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LIBOR移行対応アップデート―ハイライト(2021年7月16日~7月31日)

今号では、ARRCが発表したCMEのターム物SOFRの正式推奨と今後予想される展開、9月に予定されているクロス・カレンシー・スワップのRFRへの移行とその影響などについて取り上げます。

1.ARRCがターム物SOFRを正式推奨

米国代替参照金利委員会(ARRC)は、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のフォワードルッキングなターム物担保付翌日物調達金利(以下、ターム物SOFR)を正式に推奨することを発表しました。今回の推奨は、ARRC推奨のフォールバック条項が含まれるレガシー契約において、正式に推奨されたターム物SOFRを米ドルLIBORの第1位の代替オプションとして指定している場合に、特に関連があります。

すでに発表されているように、Refinitiv社は今後、ARRCが推奨するスプレッド調整およびキャッシュ商品向けのスプレッド調整後フォールバックレートを公表する予定です。このレートは、CMEのターム物SOFRを含むSOFRに基づき、国際スワップデリバティブ協会(ISDA)のデリバティブのIBORフォールバックと同様に、SOFRと米ドルLIBORの経済的差異を考慮したスプレッド調整を取り入れたものになります。

SOFRファーストによる流動性の確保

ARRCの正式な推奨は、7月の最終週にSOFRデリバティブの取引量が増加したことにより実現しました。ARRCは当初、ターム物SOFRはSOFR先物の取引価格に基づいているため、ターム物SOFRを推奨する条件としてSOFRデリバティブの取引が活発であることを挙げていました。最近のスワップ取引量の増加は、米国商品先物取引委員会(CFTC)の市場リスク諮問委員会(MRAC)がインターディーラーブローカーに対して、7月26日以降、米ドルのスワップ取引を米ドルLIBORはなくSOFRに基づいて行うように推奨した「SOFRファースト」の取り組みの成功によるものです。

次に来るもの:RFRファースト

スワップ取引のコンベンション変更は、より広範な取り組みの第1段階に過ぎません。MRACは、第2段階としてディーラー間のクロス・カレンシー・スワップについても同様のコンベンション変更を2021年9月21日に行うことを推奨していますが、非線形デリバティブの切り替え目標日は未定となっています。また、上場デリバティブのコンベンション切り替えに向けた広範な推奨を含め、この取り組みの最終段階の目標日もまだ確定していません。ARRCは、9月21日付けで、クロス・カレンシー・スワップのインターディーラー市場におけるクォートをリスク・フリー・レート(RFR)へと切り替えるという推奨について支持を表明しています。英国では、ユーロRFRに関するワーキンググループと同様に、イングランド銀行(BoE)と金融行為規制機構(FCA)が支持声明を発表しました。またこの取り組みは、スイスフランの基準レートに関するナショナル・ワーキング・グループの直近の会議でも支持を得ています。

キャッシュ商品におけるターム物SOFRの使用

ARRCによる正式な推奨は、ARRC推奨のフォールバック条項を含む契約におけるフォールバックの役割だけでなく、新しいキャッシュ商品の発行における参照金利としてのターム物SOFRの使用増加にもつながると期待されています。ARRCは、今回の推奨に先立ち、ターム物SOFRの使用範囲に関する推奨ベストプラクティスや、ビジネスローンにおけるSOFR平均とターム物SOFRの使用に関するコンベンションの推奨など、ターム物SOFRの使用に関する追加ガイダンスを発表しました。ARRCは、他の形態のSOFRに加えて、新規のマルチ・レンダー・ファシリティ、ミドル・マーケット・ローン、トレード・ファイナンス・ローンおよび特定の証券化商品において、ターム物SOFRの使用を支持していますが、デリバティブ市場での使用は、ターム物RFRを参照するキャッシュ商品のヘッジ目的という狭い取引に限定すべきであるとしています。Loan Syndications & Trading Association(LSTA)は、ローン市場でのターム物SOFRの使用が広く支持されていることを歓迎し、特にローン担保証券(CLO)については、この正式推奨によって移行に伴うオペレーション上の負担が「劇的に軽減される」とコメントしています。

SOFRファーストとデリバティブ取引

2021年7月26日、CFTCのMRACが推奨するインターディーラースワップ市場のクォートを米ドル LIBORからSOFRに切り替える目標日を迎えました。この週の終わりには、1,000件以上のSOFRスワップ契約が新たに締結され、同週の総想定元本は1,100億米ドル以上と過去最高を記録しました。しかし、以下のグラフが示すように、米ドルLIBORの取引は終了したわけではありません。2022年に向けて、さらに、SOFRのボラティリティー商品の開発が必要とされています。

米ドル スワップ取引 - 想定元本に対する割合(%)

SOFR ファーストは、火をつけたというよりは、火種になったと言えるかもしれませんが、一つだけはっきりしていることは、もう後戻りはできないということです。9月に予定されているクロス・カレンシー・スワップのRFRへの移行は、RFRの取引をさらに活性化させるものと期待されています。

主要なLIBOR通貨以外にも、9月の移行が他の通貨にも影響を与える可能性があると考えられます。この推奨は、スイスフラン、英ポンド、日本円、米ドルのLIBORを含む全てのクロス・カレンシー・スワップに適用され、他方の通貨レグが主要LIBOR通貨とは異なる金利に基づいているものも含まれます。流動性と有利なプライシングがどこにあるかによって、市場参加者は、2段階の修正を選択するのではなく、自発的に両通貨レグを別の金利指標に移行させるという選択が可能です。例えば、オーストラリアドルとカナダドルを含むクロス・カレンシー・スワップは、オーストラリア銀行間取引金利(BBSW:Bank Bill Swap Rate)とカナダ銀行間取引金利(CDOR:Canadian Dollar Offered Rate)から、それぞれ豪州翌日物インデックス平均(AONIA)とカナダ翌日物レポ平均金利(CORRA)にシフトすることが考えられます。

PwCの見解

ARRCが推奨するフォワードルッキングなターム物SOFRが利用可能になったことで、LIBOR移行における大きなマイルストーンが達成されました。ターム物SOFRは、運用のしやすさを重視する市場の一部から以前より望まれていました。ターム物SOFRは金利期間の開始時にレートを把握できることから、経済的には同一ではないにしても、LIBORと同じような感覚で使用することができるでしょう。最近、一部の市場参加者は、米ドルLIBORに代わる、フォワードルッキングな信用感応度の高い金利指標(CSR)を求めていますが、その理由の一つとして、日次の後決め金利を使用することの複雑さに対する懸念が挙げられます。一方、CSRの使用に警戒を促す規制当局の声が高まっていることから、規制当局による監視の可能性を懸念する金融機関は、ターム物SOFRに注目すると予想されます。

学生ローンや変動金利型住宅ローンなどの新規リテール商品の多くは、ターム物SOFRではなくSOFR平均値を採用すると考えられます。例えば、米ドル建ての変動金利型住宅ローンの新規発行は、SOFRへの移行が事実上完了しています。しかし、新規ビジネスローンでは、ARRCが推奨するターム物SOFRの使用範囲は、多くの人が予想していたよりも広いものとなっています。これまでローン商品へのSOFRの採用は非常に限定的でした。しかし、LIBOR移行において、ターム物SOFRがより大きな役割を果たすという考えは、LIBOR移行の進展の遅さを考慮してか、あるいはCSRの台頭を食い止めるためか、勢いを増しているように見受けられます。

ローン市場では、利息の計算や支払日の設定、その他のパラメータにさまざまなコンベンションを用いてRFRを採用することになります。ローン市場の一部はターム物SOFRに注目していますが、他の市場ではCSRのようなその他の代替金利指標を模索し続けています。このような異なるエクスポージャーのリスク管理には、これらのさまざまな金利指標やコンベンションにかかるデリバティブ市場の発展が必要となりますが、結果的に、見た目も機能も全く異なるローンやスワップの多様なポートフォリオが生まれる可能性があります。

市場の特定の一部が最終的にどのようなレートを採用するにせよ、複数金利環境が今後も続くことは明らかです。ターム物SOFRが利用可能になったとしても、そのような環境下においてはほぼ確実にSOFR平均値(前払いか後払いかを問わず)、シンプルSOFR、ターム物SOFR、さらにはCSRを参照する商品が含まれることになるでしょう。金融機関は、数多くの金利指標とコンベンションで取引する準備を進め、多様なポートフォリオに関連する潜在的に複雑なヘッジ関係を管理することが必要になります。

また、ターム物SOFRの正式な登場により、銀行は法人顧客への働きかけを加速させることが可能となりました。LIBORベースの契約を積極的に修正する上でのハードルの一つとしてよく挙げられていたのは、さまざまな代替オプションを取り巻く不確実性でした。しかし、現在では、全ての選択肢が出揃っていると考えられます。2023年まで米ドルLIBORの公表が継続されることを踏まえ、レガシー契約の米ドルLIBORエクスポージャーの修正が本格的に始まるのは、2022年初頭になるのではないかと長い間考えられていました。しかし、ターム物SOFRが利用可能になったことで、取り組みの加速を検討する市場参加者もいるでしょう。

2.EONIAの法定代替金利

欧州委員会(EC)は、ユーロ圏無担保翌日物平均金利(EONIA)の公表停止日である2022年1月3日にEUの契約においてEONIAの代替金利を法律で指定するための法案を起草する取り組みを開始しました。これは「キャッシュ商品およびデリバティブ商品に関する包括的なソリューションの一環として」このような立法的ソリューションを要請するユーロRFRに関するワーキンググループ議長の書簡を受けて開始されたものです。

この要請は、デリバティブ契約や担保契約(CSA)におけるEONIAのエクスポージャーの残高が相当量に達し、想定元本で約17兆ユーロと推定される中で行われたものです。ワーキンググループは、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行や英国のEU離脱、カウンターパーティの無反応などの外的要因により、これらのエクスポージャーの積極的な移行や修正の進捗が妨げられているとしています。EONIAの公表停止時点で移行が完了していない契約は、混乱や契約履行に対する不安へとつながり、人的負荷の高いアドホックなソリューションによる対応が必要となる可能性があります。

EONIAは、2019年10月以降、ユーロ短期金利(€STR)プラス8.5ベーシスポイント(bps)のスプレッドでクォートされています。同様に、EONIAを参照しているレガシー契約の代替金利指標、またはフォールバック金利として、€STRプラス8.5bpsが提案されています。

PwCの見解

EONIAに代わる€STRベースの金利指標の指定に向けた法案の採択には、迅速な対応が求められます。改正されたEUベンチマーク規制(BMR)の下、ECはその立法案を協議する必要があります。スイスフランLIBORの法定代替にかかる協議プロセスは、2021年3月21日に開始されましたが、いまだに委員会からの最終的な発表はありません。

まだ草案が発表されていないことや、協議プロセス(短縮される可能性が高い)が必要であること、ユーロ圏が夏季休暇シーズンであることを考慮すると、2021年第3四半期に関連法案を適用することは、明らかに野心的な目標であると思われます。

こうした法案が最終化した事例―(例えば、スイスフランLIBORの法定代替が確定するなど)がなければ、どのような特定のユースケースが法定代替の対象となるのかについても不確実性が残ります。デリバティブについては、以前ISDAが、担保契約のためのEONIAと€STRのプロトコルに取り組んでいることに言及していました。最近開催されたユーロRFRに関するワーキンググループの会合では、ISDAの代表者が、このようなプロトコルは「法定代替がない場合に、移行をさらに促進するための実用的なツールとして検討される」可能性があることを示唆しています。

代替金利指標への移行の中ではよくあることですが、多くの未解決の課題や「もし~した場合どうなるか(what-if)」という問題が残されています。企業は、CSAの積極的な修正のペースを加速するのに必要な追加リソースと、EONIA公表停止時点においてこれを参照している契約が及ぼす潜在的なリスクや複雑さとを比較検討する必要があります。

ISDA IBORフォールバック 条項のねばり:そして、誰もいなくなった

2021年7月19日現在、既存のG-SIB30行の全てがISDAのIBORフォールバックプロトコルに署名しています。

IBORフォールバック条項を批准している組織 (2021年7月31日時点)

※本コンテンツは、PwCが2021年7月に発刊した「LIBOR Transition Market update: July 16 -31 , 2021」の一部を抜粋し翻訳したものです。

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