
Worldwide Tax Summary 2025年4月号
本稿では、海外税制(米国、EU、ベトナム、国連)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年4月号 寄稿)
2020-06-03
第6回では、ビジネスDDにおける事業計画の位置づけ及びその概要、PMIに向けたビジネスDDについて解説しました。第7回では、事業計画に焦点を当て、より実務的な観点から解説をしていきたいと思います。事業計画の策定は、大きく2つのパートに分けることができ、一つ目がスタンドアローン、二つ目がシナジーです。
まず、スタンドアローンとシナジーの考え方について整理したいと思います。スタンドアローンでの事業計画とは、対象会社単独での事業計画を指します。事業会社が単独で経営していった場合にどのような売り上げや収益を達成するのか、設備投資や借入などはどのように推移していくのかなどを、対象会社から提出された計画の蓋然性検証を通して見ていきます。そういう点では、スタンドアローンではディールに因らない対象会社単体の計画の蓋然性を見ていくと言えます。バリュエーションの観点からは、そうすることによってダウンサイドの下限を見ていくことができます。一方、シナジーではディールの目的を踏まえながらプラス面とマイナス面(ディスシナジー)の両方から、対象会社への投資を踏まえての計画の蓋然性を見ていきます。そうすることで、バリュエーションの観点からは、そのディールに投じることができる金額の上限を見ていくことができますし、それを実現するにあたりPMIで必要なことのヒントを得ることもできます。それでは、それぞれ解説していきます。
まずは、対象会社から提出された事業計画(主としてPL)の分析を進めていきます。PLの数値がどのようなロジック(計算式)で作成されているのかを分析するためにパラメーターに分解(因数分解)していきます。売上ならば、「客単価×客数」や「新規案件パイプライン金額×獲得見込み率」といったイメージです。分解ができたら、各パラメーターの分析・蓋然性検証をしていきます。ここでは2つの観点から見ることが多いです。1つ目が、IM(インフォーメーションメモランダム)やマネジメントインタビューで示されている、対象会社が考える今後の成長に向けた各種施策等が適切に織り込まれているのか、2つ目が、経年変化で見た際にどのような特異な動き(変化点)があるのかです。
1つ目の観点では、対象会社が計画している施策の蓋然性を踏まえながら検証していきます。当然ながら多くのケースでは、対象会社は成長する絵を描いており、その成長を実現させる各種施策についてもIM等で説明しています。それら施策が、どのパラメーターに影響を与え、蓋然性がどの程度あるのかを検証していきます。その施策がこれまで実現できなかった背景/計画期間ならばできる背景等を探っていくことで、蓋然性の見立てに資するインプットを得ることができます。
2つ目の観点では、特異な動き(変化点)を捉え、その背景を掴むことが必要です。例えば、売上を分析していくなかで「営業人員あたり売上高」が急増しているような場合には、その背景について対象会社とコミュニケーションを取りながら確認していくことが必要です。なお、過去推移における変化点を分析していくことは、ビジネスDDの分析にフィードバックをすることにも繋がります。数値面の分析のみで何かを言い切れることは多くはないものの、それを糸口にして他の分析と組み合わせることで示唆を得られる可能性は十分にあります。
また、分析を進めていく上で、対象会社から提出された様々な内部資料を組み合わせながら進めていくことが重要です。これまでの人員数推移、営業報告書(受注/失注案件分析等)、取締役会資料、月次決算資料など、幅広く開示資料を活用しながら進めていくことが肝要です。ただし、闇雲に見ていくのでは効率性を担保することは困難ですので、分析を通して「こういうデータがあれば、より深く分析できそうだ」ということを考えながら内部資料にあたっていくことが必要です。
次はいよいよビジネスDDの結果を織り込んでいき、バイサイドとしての「修正事業計画」にしていく段階に入ります。各パラメーターに補正をかけていく...
このコンテンツはPwCアドバイザリー合同会社のプロフェッショナルによるM&A情報・データサイトMARR Onlineへの寄稿記事です。詳細はこちらからお読みください(要登録/無料)。なお、執筆者の肩書などは執筆時のものです。
シニアアソシエイト, PwCアドバイザリー合同会社
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