全ての業界のプレーヤーが、競争環境、消費者行動、世の中の期待における破壊的変化に適応しつつある
2018年7月26日
PwC Japanグループ
※本プレスリリースは、2018年6月6日にPwCが発表したプレスリリースの翻訳です。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
2018年6月6日‐PwCの年次調査「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック2018-2022(Global Entertainment & Media Outlook 2018-2022)」[English]によると、エンタテイメント・メディア業界で続く急速な進展は、躍動感あふれる新たな局面に突入しました。成長が広範囲にわたり続く中、ばらつきはあるものの、エンタテイメント・メディア、テクノロジー、通信業界のコンバージェンス(融合)、消費者とのつながり、消費者との信頼構築の必要性といった3つの要素が、この業界の全ての企業に影響を及ぼしています。
「コンバージェンス(融合)3.0」は、競争が激化する業界の再編を促す潮流です。過去のコンバージェンス1.0および2.0と異なり、これにより誕生したスーパーコンペティターと事業領域を絞ったニッチブランド企業が、多様な要求をする消費者とのつながりや収益確保に努めています。
この潮流により、これまでのエンタテイメント・メディア、テクノロジー、通信の各業界を隔てていた垣根は崩れつつあります。大手インターネットプロバイダーやプラットフォーマーにおいては垂直統合が進んでおり、巨大オンライン企業はコンテンツビジネスに参入しています。印刷媒体とデジタル媒体、ビデオゲームとスポーツ、無線と有線のインターネット、ケーブルとオンライン、ソーシャルメディアと従来メディアの違いも、曖昧になりつつあります。その過程で、新たな収益源の確保や、適切なビジネス規模の創出など、あらゆる企業でビジネスモデルの再構築が進んでいます。必要なケイパビリティには、顧客となるファンの絞り込みや、より効果的な顧客とのつながりの確立などが挙げられます。これらの変化や技術の進化が続く中で、消費者および社会との信頼構築、またその維持の重要性は高まっており、変化のスピードは加速の一途をたどるでしょう。
これらの変化は、業界全般的に収益が伸長していくことに貢献しています。本調査では、15のエンタテイメント・メディア業界に関連するセグメントを対象に消費者支出と広告収入に関する動向を53の国と地域について分析しており、今後5年間の世界におけるエンタテイメント・メディア業界は、年平均成長率(CAGR)4.4%で成長し、その総収益は2017年の1兆9,000億米ドルから、2022年には2兆4,000億米ドルに達すると予測しています。
業界全般的に収益が増加する中で、最も急速な伸びを示すのはデジタル主導のセグメントだと予想されます。バーチャル・リアリティ(VR)はその先導役になると見られ、小規模な収益からの伸びではあるものの、5年間で年平均40.4%の伸びが見込まれています。そして、次にオーバー・ザ・トップ(OTT)が続き、10.1%の伸びとなるでしょう。対照的に、新聞や雑誌の収益は今後5年間で減少すると見込まれます。書籍、ラジオ、従来のテレビやホームビデオの伸びは、それぞれ年平均2%を下回る水準にとどまるでしょう。
大きな伸びが見込まれるセグメントにおいても、サブセグメント間では著しい違いが見られます。ビデオゲーム・eスポーツのセグメントは、全体で年平均7.2%の成長が見込まれますが、eスポーツだけで見ると年間20.6%の大幅な伸びとなる見込みです。一方で、世界における音楽に関する収益は年平均6.1%の底堅い伸びになると予想されますが、その中で、CDを含むフィジカル、ダウンロード、着信音の3つは大幅に減少すると見られます。世界の映画興行収入は2017年に4.3%増加しましたが、フランス、米国、オーストラリアでは減少しました。世界のテレビ広告収入は2022年まで年平均2.7%の増加が予想されるものの、2017年には初の減少となりました。そして、新聞に関する収益はほぼ全ての国で減少していますが、インドでは2022年に10億米ドル近くまで増加すると見られます。
各国のエンタテイメント・メディア業界の収益についても同様に、明確な違いが見られます。2022年までに最も大きな伸びが予想される市場はナイジェリアとエジプトであり、インターネットアクセスへの消費者支出急増が主な要因となっています。エンタテイメント・メディア業界の収益全体の伸びは年平均でナイジェリアが21.1%、エジプトが17.2%となる見通しです。しかし、インターネットアクセスを除けば、インドにおける消費者支出の伸びが年平均10.4%と最も大きく、これに次いでインドネシアが8.4%となる見込みです。同様の基準で見ると、欧州または北米において、2022年までに年平均成長率が3%を超える市場は存在しないと予想されます。また、市場規模では、米国が依然として中国を上回っているものの、中国の高い成長率で、市場規模は米国にほぼ匹敵することになり、本業界における2大巨頭になることが見込まれています。
PwCエンタテイメント・メディア部門のグローバルリーダーであるPwCオランダのエネル・ヴァン・エデン(Ennèl van Eeden)は次のように述べています。
「本調査における世界の動向を示す数値の背景にある要因は、無限大に迫る極めて小さな要因の積み重ねであるとともに、国や地域、セグメントごとで目が眩むほど異なった動向を示しています。ほぼ全ての動向に関し、世界53の国と地域、15のセグメントのどこかで真逆の動向が見られます。変化のスピードは当面衰える気配はなく、人工知能(AI)や拡張現実(AR)などの新しい技術が競争の場に変化をもたらし続けるでしょう。技術の進化によって、エンタテイメント・メディア業界のあらゆるセグメントで個人の好みに合わせた低価格のコンテンツ提供が可能になりつつあります。コスト効率を高めるための先端技術への投資は、企業にとって急務となっています」
業界を再編する最新のコンバージェンス(融合)の潮流の背景には、どのような要因があるのでしょうか。本調査では5つの主な要因を挙げています。
本調査で分析した全ての変化の要因や動向において、1つの包括的な課題が浮き彫りとなりました。それは、消費者やエコシステムのパートナーから信頼を獲得・維持することが絶対的に必要であるということです。現在、多くの業界において信頼がかつてないほどに揺らぎ、規制当局がエンタテイメント・メディア業界におけるデータ使用の在り方を問題視しています。消費者との信頼を維持する能力は企業が差別化を図る上で必要不可欠な要素となりつつあり、エンタテイメント・メディア企業は試練の時期を迎えていると言えるでしょう。なぜなら、これらの企業はコンテンツ、データ、収益、社会的影響、広告コンテンツの適切性など、多方面において信頼できる企業であることを示し続けなければならないためです。まずはコンテンツやブランド、品質が保証されたサービスの提供から信頼を構築することが重要です。
本調査で示された本業界の将来の展望を踏まえ、企業は成功し続けるために何をどのように実施すべきなのでしょうか。
PwCエンタテイメント・メディア部門のグローバルアドバイザリー・リーダーであるPwC米国のクリストファー・ボルマー(Christopher Vollmer)は次のように述べています。
「未来で成功を収めるためには、エンタテイメント・メディア業界の企業は事業活動のあらゆる側面を見直す必要があります。企業はこれまでの枠組みを超えて、未来の自社の姿を描き、マネタイズの在り方を考え、ケイパビリティを強化し、信頼を構築・維持しなければなりません。現在、起こっている変化の速度や規模を考えれば、スピードは不可欠です。率直に言って多くの企業は、現在の市場でのポジショニングを支えるビジネスモデル、資産、ビジネスの手法およびケイパビリティでは、将来に備えるには十分ではないでしょう。現状維持という選択肢はあり得ません」
以上
*本調査レポートの英語版「Global Entertainment & Media Outlook 2018-2022」は2018年6月に発表しています。
本年で19回目を迎えるPwCの年次調査「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック2018-2022」[English]は、15のエンタテイメント・メディア業界に関連するセグメントを対象に今後5年間の消費者支出と広告収入に関する動向を53の国と地域についてグローバル分析した包括的なデータソースです。
書籍、B2B、映画、データ消費、インターネットアクセス、インターネット広告、雑誌、音楽、ラジオ、ポッドキャスト、新聞、OTTビデオ、屋外広告、従来のテレビやホームビデオ、テレビ広告、ビデオゲーム・eスポーツ、バーチャルリアリティ。「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック2018-2022」で網羅している各セグメントの詳細な定義は、下記リンクからアクセスいただき、ご覧ください。
本レポートは、「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック2018-2022」に記載されたデータをもとに作成されています。消費者支出と広告収入に関する包括的データはwww.pwc.com/outlookの定期購読にて閲覧可能です。PwCは「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック2018-2022」のオンライン上のデータの更新に努めています。そのため、本レポートに記載のデータがオンライン上のデータと相違する可能性があることをご了承ください。「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック2018-2022」は消費者支出と広告収入に関する最新のデータを記載しています。
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