
ゲノム医療とPatient Centricity ―認定遺伝カウンセラーの立場から―「newsletter 第1回:先端技術とその落とし穴 ゲノム医療と倫理的・社会的課題」
現在注目を集めるゲノム医療は、その性質から解析や利用に際して倫理的・社会的な課題が指摘されています。ゲノム情報活用の広がりや、それにまつわる倫理的・社会的課題の基礎知識について紹介します。
近年、デジタル治療の一環としてのプログラム医療機器(SaMD)が注目を集めており、従来の医療機器開発企業だけでなく、スタートアップ企業や製薬企業などの参入も多く見られています。
SaMDは2014年の薬機法改正によって新たに認められた医療機器の1類型であり、プログラム単体として規制されるソフトウェアを指します。例えば、MRIの画像解析に使用するソフトウェアのように「インストール先の医療機器に追加機能を与える単体プログラム」や、スマートフォンにインストールして医師による副作用管理に使用するアプリのような「インストール先の汎用コンピュータ等に医療機器としての機能を与えるプログラム」が該当します。
SaMDについては、2021年の「プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略: DASH for SaMD」に続いて、2023年には新たに「DASH for SaMD 2」が法制化されました。これらにより薬事承認から保険適用までの予見可能性の確保、日本発のプログラム医療機器の研究開発の加速、国際市場への展開の促進という観点が追加され、国を挙げてその導入に力が入れられている状況です。
SaMDは医療機器に分類されますが、クラス分類上、クラスI相当のSaMDは医療機器として見なされないのが特徴的です。
医療機器と見なされるか否かは治療方針等決定への寄与の度合いが大きく関わっています。例えば同じ副作用管理のアプリであったとしても、患者が公知の事実としての情報にアクセスするだけのものは該当せず、医師がアプリ情報を取得し治療に生かすためのものは医療機器に該当します。
このように、SaMDの医療機器該当性は、従来の医療機器とは異なる物差しが必要とされます。SaMDの該当性判断には2つのガイドラインと2つの国際規格が適用されており、開発段階からガイドラインと併せ、GHTFクラス分類(能動型機器)とIMDRFカテゴリ分類に従ってどの分類に該当するかをあらかじめ考慮することは上市戦略上、非常に重要です。
SaMDの上市にあたっては、医療機器として保険償還を検討することが可能です。SaMDの診療報酬における管理料は「医学管理料等」だけでなく、「プログラム医療機器等医学管理加算料」や「特定保険医療材料」によっても算定されます。
また、評価の仕方は以下の4つがあります。
例えば、がんゲノムプロファイリング検査に用いるゲノム解析プログラムは「特定の技術料に一体として包括して評価」されており、禁煙補助アプリは「特定の技術料に加算して評価」されていると考えることができます。
SaMDの保険償還にはこのようにいくつかのパターンがあり、その製品の特徴によって取るべき戦略は異なります。ターゲットとなるユーザーが疾患患者に限定されるようなアプリの場合を除き、医薬品のような単体での保険償還に拘らず、適切な手段・戦略を検討することは重要かもしれません。
SaMDを含む医療機器の保険償還を行うにあたっては、チャレンジ申請という制度が活用できます。
チャレンジ申請とは、2018年度の診療報酬改定で新設されたイノベーション評価制度です。保険収載までの間に最終的な評価項目を検証することが困難であり、かつ使用実績を踏まえた評価が必要な医療機器のうち、製品導入時には評価できなかった部分については、使用実績を踏まえて保険収載後に新規機能区分の該当性を再度評価できるというものです。現在は保険収載時にA1(包括)、A2(特定包括)、A3(既存技術・変更あり)、C1(新機能)またはC2(新機能・新技術)として希望を行った製品について、決定区分とともに将来的な再評価の妥当性を保険医療材料専門組織が審議しています。
チャレンジ申請を行うためには保険適用希望書提出時にあらかじめ「将来的な評価の希望」を提出し、再評価の妥当性の判断を得ることが必要です。使用実績を踏まえて価格の引き上げ交渉が可能な点は企業にとって価値が高く、その活用に期待が集まっています。
医療技術が高度化・多様化する中で、SaMDやゲノム医療に用いる医療機器の開発が進み、AI技術も多く活用させるようになるなど、革新的な医療機器等の開発も加速化しており、従来の方法のみで製品を評価することは年々難しくなっています。チャレンジ申請はこのような革新的な医療技術を段階的に適切に評価できる制度であり、実際の製品価値に見合わない低い評価に甘んじざるを得なかったり、上市前の段階からいたずらに高額な評価が付くことがなくなったりすると同時に、より有用性の高い技術についてはそのエビデンスに基づいて正しく適切な評価を与えることができる点は非常に画期的であり、医療費の適正評価による新技術の開発促進とそれに伴う国民の健康増進を促すことにつながることが期待されます。
今後このような制度を医薬品や再生医療等製品における新規モダリティの評価に広げる動きもあり、医療機器メーカーのみならず、製薬企業も今後注目すべき制度と言えるでしょう。
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