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近時、日本を含む世界各国において、ESG/サステナビリティに関する議論が活発化する中、各国政府や関係諸機関において、ESG/サステナビリティに関連する法規制やソフト・ローの制定又は制定の準備が急速に進められています。企業をはじめさまざまなステークホルダーにおいてこのような法規制やソフト・ロー(さらにはソフト・ローに至らない議論の状況を含みます。)をタイムリーに把握し、理解しておくことは、サステナビリティ経営を実現するために必要不可欠であるといえます。当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターでは、このようなサステナビリティ経営の実現に資するべく、ESG/サステナビリティに関連する最新の法務上のトピックスをタイムリーに取り上げ、その内容の要点を簡潔に説明して参ります。
今回は、日本のサーキュラーエコノミーと拡大生産者責任(EPR)の動向についてご紹介します。
近年、気候変動対策と並ぶ重要なサステナビリティ課題として、サーキュラーエコノミー(循環経済)への関心が世界的に高まっています。資源の採取、製造、消費、廃棄という一方通行型(リニアエコノミー)の経済モデルから脱却し、資源の消費を抑えつつ、再資源化等を通じて資源を有効活用しながら、社会に価値を生み出し続ける循環型の経済システム(サーキュラーエコノミー)への移行が急務とされています。
この文脈において、拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility:EPR)は、サーキュラーエコノミーを支える中核的な政策手法として、国際的に注目を集めています。OECDは、EPRを「生産者の責任を、製品のライフサイクルにおける消費者使用後の段階にまで拡大する環境政策上のアプローチ」と定義し、以下の点を主な特徴として指摘しています。
本稿では、国際的な潮流を踏まえつつ、日本における主なEPR関連法制度を概観します。
OECDは2001年に「拡大生産者責任―政府向けガイダンスマニュアル」を策定し、EPR制度構築のための一般的な指導原則及び選択肢を示し、2016年には、各国におけるEPR政策の拡大を踏まえ、「拡大生産者責任・効率的な廃棄物管理のためのアップデートガイダンス」(以下「アップデートガイダンス」といいます)を策定しています。
アップデートガイダンスでは、2001年のガイダンスマニュアルの内容が現在も有効であることを確認した上で、①環境配慮設計(DfE)インセンティブの強化(EPRの最も重要な目的であるDfEを実現するため、生産者が負担するリサイクル費用の金額を環境配慮設計と紐付ける調整料金制度(Modulated Fee)の導入等)、②フルコストの内部化(廃棄物処理に要する費用を全額カバーするレベルに料金を設定し、環境コストを内部化)、③競争政策との統合(EPR制度において市場が競争的であることを確保)、④対象製品の範囲拡大(環境面で懸念のある使用済製品を対象に対象範囲を拡大)などの措置が必要であることが述べられています。
EUでは、EU指令に基づき、包装廃棄物、電池、使用済自動車(ELV)、電気電子機器廃棄物(WEEE)等について、加盟国がEPR制度を導入しています。特に、2024年に採択されたEU包装・包装廃棄物規則(Packaging and Packaging Waste Regulation:PPWR)(Regulation(EU)2025/40)は、従来の包装・包装廃棄物指令(Directive 94/62/EC)を「規則(Regulation)」に格上げしたもので、加盟国における直接適用を可能とし、以下の内容を含んでいます。
PPWRは、EU域外企業であっても一定の要件を充足する場合は適用対象となり、違反がある場合、EU市場へのアクセスの中断や禁止などの措置、各加盟国の法令に基づく罰則が課される可能性があります。そのため、日本企業であっても、早期に、EU向け輸出製品の包装設計、EPR登録・報告・拠出、PROへの参加などを具体的に検討・推進する必要があります。
日本におけるEPR関連法制度は重層的に構成されています。以下、関連する制度を概観します。
2000年に制定された循環基本法は、廃棄物・リサイクルに関する個別法を束ねる横断的な基本法として位置づけられています。同法では、循環型社会の形成に当たり、国、地方公共団体、事業者、国民の適切な役割分担と、必要となる費用の適正かつ公平な負担を基本原則として定め、この枠組みの中で、事業者については、単に製品を製造・販売する段階にとどまらず、製品が使用された後、廃棄物・循環資源となった段階までを視野に入れた責任を負うことが明示されています。
具体的には、事業者は、事業活動に伴う廃棄物等の発生抑制に努めるとともに、製品等が循環資源となった場合には、自ら循環的利用を行い、または循環的利用が適切に行われるための措置を講ずる責務を負うものとされており、さらに、循環的利用が行われない場合には、自らの責任において適正に処分する責務が規定されています(11条1項、3項、4項)。加えて、製品・容器等の製造・販売等を行う事業者については、耐久性の向上、修理体制の整備、設計段階での工夫、材質・成分表示などを通じて、循環的利用を前提とした製品設計(いわゆるエコデザイン)を行う責務を有するものとされています(同条2項)。
循環基本法は事業者のEPRの一般原則を定めるものであり、具体的義務は、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法などの個別法において定められています。
廃掃法は、廃棄物の分別、収集、運搬、再生、処分のプロセスを規律の中心としているところ、事業者は、①製造、加工、販売等に際し、製品等が廃棄物となった場合の処理困難性を評価し、適正処理が困難にならないような製品等の開発を行うこと、②製品等に係る廃棄物の適正処理方法について情報提供を行うこと等により、その製品等が廃棄物になった場合に適正処理が困難になることのないようにする責務を有する(3条2項)と定めています。また、市町村長は、一定の製品・容器等の製造事業者等に対し、指定一般廃棄物の適正処理を補完するために必要な協力を求めることができる(6条の3第2項)と定めています。
このように、廃掃法は、生産者等にEPRに関する義務を直接的・具体的に定めるものではありませんが、事業者に対し廃棄物の適正処理の観点から一定の責務を課し、協力を求めています。
資源有効利用促進法は、製品の設計、製造・販売、使用後・廃棄という製品ライフサイクル全体を通じて、事業者に3R(リデュース・リユース・リサイクル)への責務を課しています。
同法の規律は、従来、自主的取組の促進を中心とするソフトロー的性格が強いものでしたが、近年のCE(サーキュラーエコノミー)政策の本格化、EUにおける再生材使用義務・設計規制の強化、GX(グリーントランスフォーメーション)政策との接合を背景に、日本でもより実効的な制度へと進化させる必要性が指摘されてきました。このような背景の下、2026年4月1日施行の改正資源有効利用促進法では、①「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」に関する再生資源の利用計画策定・定期報告義務の導入、②環境配慮設計の促進を図るための認定制度の導入、③GXに必要な原材料等の再資源化の促進、④CEコマースの推進などが定められています。
この中でも、①については、一定規模以上の製造事業者等に、再生資源の利用に関する計画を策定・提出し、毎年度その実施状況を報告する義務を課す(同法23条、24条)ものであり、かかる義務は、一定の生産者に数値目標と行政モニタリングを伴う法的義務を課すものとしてEPRの一部を構成するものと考えられます。
容器包装リサイクル法は、家庭から排出される容器包装廃棄物について、消費者、市町村、事業者の役割分担を定め、それぞれ、消費者が分別排出を行い、市町村が分別収集を担い、そのうえで事業者が再商品化(リサイクル)を行うという責任を課しています。
同法上、一定の容器(特定容器)を利用して商品を販売する事業者(特定容器利用事業者)、特定容器を製造・輸入する事業者(特定容器製造等事業者)または一定の包装(特定包装)を販売する商品に利用する事業者(特定包装利用事業者)のうち一定規模の事業者には、市町村が分別収集した容器包装廃棄物(分別基準適合物)のうち一定のものについて、再商品化義務量の再商品化を行う義務が課されます(11条~15条)。ここでいう「再商品化」とは、①自ら分別基準適合物を製品の原材料として利用すること、②自ら燃料以外の用途で分別基準適合物を製品としてそのまま使用すること、③分別基準適合物につい、製品の原材料として利用する者に有償又は無償で譲渡し得る状態にすること、④分別基準適合物について、製品としてそのまま使用する者に有償又は無償で譲渡し得る状態にすることとされています(2条8項)。
この制度は、容器包装廃棄物の処理に要する費用や責任を、市町村や消費者のみならず、製造事業者等に負担させるもので、EPRを定めるものです。もっとも、製造事業者等は、主に再商品化委託料の支払いを通じて再商品化義務を履行することになり、金銭的EPRの要素が強いものとなっています。
家電リサイクル法は、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機のいわゆる「家電4品目」の使用済み家電について、排出者、小売業者、製造業者等の三者に、それぞれ法令上の義務を課しています。
排出者は、使用済家電(特定家庭用機器廃棄物)を収集運搬または再商品化等を行う者に引き渡すとともに、収集運搬やリサイクルに要する費用を支払う義務を負います。小売業者は、自らが販売し、または買替え時に排出される特定家庭用機器廃棄物について、排出者から引き取りの求めがあった場合には引き取り、製造業者等に引き渡すことが義務付けられています。そして、製造業者等は、自らが製造・輸入した家電について、使用済みとなった特定家庭用機器廃棄物を指定引取場所の設置において引き取り、それを遅滞なく再商品化等(再商品化および熱回収)する義務があります(17条、18条)。
このように、家電リサイクル法は、製造業者等に対して、使用済み製品を引き取り、再商品化等を行うという物理的責任を明確に課している点に特徴があります。一方で、再商品化等に要する費用自体は排出者が負担する仕組みであり、生産者が経済的責任を全面的に負う制度とはなっていません。この点で、日本の家電リサイクル法におけるEPRは、物理的責任を中心とするEPRとして位置付けられています。
自動車リサイクル法は、使用済自動車の不法投棄防止と最終処分量の削減を目的とする法律であり、市場ベースのリサイクルシステムを前提としつつ、環境負荷の高い特定工程について生産者の関与を強化しています。
自動車製造業者等は、自らが製造または輸入した自動車が使用済みとなった場合に発生する①フロン類、②エアバッグ類、③シュレッダーダスト(ASR)という特定物品について、引取りおよび再資源化(フロン類については破壊)を行う義務を負います。一方で、使用済自動車のリサイクルに必要な費用については、原則として自動車所有者が負担する仕組みが採られています。
小型家電リサイクル法は、携帯電話、デジタルカメラ、小型家電製品などに含まれる有用金属の回収・再資源化を目的として制定された法律です。
同法の対象となる「使用済小型電子機器等」は、政令所定の多数の小型家電製品であり、家電リサイクル法の対象となる大型家電とは異なり、製品種類が多様で流通形態も複雑です。このため、同法は全国一律の義務型制度ではなく、市町村と事業者の自主的な取組を基軸とする制度設計を採っています。国の認定を受けた認定事業者が、市町村等から引き渡された使用済小型家電を回収・再資源化する主体であり、廃掃法の特例として、広域的な回収・再資源化を行うことが可能とされています。この仕組みの下では、製造業者に対して、使用済製品の引取りや再資源化を直接義務付ける規定は置かれていません。
プラスチック資源循環法は、海洋プラスチックごみ問題や気候変動、諸外国による廃棄物輸入規制の強化等を背景として、2022年4月1日に施行された包括的な循環型社会関連法であり、プラスチックを製品分野横断の素材として捉え、製品の設計から使用、排出、回収、再資源化に至るライフサイクル全体を対象に、資源循環の促進を図る点に特徴があります。
プラスチック資源循環法は、容器包装リサイクル法や家電リサイクル法のように、特定製品について生産者に一律の回収・費用負担義務を課す制度ではありません。代わりに、3R+Renewable(リデュース、リユース、リサイクル+再生可能資源への転換)を基本原則とし、国、地方公共団体、事業者、消費者のそれぞれに役割を割り当てる多主体参加型の制度設計が採られています。EPRの観点からみると、同法は、生産者に対して直接的・全面的な引取り義務や費用負担義務を課すのではなく、環境設計認定、判断基準策定など規制と支援の組合せにより関連事業者の行動変容とイノベーションを誘導すべく、設計・提供・回収・再資源化への関与を段階的に求める分散型・促進型のEPRとしての性格を有すると考えられます。
日本の拡大生産者責任(EPR)制度は、現状、物理的責任及び金銭的責任を含む包括的な制度というよりも、容器包装リサイクル法は主に再商品化委託費用の負担で義務を履行する金銭的EPRの要素が強く、家電リサイクル法や自動車リサイクル法では、(排出者や自動車所有者が費用を負担する一方で、)生産者は、使用済製品を引き取り、リサイクルを実施する物理的EPRの要素を有するものであり、いずれも限定的なEPRという特徴を有しています。また、義務的EPR制度に加え、自主的EPR制度が併存している点も特徴的です。
EUでは、PPWR等を通じて、生産者によるコスト負担原則が明確化されているほか、最低リサイクル材含有割合やリユース・リフィルに関する数値目標の設定、環境配慮設計(DfE)を促す調整料金(eco-modulation)やデポジット制度の導入など、実効的なサーキュラーエコノミーを実現するための制度が導入されており、日本における今後の制度設計の動向も注目されるところです。
資源の枯渇、気候変動問題、地政学リスク等外部環境の変化やグローバルの規制動向からすれば、サーキュラーエコノミーへの移行の流れは今後ますます加速化するものと考えられます。日本企業としても、サステナブルな経営につなげるべく、EPR制度を含めた国際的な規制動向等も踏まえ、自社製品のDfEに適した設計から使用後・消費後の回収、再商品化等に向けたエコシステムを構築するなど、欧州の先進的な規制動向や外国企業の先進的な取り組みを先取りまたは吸収する形で自社の戦略を検討することが望ましいと考えられます。
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