PwC Intelligence ―― Monthly Economist Report

世界のメガトレンドに日本はどう対処すべきか(2023年11月)

  • 2023-12-04

2022年10月28日に当社のシンクタンク部門としてPwC Intelligenceが設立して1年あまりが経過した。PwC IntelligenceはVUCA時代とも言われる不確実な時代において、ビジネス環境の短期・中長期変化をとらえ、クライアント企業が未来を見通すための羅針盤となるべく設立した組織である。日本および世界が抱えるメガトレンドとしては、図表1のとおり、気候変動、テクノロジーによるディスラプション(創造的破壊)、人口動態の変化、世界の分断、社会の不安定化の5つを指摘することができるだろう。

本稿ではこれまでの寄稿内容とはやや趣向を変えて、より巨視的な目線から5つの世界的な潮流変化を敷衍しつつ、昨年に執筆した拙稿の内容をアップデートすることを通じ、日本はどのように対処していくべきなのかをまとめることにしたい。

気候変動は何をもたらすか

気候の変化は地球規模で大きな打撃を与える可能性が指摘されている。図表2は「グローバルリスク報告書 2023」から、今後2年間と今後10年間の2つの時期に分けて深刻な影響をもたらす懸念のあるリスクを示したものだ。それによると、今後2年間のリスクとして環境関連のリスクが上位10位の中で5つ、今後10年間のリスクとして上位10位の中で6つと最も多く挙げられている。

環境関連のリスクで上位となっているのが、気候変動の緩和策・対応策の失敗である。具体的に懸念されるのは、地球温暖化に伴う自然災害と極端な異常気象、それらが人類の生活や社会に及ぼす悪影響である。図表3は世界の平均気温の推移を1991年~2020年平均との偏差の形でみているが、1890年から1980年までの100年間の偏差はやや増加基調にあるものの概ね安定的に推移していたことがわかる。こうした状況が明確に変化したのは1980年以降であり、2000年代、2010年代、2020年代と年を追うごとに気温がトレンドとして高まっている。2022年の世界の平均気温の基準値からの偏差は+0.24℃で、1891年の統計開始以降、6番目に高い値である。世界の年平均気温は100年あたり0.74℃の割合で上昇を続けている。こうした状況を放置すれば、自然災害や異常気象はより深刻化することになる。


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執筆者

片岡 剛士

チーフエコノミスト, PwCコンサルティング合同会社

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