
【動画】PwCコンサルティング×日本マイクロソフト対談ダイジェスト―日本企業における今後の生産性改革の在り方とは―
「日本企業における今後の生産性改革の在り方」をテーマに、生成AI活用や日本企業における新たな働き方について、日本マイクロソフト株式会社のエグゼクティブアドバイザー小柳津篤氏とPwCコンサルティングのディレクター鈴木貞一郎が語り合いました。
PwCコンサルティング合同株式会社(以下、PwCコンサルティング)は、「人的資本経営の新たな潮流を紐解く―これからの人事が取り組むべき4つのキーアジェンダ―」と題したセミナーシリーズを2025年2月から配信しています。
3月11日に配信した第3回のセミナーでは、「日本企業における今後の生産性改革の在り方」をテーマにディスカッションを行いました。日本マイクロソフト株式会社(以下、日本マイクロソフト社)が2024年12月に実施した「自律的・選択的・生産的働き方検証-Work With Copilot2024-」を基に生成AI活用や日本企業における新たな働き方について、同社の小柳津篤氏とPwCコンサルティングの鈴木貞一郎が語り合いました。
ダイジェスト動画は以下からご欄いただけます。
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本稿は、当日のディスカッションの模様を対談形式でまとめたものです。
※「自律的・選択的・生産的働き方検証-Work With Copilot2024-」日本マイクロソフト社の社員が自社開発の生成AI「Copilot」を積極的に活用することにより、業務効率化と生産性向上の上でどのような効果が得られるかを検証したトライアル。PwCコンサルティングは、日本マイクロソフト社のパートナー企業としてCopilotを活用したコンサルティングサービスを展開しており、その一環として同プロジェクトをサポートしました。
対談者
日本マイクロソフト株式会社
エグゼティブアドバイザー
小柳津 篤氏
PwCコンサルティング合同会社
ディレクター
鈴木 貞一郎
※法人名・役職などは掲載当時のものです。
鈴木:「Work With Copilot」のトライアルとして実施した「Work With Copilot2024」の位置づけや、実施の背景について教えていただけますか。
小柳津:日本マイクロソフト社では、長年「One Microsoft」の実現に向けてさまざまなアプローチを行ってきました。結果、総労働時間などさまざまな評価指標において成果を確認できるようになり、社員意識調査のワークライフバランスも高水準で推移しています。一方、この進捗がある種の達成感/到達感にもなっていると感じていました。
そこで 生成AI の出現を契機に、Copilotをもっと活用して仕事も私生活も良くしていこうというプログラムを立ち上げ、啓蒙/啓発を試みたのが今回の背景です。
鈴木:トライアルを実施されてどのような成果がありましたか。
小柳津:活動の成果は「削減・向上・満足」の3分野ごとに複数の視点で確認しています。分かりやすい「削減」項目としては就業日数/時間が挙げられますが、わたしが何よりうれしかったのは、多くの社員が仕事の質が上がったと実感したことです。それは「Thriving(活性化する組織/活躍する社員)」のスコアにも表れています。近年、私たちが効果測定の上で重要視している「満足」に関するスコアも高く、この結果は非常にポジティブに捉えています。これはトライアル期間中に創出できた時間を自己啓発やファミリーケアなど、有効に使うことができた実感が大きく影響していると思います。
日本マイクロソフト株式会社 エグゼティブアドバイザー 小柳津 篤氏
鈴木:多くの企業が生成AIを導入してもなかなか使われない実態があるなか、日本マイクロソフト社はもともと使われていたところに今回さらに高いスコアをマークし、衝撃的でもありました。その要因とは何だったのでしょう。
小柳津:生成AIのCopilotの自発的利用者は前年同月比で24%アップし100%に達しました。昨年の段階で80%でしたので、一般の日本企業に比べると高めに推移していると思います。社員が生産的かつ効率的に使いこなしつつ、上手に働こうというモチベーションが奏功した結果でしょう。
それと相まって、長年業務の構造改革に取り組み、旧来の「手続き型・プロセス型業務」をロボット化したり機械学習に置き換えたりしてきたことも大きいと思います。結果的に生成AIが使いやすい「プロジェクト型業務」が残ったことにより、Copilotの利活用が促進されたのだと思います。
鈴木:PwCコンサルティングでは、現在「Four Day Workweek Approach」というソリューションを構築中です。直訳すると「週4勤務」ですが、週4は当面のゴールとして仮にプロットしているもので、ミッションとしては日本における生産性向上、働き方の多様性を促進しながら一人ひとりが思い描いた働き方を選択できる社会を実現しようというものです。「Work With Copilot2024」は私たちもサポートしましたが、このトライアルの成果を、生産性が高い働き方・仕事の進め方へのシフトを実現させるために設定した、7つの重要成功要因に関連づけながら紐解いていきたいと思います。
まず重要成功要因となる⑤の業務効率化・高度化施策(Copilotなどの生成AI)の特定について、Copilotをどのように活用することで業務の効率化を図られたのでしょうか。
小柳津:社内の改革、お客様への支援を問わず、常々私が意識しているのは、生成AIを組織の中で実装し浸透させるためには、「誰に使ってもらうか」というアプローチに加え、「どの業務のどの瞬間にどのように適合させるか」というスコーピングが重要であるという点です。
生成AIは技術に過ぎず、乱暴な言い方をすればどんな業務にも使おうと思えば使えてしまいます。スコーピングした上で使ってもらい、評価する、横展開することが肝要だと思っています。
鈴木:トライアルでも、「特定の業務にこう使う」スコーピングをした上で利活用促進を図ったとのことですが、Copilotを具体的にどのように活用されたのでしょうか。
小柳津:非同期会議に多く活用しました。普通、会議と言えば場所も時間も同期して意見を出し合う場のことです。これが録画され、生成AIで議事録や要約や翻訳が作成できれば、全員がリアルタイムで参加しなくてもいいのではないかという点に着目しました。
トライアルの結果、「会議へのリアル参加比率」が約20%削減、「非同期会議による有効化/効率化時間」が前年同月比で2.3時間から18.5時間に増えたという、大きな成果がありました。
鈴木:全員が会議室に集まっての会議が、場所を問わずリモートでも参加できるようになり、今やその場にリアルタイムで出席しなくてもいいというわけですね。
日本マイクロソフト社の中間管理職の方にも伺ったのですが、非同期会議をやる前は毎日会議でいっぱいで、メンバーの様子や進捗を把握するためだけに出席していた会議も多かったと。それが今回のトライアルでは、自分が本当に必要な会議だけに絞れたし、情報も問題なく共有できたとおっしゃっていたのが印象的でした。
鈴木:次に①から④の重要成功要因については、理解・共感による取り組みの浸透が重要になります。こうしたら理解を得られた、共感してもらえたという事例があればお教えいただけますか。
小柳津:全員が全員、一定のレベルまで理解・共感をフラットにすることは難しいと思います。そこで、私自身が実践したのは、全員ではなく、いかに「できる人、理解できる人、共感できる人を増やすか」というアプローチです。
鈴木:生成AIを問わず、何かを変革をしようとするとき、全員が理解してヨーイドンというのは確かにあり得ないですね。興味を持ってくれた1割から2割の人からスタートして、5割を超えたあたりから追随する社員が出てくると思います。そこに至るための努力や苦労についてはいかがですか。
小柳津:興味を持ってくれた1割から2割の人というのは、こちらから働きかけずとも自分でどんどん実践している人たちです。それを発見し、認めて誉めてあげることで理解や共感が広がっていくと考えています。
数が少ないから特別なのではなく、彼らこそがスタンダードなのだとポジティブなメッセージを発信することが「できる・理解する・共感する人」を増やすきっかけになると思います。
鈴木:⑥の組織カルチャーの醸成、⑦の制度やルールの整備についても考察したいと思います。PwCコンサルティングの分析として、メンバーがスキルや知見をシェアし、チームとして協力しあうカルチャーがある組織ほど生産性が向上しているという結果があります。そうしたカルチャーを形成するためには、どのようなアプローチが必要でしょうか。
小柳津:最初から興味のある人とは真逆の、踏む込めない理由があったり逡巡していたりする人たちに対しては、その理由を排除してあげることが必要だと思います。そしてプログラムを提示し、「やり方がわからなければこのプログラムに則って行動してください」「こんなやり方もあります」「エントリーしてください」などのアプローチを行うべきと考えています。
鈴木:生産性が上がって1日分の新たな時間が創出できた、さあ何をするといったときに、「Work With Copilot2024」でもボランティア活動やヨガなど具体的な見本が示されていました。そうした動機をいかに作っていくかもポイントになっていくのかなと思います。
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 鈴木 貞一郎
鈴木:最後に、生産性向上に向けたあるべき人材マネジメントとは何か、長年業務改革、構造改革に携わってこられたご経験からのアドバイスをお願いします。
小柳津:「手続き型・プロセス型業務」を誤り無く丁寧に遂行するためのマネジメントと、変化を前提とした事業環境の中で「プロジェクト型業務」をチームワークによって遂行するマネジメントでは、求められる態度やケイパビリティに大きな違いがあることを認識していただきたいと思います。この違いに目を向けないと、どんな人材マネジメントを行うべきかという正解やアプローチ論を見誤ることになるでしょう。これはまさに私たちが経験したこと、見誤ってきた、失敗からの学びです。
鈴木:「手続き型・プロセス型業務」のマネジメントでいいのだと考えている管理職の方もまだ多いのではないかと思います。そうではなく、何かを生み出すために何をどう変えていくのか、そのためには中間管理職が協力するマインドが問われていると感じます。彼らを巻き込むことによって、自律的・主体的な働き方が獲得されていくのではないかと思いました。本日は示唆に富むお話をいただき、ありがとうございました。
PwCコンサルティングが提唱する給与維持型の週4日勤務制度「Four Day Workweek Approach」ソリューションの概要と成功のカギ、ベネフィットを解説します。
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PwCコンサルティングは、Salesforce Japan Partner Award 2025におけるJapan Partner of the Year - Net Zero Cloudを受賞しました。
PwCは給与維持型の週4日勤務制度のソリューション「Four Day Workweek Approach」を提唱しています。本稿では、組織成長と業務時間削減を両立するための7つのポイントを紹介します。また、生産性が高い働き方・仕事の進め方へのシフトする方法について、日本マイクロソフトでのチェンジマネジメントの事例を交えながら紹介します。