M&Aを成功に導くビジネスDD(デューデリジェンス)の進め方【第8回】ベンチャー企業に対するビジネスDD

2020-06-24

はじめに

これまでは、一般的なビジネスDDについて、その考え方や進め方などについてみてきました。今回は少し視点を変えて、ベンチャー企業へのビジネスDDについて考えていきたいと思います。近年、大手企業によるベンチャー企業への出資検討が増えています。そのため、ベンチャー企業へのビジネスDDを実施する機会も多くなってきました。しかしながら、実際にビジネスDDを実施する際に、クライアントもプロフェッショナルファームも戸惑うことがあるようです。ベンチャー企業に対するビジネスDDでは、これまでに見てきた一般的なビジネスDDのやり方をそのまま当てはめると、うまくいかないことがあります。今回は、ベンチャー企業のDDに関して、一般的なビジネスDDとの違いに触れながら、そのポイントについて述べていきたいと思います。

(1)ベンチャー企業のタイプ

最初に、ベンチャー企業とはどういう企業を指すのかを、考えてみたいと思います。少し前までは、ベンチャー企業というと、「若い世代が数人集まり、Tシャツにデニムでマンションの1室などを借りて、自分たちの仲間内で事業を開始している」といったイメージがあった人もいるのではないでしょうか。しかしながら、ベンチャー企業であっても経験豊富な人材が中核になっている場合や創業後すぐに資金調達を行い、組織化を進めている企業もあります。また、サービス開始からしばらくたっているようなベンチャー企業も存在しています。ベンチャー企業とはどういう企業だと認識すればよいでしょうか。今回はベンチャー企業を、大きく以下のような分類で考えてみたいと思います。

まずは、スタートアップか否かで考えてみます。皆さんの中にはベンチャー企業=スタートアップ企業というとらえ方をしている方もいると思います。しかしながら、厳密には、ベンチャー企業とは「既存の枠組みを変えるような挑戦的な事業を試みている企業」であり、スタートアップ企業は「サービス開始から間もない企業」という意味ではないかと思います。したがって、ベンチャーか否かとは事業の内容、スタートアップか否かとはステージの話といえるでしょう。多くの場合、スタートアップ企業は、従来の枠組みを変えるような何かしら新しい価値提供を目指してサービスを開始していることが多く、そのため、ベンチャー企業=スタートアップ企業という認識になっていると思います。

スタートアップ企業はそのサービス開始からの時期により、一般的には、「シード(サービス開始準備期)」「アーリー(サービス開始直後)」「ミドル(サービスが順調に立ち上がり始めた段階)」「レイター(IPOを目指す場合にはIPOが具体的に検討できるような段階)」の4つのステージに分類されます。それぞれのステージで、資金調達が行われることが多く、その際にビジネスDDを実施することとなります。ステージごとのビジネスDDの留意点については後述いたします。

また、スタートアップではないベンチャー企業...

このコンテンツはPwCアドバイザリー合同会社のプロフェッショナルによるM&A情報・データサイトMARR Onlineへの寄稿記事です。詳細はこちらからお読みください(要登録/無料)。なお、執筆者の肩書などは執筆時のものです。

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