Medical Affairs Survey 2022(日本版)調査結果

日本における製薬メディカルアフェアーズ組織の現状・課題と将来像

日本における製薬メディカルアフェアーズ組織の現状・課題と将来像

メディカルアフェアーズ(Medical Affairs、以下MA)は、製薬・ライフサイエンス企業において、外部の専門家や医師・医療提供者らとの医学的・科学的なコミュニケーションを主たる役割とする機能です。MAが行うコミュニケーションの内容は情報の発信と取得とに大別され、前者として代表的なものが学会発表や論文発表、後者はアドバイザリーボード会議やMSL*1による面談を通したKOL*2意見の理解であり、多くのMA組織が持つメディカルインフォメーション(MI)機能も、外部顧客とのコミュニケーションです。さらに、ここで得られるさまざまなインサイトから重要なUMN*3を特定し、その解決策を計画・実行するというサイクルを回し続けるのがMAであり、メディカル戦略の全体像です(図表1)。

図表1. UMNを起点としたメディカルアフェアーズの業務サイクル

ここでMAが解決の対象とするUMNは、各組織により特定の治療や疾患領域に限定され、その本質的な目的は自社製品の科学的価値の最大化にあります。科学的価値の最大化とは、例えばある薬剤が最も多くの適切な患者に、最も適切な方法で投与されることをサポートするデータやエビデンスが作られ、周知・活用されている状態です。したがって、MAの活動は、最終的に治療の発展と、疾患や患者の予後改善に繋がっていくことになります。

医薬や医科学が高度化するとともにEBM*5や個別化医療が重視され、また旧来の営業的手法による医療関係者へのアプローチが厳しく規制されるようになった現在、製薬においてMAの果たすべき役割はきわめて重要です。一方、その歴史が浅く、営業部門における売り上げや、R&D部門における薬剤開発のような定量的・明示的な達成目標にも乏しいMA部門への認知や理解は、残念ながら社内外いずれにおいても十分ではありません。

そこで今回私たちは国内MA組織を対象としたサーベイを実施し、MAの現状と課題、さらには各社MA部門のリーダーたちが考えるMAの将来像を明らかにすることを試みました。このサーベイでは、全ての回答者との直接の確認・議論の機会を持ちました。彼らMAリーダーたちが、MAの現状や課題、目指すべき将来像等について率直かつ独自の意見を私たちに共有してくれたことから、多くの発見が得られました。一例として、責任や業務の多様性・幅広さについてはMAの強みであると同時に分かりづらさ・無理解の一因にもなってきましたが、その範囲や業務内容、各業務への考えについては、各社共通のパターンがあることが見出されました(図表2)。例えば、「MAのコア業務」とした全社例外なく行われている業務群については、各組織が高い自負を持っており、現状についての自己評価も高く、今後とも注力し続けるとしています。一方、意向はあるものの実践が追いついていない「他部門関与」や、実施や責任自体に迷いや躊躇がある「新規拡大領域」といったテーマがあることも分かりました(同)。また、今回の総合的な調査の結果からは、国内MAのリーダーらが考えているMAのミッションと、その実現のために国内MA組織が備えるべきケイパビリティについても整理することができました(図表3)。

図表2. メディカルアフェアーズの業務範囲と業務内容
図表3. メディカルアフェアーズが達成すべき価値と、そのために必要となる要素や技能

 本稿では「Medical Affairs Survey 2022」の集計結果を、上記の内容や総評とともに示しています。

*1 Medical science liaison(メディカルサイエンス・リエゾン職者)

*2 Key opinion leader(キーオピニオンリーダー)

*3 Unmet medical needs(不足している医学情報や医療支援)

*4 Competitive intelligence(競合社の動向を中心とする医学情報収集)

*5 Evidence-based medicine(科学的根拠に基づく医療)

執筆者

船渡 甲太郎

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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小濱 奈美

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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鮭延 万里子

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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山田 治美

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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