AIエージェント利用者に求められるAIガバナンス ── 「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き」から読み解く法的リスク低減の視点

  • 2026-10-22

はじめに

近時、複雑な業務プロセスの自動化・効率化を目的として、AIエージェントなどの高度なAIシステムの活用が進みつつあります。AIエージェントは、総務省および経済産業省が公表する「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」※1(以下、「AI事業者ガイドライン」)本編11ページにて、「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定義されているとおり、人間による個別の入力や指示を前提とせず、環境を感知し、一定の範囲で自律的に処理を進める点に特徴があります。こうしたAIのうち、人がその判断に依拠しながら用いることが予定されているもの(依拠/代替型AI)については、人の判断や行動を前提としてきた従来の不法行為責任※2判断の枠組みでは捉えられないリスクをどのようにコントロールするかが重要な課題となります。

この課題に対する基礎的な考え方を提示するものとして、経済産業省は、2026年4月9日、「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き[第1.0版]」※3(以下、「本手引き」)を公表しました。本手引きは、AIを用いたサービスやシステムが事故に寄与した基本的な想定事例を題材に、主として不法行為法などの観点から、AI利活用の場面における解釈適用上の論点および考え方を整理し、現行法がどのように適用され得るかの方向性を示すものです。本手引きでは、AIエージェント利用者が、不法行為に基づく損害賠償責任リスクを低減するために講じるべき措置について一定の示唆が提示されており、AIエージェントの利活用を検討中の事業者であれば把握しておくべき資料と言えます。

本稿では、本手引きを踏まえ、依拠/代替型AIに該当するAIエージェントを利用する事業者の責任判断の枠組み、そして、不法行為責任リスクを低減するためのAIガバナンス構築のポイントを概説します。

なお、文中の意見は筆者らの私見であり、PwC弁護士法人およびPwCコンサルティング合同会社ならびに所属部門の正式見解ではないことをお断りします。

※1 総務省のウェブサイト「「AI事業者ガイドライン」掲載ページ」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ai_network/02ryutsu20_04000019.html)および経済産業省のウェブサイト「AI事業者ガイドライン」(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/20260331_report.html)参照。

※2 故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した場合、それによって生じた被害者の損害について、賠償する法的責任(不法行為に基づく損害賠償責任)が生じます(民法第709条)。

※3 経済産業省のウェブサイト「「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き」を公表しました」(https://www.meti.go.jp/press/2026/04/20260409001/20260409001.html)参照。

目次

  1. 依拠/代替型AIに該当するAIエージェント
  2. 依拠/代替型AIエージェントの利用者の責任判断構造とAIガバナンス
  3. おわりに

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執筆者

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