者も約3割存在しています。今回の結果を踏まえると、日本企業の多くはDXに成功していると言えるまでには至っていないでしょう(図表2)。

図表2 DXの取り組み成果

成否を分けるキーアジェンダ

ここからは、「十分な成果が出ている」企業の取り組みを分析し、成功に向けたキーアジェンダを検討します。

その1 将来ビジョンの具体化

その1:将来ビジョンの具体化

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その2 現場のDX理解

その2:現場へのDX浸透

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その3 DXを推進する専門組織の設置

その3:DXMOによる牽引

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その4 CxOのリーダーシップ

その4:CxOのリーダーシップ

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その1:将来ビジョンの具体化

全社DXに成功している日本企業、すなわち「十分な成果が出ている」と回答した幹部が所属する企業の取り組みのうち、成果に関係していると見られる要因を詳しく見てみたところ、「経営層がDXに関する明確なビジョンを描き、ビジョンが具体化している」ことが最も重要だということが分かりました。つまり、トップが全社をリードしながら未来を想定した事業構想を明確に描き、それを分かりやすい形で具体化することが重要と言えます(図表3)。

図表3 DXの成果創出に関係が深い要因

その2:現場へのDX浸透

DXに係る戦略や計画の理解度とDXの成果の関係を見てみると、いずれの職階でも理解度が高いほどDXの成果が現れやすいという傾向が見られました。特に、一般社員やグループ会社・海外拠点に在籍する社員の理解度が高い場合は、DXの成果につながりやすいことが分かりました。つまり、全社DXに本気で取り組む以上、リーダー層の動機付けを行うだけでなく、現場社員との対話など適切なコミュニケーション施策を実行することで、全社員の行動変容を促すことが重要と言えます(図表4)。

図表4 DX戦略や計画の理解度*とDX成果の関係(職階別)

その3:DXMOによる牽引

大半の企業はDXを推進する組織を立ち上げ、全社的な活動としてDXを進めています。DXによる成果を獲得するには、経営企画部門や情報システム部門といった既存の組織が担うのではなく、「専門組織」を新たに立ち上げて推進する方がより良い成果が得られるということが分かりました。なお、PwCでは、DXの司令塔を担う専門組織を「DXMO(Digital Transformation Management Office)」と定義しています(図表5)。

図表5 DX推進組織とDX成果の関係

その4:CxOのリーダーシップ

DXを推進するにあたっては専門組織の設置に加え、しかるべき権限を有したリーダーの有無がDX成果の明暗を分けることも分かりました。具体的には、Chief Digital OfficerなどのCxOを設置し、既存の組織力学に振り回されることなく、全社視点で組織横断的に取り組む権限と責任を有することが重要になってきます。「CxOを設置している」と回答した企業幹部の17%が、自社のDXの取り組みに対して「十分な成果が出ている」と回答している一方で、「CxOを設置していない」と回答した企業幹部の場合は3%に過ぎず、その差は歴然です。つまり、全社的にDXを推進するためには、その責任者を明確にした上で社内外に分かりやすく伝え、強力なリーダーシップの下、各種DX施策を実行することが重要と言えます(図表6)。

図表6 DX推進リーダーの設置とDX成果の関係

2022年に日本企業が取り組むべきこと

今回のサーベイ結果から、日本企業がDXに成功するためのポイントを4つ挙げました。その中でも、CxOがリードする形で、専門組織であるDXMOが全社的な変革活動を強力に推進することが重要になってきます。なお、DXMOが担うべき具体的な役割は、全従業員を巻き込みながら、経営層/CxOが掲げるビジョンに基づいて策定された施策を主体的かつ着実に推進することです。単なる管理監督組織ではなく、アクティビストとして各施策を進められるかどうかが、DXの成否の鍵を握っていると言えるでしょう。

本レポートが、DXによりさらなる飛躍を遂げようとしている企業の方々の参考になれば幸甚です。

* 2022年1月、売上高10億円以上の企業に属する回答者(管理職以上)に対しスクリーニング調査を行い、そのうち「DXの取り組みを進めている」と回答した1,103名に対して本調査を実施。(売上別回答者比率 5,000億円以上:27%、1,000億円以上5,000億円未満:21%、100億円以上1,000億円未満:33%、100億円未満:19%)

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主要メンバー

武藤 隆是

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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川上 晶子

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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石浦 大毅

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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高野 泰

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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