米国税制改正下院法案の通過、および上院改正案の内容

2017-11-17

米国時間11月16日、米国下院において税制改正法案「Tax Cuts and Jobs Act of 2017 (H.R.1)」が賛成多数(227票対205票)で通過しました。通過した法案は、11月2日に発表されたもの(以下、「当初改正法案」)に、11月9日までの第二次修正を加えたもの(以下、「修正案」)となります。

修正案においては、当初改正案において創設されているExcise tax(物品税)に関して外国税額控除が認められるなど大きな変更が生じているのみに留まらず、新たに受取国内配当控除の縮小などが盛り込まれています。

他方、米国時間11月9日、上院財政委員会は、247頁におよぶ税制改正案(Description of The Chairman’s Mark of the “Tax Cuts and Jobs Act”、以下「上院改正案」)を発表しました。下院修正案との比較上特色すべき点として20%の物品税が上院改正案には含まれておらず、また、各改正項目について適用開始時期が異なるケースが散見されます。特に法人税率引き下げが下院税制法案と比べ一年遅れて適用されています。

[追記:米国時間11月16日深夜、米国上院財政委員会は上院改正案を賛成多数(14対12)で可決しました。同案は、11月9日発表の当初案(本稿記載)に複数の修正(個人所得税減税のサンセット(時限措置)等)を加えた案となります。上院改正案の修正内容につきましては、次回の配信でお伝えいたします。]

下院修正案、および、上院改正案の概要については以下の通りです。上院改正案は上院財政委員会を通過後、感謝祭休暇を挟んで11月27日の週から上院本会議での審議の開始が見込まれています。また、両院での法案成立後は下院法案と上院法案の摺合せが行われます。これらの過程で、更に複数の修正が加えられる可能性がある点にご留意ください。

また、以下の概要は私どもの初期的な見解であり、実務上の取り扱い等については今後変更される可能性がある旨ご留意の程お願い申し上げます。

 

下院法案のハイライト

  • 下院修正案
    • 米国法人から海外関連者に対する支払いに関する20% Excise tax(物品税)については、海外関連者が米国でPE申告を行う際に、本国での租税債務の80%までを外国税額控除として適用可。従って、多くの日本法人にとっては、PE申告をすれば外税控除を適用することにより米国での実質的な税負担は軽減されることになるものと思われる。
    • 強制みなし配当の税率を従前の12%/5%から14%/7%へと引き上げ。
    • 米国内法人間の受取配当について益金不算入とされる範囲を縮小。米国内でのJV(法人形態)や連結納税グループ外関連会社からの配当にかかる税負担について影響を与えるものと思われる。
  • 上院改正案
    • 20%法人税率の適用開始が(下院法案の2018年ではなく)2019年1月1日とされている。
    • 20% Excise tax(物品税)は法案に含まれていない。他方、国外関連者への支払が多額である米国法人に一定の追加税負担を求める税制を提案。
    • 強制みなし配当の税率は10%/5%。
    • 支払利子の損金不算入制度については下院法案と概ね同様の制度が提示されているが、制限額の計算方法が異なる点に留意。

詳細につきましては、以下PDFをご参照ください。