ESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2026年5月)

包装・包装廃棄物規則のガイダンスの公表

  • 2026-05-27

近時、日本を含む世界各国において、ESG/サステナビリティに関する議論が活発化する中、各国政府や関係諸機関において、ESG/サステナビリティに関連する法規制やソフト・ローの制定又は制定の準備が急速に進められています。企業をはじめ様々なステークホルダーにおいてこのような法規制やソフト・ロー(さらにはソフト・ローに至らない議論の状況を含みます。)をタイムリーに把握し、理解しておくことは、サステナビリティ経営を実現するために必要不可欠であるといえます。当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターでは、このようなサステナビリティ経営の実現に資するべく、ESG/サステナビリティに関連する最新の法務上のトピックスをタイムリーに取り上げ、その内容の要点を簡潔に説明して参ります。

今回は、EU包装・包装廃棄物規則(Packaging and Packaging Waste Regulation(EU)2025/40)1(以下「PPWR」といいます。)のガイダンスについてご紹介します。

1. はじめに

欧州委員会は、2026年3月30日、PPWRについて、見解を示す本ガイダンス(Guidance document on Packaging and Packaging Waste Regulation(PPWR)(以下「本ガイダンス」といいます。)を公表しました2 3。本ガイダンスは欧州委員会に承認を求めるPPWRに関する委員会通知(Communication to the Commission)の付属書(Annex)であり、全ての言語版が利用可能となった後に欧州委員会に正式に採択がされる予定となっています。

PPWRは包装材のライフサイクル全体を規制することで、包装廃棄物を削減し、発生を防止するとともに、包装材のリサイクルを推進することを目的としています。PPWRは従来の包装・包装廃棄物指令(Directive 94/62/EC4)(以下「旧PPWD」といいます。)を「規則(Regulation)」に格上げしたもので、加盟国における直接適用を可能としています。

本ガイダンスは、PPWRをEU全域において統一的に適用することを促進するための重要な解釈指針です。

PPWRの適用開始日が2026年8月12日に迫る中、本ニュースレターでは、本ガイダンスで示されているPPWRの解釈指針が示している解釈のうち、日本企業にも関係があると思われる包装等の定義、持続可能性要件、ラベル要件及びデポジット・リターン制度に関する項目について、概要を説明しています。

2. 包装の定義

(1)PPWRの規定

PPWRは、包装を「製造される材料に関わらず、経済事業者が他の経済事業者または最終使用者に対する製品の収納、保護、取扱い、配送または提示のために使用することを意図した品目であって、その機能、材料及び設計に基づく包装形式によって区別できるもの」と定義しています(第3条1項第1号5)。具体的には、食品包装や飲料用ボトル等が該当します。なお、ここでいう経済事業者とは、製造業者、輸入業者、流通業者、認定代理人、最終代理店等を指します(第3条第1項第12号)。

(2)本ガイダンスによる解釈

PPWRのAnnex Iにおいては、包装に含まれる品目を示すリストが提供されていますが、本ガイダンスでは、包装に該当するか否かについては、第3条1項第1号に定められた包装の定義に基づいて評価されなければならず、品目がAnnex Iに含まれているとするだけでは、包装として分類されるには不十分とされています。特に、経済事業者が製品の収納、保護、取扱い、配送または提示のために使用することを意図しているか、その製品に不可欠な部分ではないか、製品とともに使用・消費・廃棄されることを意図しているか等を確認する必要があるとしています。

3. 「製造業者(Manufacturer)」と「生産者(Producer)」の区別について

(1)PPWRの規定

PPWRは、EU市場に包装材や包装された製品を上市するサプライチェーン上の経済事業者に義務を課していますが、義務の主体として「製造業者(Manufacturer)」と「生産者(Producer)」という2つの概念を使い分けています。

  • 「製造業者(Manufacturer)」(第3条第1項第13号):包装または包装済み製品を製造する自然人または法人を指し、さらに、自らの名称または商標で包装または包装済み製品を設計・製造している場合には、その者が製造業者になるとされています。
  • 「生産者(Producer)」(第3条第1項第15号):加盟国領域内で初めて包装または包装済み製品を市場で提供する製造業者・輸入業者・流通業者を指します。生産者には、加盟国に設立され、その加盟国内で包装または包装済み製品を初めて提供する者、または他の加盟国の最終使用者に直接提供する者などが含まれます。

(2)本ガイダンスによる解釈

本ガイダンスは、両概念がPPWRにおいて異なる目的で定義されていると整理し、製造業者はEU全域で包装1単位につき1つの製造業者のみ存在するとしています。

製造業者は包装がEU市場に初めて提供される前に、第5条ないし第12条で指定された持続可能性及びラベル要件に適合にすることを保証しなければなりません(第15条第1項)。

一方、生産者は、加盟国における包装廃棄物の収集及び回収費用を負担する責任があります(第45条第1項)。このため、生産者は第44条に定められたとおり、関連する国内当局に登録及び報告を行い、その包装が廃棄物になることが見込まれる加盟国において、拡大生産者責任(EPR)料金を支払わなければならず、PPWRは包装が消費可能であり、廃棄物になると予想される加盟国において、製造業者、輸入業者、流通業者のいずれかの経済事業者の中から、EPR義務を負う生産者を特定しています。

したがって本ガイダンスによれば、製造業者と生産者が必ずしも同じ経済事業者であるとは限らず、包装の生産者は包装が廃棄物となる加盟国ごとに特定されるとしています。

以下のとおり、製造業者と生産者の定義等をまとめた表が示されています。

項目

Manufacturer(製造業者)

Producer(生産者)

定義

包装または包装済み製品の製造業者。上記によれば、これは実際に包装を製造する者ではなく、包装の設計仕様を注文し、決定する者を指す。ただし、ブランド所有者がマイクロ企業であり、かつ包装を供給する者が同じ加盟国に所在する場合には、ブランド所有者について例外がある。

包装または包装済み製品を、自らが所在する加盟国において初めて提供する、または他の加盟国の最終使用者に直接提供する、あらゆる製造業者、輸入業者または流通業者。

事業者数

EU全域で1つの経済事業者。

包装が廃棄物になることが見込まれる加盟国の領域内で、当該包装を初めて提供する経済事業者。

役割

包装が、持続可能性要件及びラベル要件に適合していることを確保する。

包装が廃棄物になることが見込まれる加盟国において、包装廃棄物の収集及び回収費用の負担に関する責任を負う。

4. 「輸入業者(Importer)」の定義と「支店」の地位について

(1)PPWRの規定

PPWRは、「輸入業者」をEU内に設立され、第三国からの包装をEU市場に投入する自然人または法人と定義しています(第3条第1項第17号)。

(2)本ガイダンスによる解釈

本ガイダンスは、輸入業者の定義は、EU規則2019/1020第12条第3条第9項の「輸入業者」の定義に基づいており、Blue Guide6で示される一般的な解釈指針に沿って解釈されるべきとしています。上記の定義から(a)EU内に設立されていること及び(b)EU外で包装された包装製品や包装製品を市場に投入することの累積的な要件を満たす必要があることが導かれるとしています。

本ガイダンスは、「設立されている」との要件は、執行及び市場の監視の管轄権を確保するため並びにEU内にコンプライアンス、トレーサビリティ、是正措置に関して責任者が存在することを保証するため、加盟国に登録された住所を有することと解釈されなければならないとしています。なお、「設立されている」との要件は、単なる支店ではなく、EUにおいて法人化された自然人または法人を指しており、支店は別個の法人格を有さないため、原則として、PPWRにおいては輸入業者としては認められていないとしています。

したがって、EU内に支店のみ有する非EU製造業者は、EU内に子会社を設立するか、または加盟国によって要求される場合、第3条第1項第19号で定義される認定代理人を任命しなければならないとしています。

5. 持続可能性要件について

持続可能性要件とは、EU市場に出す包装が満たさなければならない環境・循環経済上の設計の要件であり、主にPPWRの第5条~第11条に置かれており、包装の素材、有害物質、リサイクル可能性、リサイクル材含有率、堆肥化可能性、包装の最小化、再利用可能性などの要件になります。

(1)食品接触包装におけるPFASの使用規制について

(a)PPWRの規定

PPWRは、2026年8月12日以降、限界値以上のPFAS7を含有する食品接触包装の市場への投入を禁止しています(第5条第5項)。

「市場への投入」は「空の包装であろうと製品入りであろうと、包装をEU市場で初めて提供すること」と定義されています(第3条第1項第10号)。

(b)本ガイダンスによる解釈

本ガイダンスは、2026年8月12日以降に市場投入される食品接触包装はPPWRのPFAS限界値に適合しなければならないとしています。もっとも、PPWRは2026年8月12日以前に製造されたPFASを含む包装の在庫消尽のための移行期間を想定していないとしています。すなわち、同日より前に市場投入された包装は市場に残存することができ、撤去する必要はないとしています。

(2)リサイクル可能性要件について

(a)PPWRの規定

PPWR第6条において、リサイクル可能性に関して規定をしており、EU市場に出されるすべての包装はリサイクル可能でなければならないとされています。(第6条第1項)。また、リサイクル可能とみなされる条件は(a)マテリアルリサイクル用に設計され、その結果得られる二次原材料が第6条第4項に従い、元の材料と比較して十分な品質を有し、一次原材料を代替として使用でき(第6条第2項(a)号)、(b)当該包装が廃棄物となった場合に、第48条第1項及び第5項に従って分別回収することができ、他の廃棄物区分のリサイクル可能性に悪影響を及ぼすことなく特定の廃棄物の流れに選別され、かつ、本条第5項に従って定められる方法論に基づいて、十分な規模でリサイクル可能であること(第6条第2項(b)号)とされます。

第6条第2項(a)号は条文上、2030年1月1日、または第6条第4項の第1段落に基づく委任法発効から24ヶ月のいずれか遅い日から適用されると規定されています。

(b)本ガイダンスによる解釈

PPWRでは、第6条第1項の適用日について明示的な期限を規定していませんでした。本ガイダンス文書は、この規定のない部分について「2026年8月12日(PPWR本体の適用日)から適用される」との解釈を示しています。

これにより、リサイクル可能性に関する一般的義務(第6条第1項)と、より詳細なリサイクル設計要件(第6条第2項(a)号)とが異なる適用日を持つという構造になっていますが、本ガイダンスは第6条第4項に基づく委任法が、リサイクル設計要件及び関連する評価方法を完全に調和させるものであり、欧州委員会が2028年1月1日までに採択すべきものだと説明しています。

本ガイダンスはさらに、委任法が施行されていない段階では、製造業者は第38条及びAnnex VIIに基づくPPWRのリサイクル可能性の適合性評価手続を行う必要がなく、第6条第4項に基づく委任法が適用されるまでの間、製造業者は旧PPWD及び関連する統一規格EN13430:2004(マテリアルリサイクルにより回収可能な包装の要件)に基づくリサイクル可能性要件のみに準拠することが求められると説明しています。

(3)プラスチック包装のリサイクル材含有率について

(a)PPWRの規定

PPWRは、第7条において、プラスチック包装に一定の割合以上のリサイクル材を含める義務を定めています。ただし、食品接触を意図したプラスチック包装であって、リサイクル材含有が人の健康に脅威をもたらし、規則(EC)No1935/2004に適合しない場合(第7条第5項(a))または包装ユニット全体の総重量の5%未満のプラスチック部品については、リサイクル材含有率義務からの免除がされます(第7条第5項(b))。

(b)本ガイダンスによる解釈

本ガイダンスは、上記第7条第5項(a)及び(b)の両免除は直接適用されるため、委員会や国家の管轄当局から明確に認められる必要はないと説明しています。ただし、免除が適用されるためには製造業者は技術文書において、免除の要件の遵守を証明し、承認されたリサイクル技術の不存在に関する文書化された証拠を提出しなければならないと説明しています。

(4)包装の最小化について

(a)PPWRの規定

PPWRは2030年1月1日までに製造業者または輸入業者は、包装の形状・素材を考慮しつつ、包装の機能を確保するために必要な最小限まで、包装の重量と体積を減らす設計をしなければならないことを定めています(第10条第1項)。また、製造業者及び輸入業者は、Annex IVに定められた性能基準を満たさない包装及び製品の体積を増やすことを目的とした特徴、例えば二重壁、偽底、不要な層は以下の場合を除き市場に出せないとしています(第10条第2項)。

PPWRは、過剰な包装についても規定をしており、2030年1月1日までに、または第24条第2項に基づき採択された施行法の施行から3年後のいずれか遅い日までに、グループ包装、輸送包装、または電子商取引包装を充填する経済事業者が、最大空きスペース比率を50%にすることを保証しなければならないと定めています(第24条第1項)。

(b)本ガイダンスによる解釈

本ガイダンスは旧PPWD下の統一規格EN13428:2004で認められていた「消費者の受容性」及び「マーケティング」は、追加的な包装重量・体積を正当化する理由から削除され、一方、リサイクル可能性、リサイクル材含有率、再使用等の理由が新たな基準として追加されたことを説明しています。

また、本ガイダンスは、第10条に関して第24条との関係を説明しています。第10条と第24条は適用の対象が異なっており、本ガイダンスによれば、第24条の空きスペース比率は、グループ包装、輸送包装、電子商取引包装に適用され、それを使用または充填する経済事業者が遵守する必要があると説明されています。
一方、本ガイダンスは、販売包装については第24条の50%という一律基準ではなく、第10条の最小化要件で評価されると説明しています。

6. 統一ラベル要件

(1)PPWRの規定

PPWRは包装のラベルに関して、2028年8月12日、または第12条第6項もしくは第7項に従って採択された実施法の施行日から24ヶ月のいずれか遅い方から、市場に投入される包装には、消費者による分別を促進するため、その材料組成に関する情報を含む統一ラベルの表示を義務付けています(第12条第1項)。

(2)本ガイダンスによる解釈

本ガイダンス文書は、第12条の対象となる包装ラベルは網羅的かつ完全に調和されており(デポジット・リターン制度に関するものを除く)、EU法優位の原則に基づき、分別指示を追加する国内規則は許可されないと説明しています。

その帰結として、本ガイダンスは、加盟国は、上記施行日以降、EU統一ラベルの隣に国のラベルを保持することは許されないこと、経済事業者は移行期間なしでは新ラベル体制に適応できないため、各加盟国は当該日以前に国の規則を廃止するか、移行を可能にするように適合させるべきであり、また、域内市場への影響に鑑みて不釣り合いと判断される国の規則については、統一された要件の発効日に関わらず、可能な限り早期に廃止されるべきとしています。

7. デポジット・リターン制度について

(1)PPWRの規定

PPWRは、2029年1月1日までに、加盟国が、当年に初めて市場提供される一定の包装形式について、重量ベースで年間少なくとも90%を個別収集するために必要な措置を講じなければならないと定めています(第50条第1項)。例外もありますが、対象は、容量3リットル以下の使い捨てプラスチック飲料ボトルおよび容量3リットル以下の使い捨て金属製飲料容器となっています(第50条第1項)。そして、かかる90%収集目標を達成するため、加盟国が対象包装についてデポジット・リターン制度を整備し、販売時点でデポジットが請求されるようにする必要があると定めています(第50条第2項)。
加盟国は一定条件を満たす場合、デポジット・リターン制度の設置義務から免除されており、2026年暦年における対象包装の個別収集率が重量ベースで80%以上であり、かつ2028年1月1日までに90%の個別収集率達成のための実施計画を委員会に提出することを免除条件としています(第50条第5項)。

(2)本ガイダンスによる解釈

本ガイダンスは、PPWRは国境地域の小売業者に対して、より寛容な条件を提供しておらず、国境を越えた事業者に対してデポジット・リターン制度の目的や要件が損なわれないよう回避防止の義務を課していると説明しています。

また、本ガイダンスは、第50条第5項の加盟国免除は地理的基準ではなく、業績基準に基づく例外であり、例外として制限的に解釈されるべきとしています

さらに、本ガイダンスは、デポジットの請求とデポジット・リターン制度の設立は累積的な条件であり、デポジット・リターン制度がなければデポジット請求は不可能であると説明しています。そのため、最終販売業者がデポジット請求を免れるのは、加盟国全体がデポジット・リターン制度設置義務の免除を受けている場合に限られるとの整理を説明しています。

8. おわりに

以上のとおり、本ガイダンスは、PPWRの実務対応において特に問題となる包装等の定義、持続可能性要件、ラベル表示及びデポジット・リターン制度について、重要な解釈を示しています。PPWRは、包装の設計段階から、市場投入、表示、回収、リサイクル、廃棄物管理費用の負担に至るまで、包装のライフサイクル全体を規律するものであり、日本企業にとっても、EU向け製品の包装仕様やサプライチェーン上の責任分担に大きな影響を及ぼし得ます。また、EPRについては、加盟国ごとに「生産者」に該当する者が登録、報告、費用負担等の義務を負う可能性があるため、自社の取引形態に応じた確認が必要になります。

欧州委員会は、本ガイダンスの公表と同日にPPWRに関するFAQについても公表しています8。その他にも今後リサイクル設計基準等重要な規定が整備されるため、EU及び加盟国レベルの動向を継続的にフォローすることが重要になります。

PPWRを含む拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility:EPR)関連法制については、2026年4月のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターについてもご参照ください9

1 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2025/40/oj/eng

2 https://environment.ec.europa.eu/publications/guidance-document-packaging-and-packaging-waste-regulation-ppwr_en

3 Annex to the Communication to the Commissionとの文書が本ガイダンスとなります。

4 https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/1994/62/oj/eng

5 以下、条文を引用する場合、特に断りがない限りPPWRの条文を指します。

6 2022年EU製品規則の実施に関する「ブルーガイド」(EUR-Lex-C:2022:247:TOC-EN-EUR-LEX)

7 有機フッ素化合物であるペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物の総称

8 https://environment.ec.europa.eu/publications/faq-packaging-and-packaging-waste-regulation-ppwr_en

9 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/news/legal-news/legal-20260424-1.html

包装・包装廃棄物規則のガイダンスの公表

( PDF 405.6KB )

執筆者

北村 導人

北村 導人

パートナー, PwC弁護士法人

山田 裕貴

山田 裕貴

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makoto hibi

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