
ゲノム医療とPatient Centricity ―認定遺伝カウンセラーの立場から―「newsletter 第1回:先端技術とその落とし穴 ゲノム医療と倫理的・社会的課題」
現在注目を集めるゲノム医療は、その性質から解析や利用に際して倫理的・社会的な課題が指摘されています。ゲノム情報活用の広がりや、それにまつわる倫理的・社会的課題の基礎知識について紹介します。
これまで、患者のヘルスケアデータは一次利用、すなわち目的を明記したうえで患者の同意を得てデータを集め、その目的以外にデータを利用しないことが徹底されていました。しかしながら最近は、ヘルスケアデータの二次活用を促進する環境の整備が進み、製薬会社もより包括的な形で患者から同意を取得するようになっています。
ヘルスケアデータの二次活用は、多様な角度から分析されることでデータの価値を最大に引き出すことを可能にし、研究開発サイクルの短期化、新しいビジネスモデルの確立といった効果も期待できます。一方、別の視点から見ると、薬価引き下げへの社会的要請や一層のエビデンス創出に対するニーズ、競争激化などの圧力を受けて、製薬業界が二次活用によるデータ価値最大化戦略をこれまで以上に重視する必要性に迫られているとも言えます。
これまでデータの一次利用に終始してきた製薬業界が二次活用を促進するには、どのようなビジネスシステムが必要なのでしょうか?
この問いに答えるためには、ヘルスケアデータの一次利用と二次活用の本質的な違いは何かを考えなければなりません。最大の違いは、一次利用では、データの取得・保管者(データオーナー)とデータの使用者(データユーザー)が同一人物(もしくは同じ機能を果たすチーム)であるのに対して、二次活用ではデータオーナーとデータユーザーが異なる人物やチームであるケースが多いということです。例えば、二次活用の例として、臨床開発部門で取得・保管している臨床試験データを、基礎研究部門が探索研究に使用する、コマーシャル部門が新規サービス開発に使用する、もしくは社外のビジネスパートナーに提供するといったケースを考えると分かりやすいでしょう。
データの二次活用を行ううえで、データユーザーが特に頭を悩ませるのは、次の3点です。
製薬会社がこれらの課題を解決し、効率よく安全に二次活用を進めるためには、成熟したビジネスシステムが必要になります。
ヘルスケアデータの二次活用を進めるといっても、製薬各社の状況は異なり、直面している課題もさまざまです。まずは、自社のビジネスシステムの成熟度を客観的に見極めた上で、目指すビジョンの実現に必要な成熟度に達しているかどうかを見つめ直すことが重要ではないでしょうか。
PwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャー 宋 云柯
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