ブロックチェーンの登場以降、暗号資産やNFT(非代替性トークン)の社会実装が進んでいます。さらに、決済、証券化、ID管理、サプライチェーン、トレーサビリティなど、幅広い領域へ活用範囲を広げています。また、生成AIをはじめとするAI技術の進展により、ブロックチェーン上の取引データ(オンチェーンデータ)やオフチェーンデータを、業務判断、リスク管理、顧客対応、内部統制に活用する動きも現実味を帯びてきました。
その一方で、ブロックチェーンが持つ改ざん耐性や追跡可能性は、ビジネス全体の信頼性を自動的に保証するものではありません。記録されたデータが改ざんされにくいとしても、入力されたデータが正確であるか、適切な同意や利用条件に基づいているか、法令・規約に沿ってAIに利用できるかは、別途検証する必要があります。誤ったデータが記録された場合は、その誤りが改ざん困難な形で残り続けるというリスクもあります。
AI・ブロックチェーン時代に問われるのは、技術を導入しているという事実そのものではなく、金銭・商品・権利・同意・利用条件といったデータの流れを、事業者がどのように管理し、どのような証跡に基づいて外部に説明できるかです。本稿では、このような信頼性に関わる概念を「データトラスト」と捉え、暗号資産関連ビジネスにおけるAIガバナンスのあり方を、データガバナンス、統制の自動化、説明責任の観点から整理します。
なお、本稿では、ブロックチェーン固有のセキュリティ、ウォレット・鍵管理、外部委託先管理、内部統制に関する論点を、データトラストを支える実務上の要素として扱います。個別の技術対策を網羅するのではなく、市場・利用者・規制当局から信頼を獲得するための経営基盤としてデータトラストをどのように実装するかに焦点を当てます。
なお、文中の意見は筆者の私見であり、PwCJapan有限責任監査法人および所属部門の正式見解ではないことをお断りしておきます。
PwC Japan有限責任監査法人
リスク・アシュアランス部
パートナー 須田 真由
PwC Japan有限責任監査法人
リスク・アシュアランス部
マネージャー 望月 夕衣
PwCネットワークの監査手法と最新技術により世界水準の高品質な監査業務を推進するとともに、内部統制、ガバナンス、サイバーセキュリティ、規制対応、デジタル化対応、株式公開など幅広い分野に関するブローダー・アシュアランス・サービス(BAS)を提供します。
PwCはITリスクの専門家として、暗号資産および分散台帳技術の重要性に早くから着目し、当該技術に特有のリスクを管理・低減するためのアドバイザリー業務や、各種関連法規制の要求事項を遵守するための当局対応支援に多数の実績を有しています。 また、金融サービス事業者に対する豊富なサービス提供経験や、PwCのグローバルネットワ...
企業がブロックチェーンを活用する業務に関して、情報セキュリティやリスク管理態勢、関連する内部統制などのガバナンス体制構築を支援します。また、独立した第三者として、企業が当該ガバナンス体制について発行するSOCレポートの保証業務を展開します。
ブロックチェーンは、多くの業界を破壊(ディスラプション)にも改善にも導きうる、革新的な最新テクノロジーです。期待される効果として、コスト削減、二重取引の防止、取引速度の向上、レジリエンス(耐障害性)の強化などが挙げられ、経営戦略とテクノロジー戦略の両面でブロックチェーンにアプローチすべきです。
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