AI・ブロックチェーン時代のデータトラスト ── 暗号資産関連ビジネスに求められるガバナンスと説明責任

  • 2026-10-22

はじめに

ブロックチェーンの登場以降、暗号資産やNFT(非代替性トークン)の社会実装が進んでいます。さらに、決済、証券化、ID管理、サプライチェーン、トレーサビリティなど、幅広い領域へ活用範囲を広げています。また、生成AIをはじめとするAI技術の進展により、ブロックチェーン上の取引データ(オンチェーンデータ)やオフチェーンデータを、業務判断、リスク管理、顧客対応、内部統制に活用する動きも現実味を帯びてきました。

その一方で、ブロックチェーンが持つ改ざん耐性や追跡可能性は、ビジネス全体の信頼性を自動的に保証するものではありません。記録されたデータが改ざんされにくいとしても、入力されたデータが正確であるか、適切な同意や利用条件に基づいているか、法令・規約に沿ってAIに利用できるかは、別途検証する必要があります。誤ったデータが記録された場合は、その誤りが改ざん困難な形で残り続けるというリスクもあります。

AI・ブロックチェーン時代に問われるのは、技術を導入しているという事実そのものではなく、金銭・商品・権利・同意・利用条件といったデータの流れを、事業者がどのように管理し、どのような証跡に基づいて外部に説明できるかです。本稿では、このような信頼性に関わる概念を「データトラスト」と捉え、暗号資産関連ビジネスにおけるAIガバナンスのあり方を、データガバナンス、統制の自動化、説明責任の観点から整理します。

なお、本稿では、ブロックチェーン固有のセキュリティ、ウォレット・鍵管理、外部委託先管理、内部統制に関する論点を、データトラストを支える実務上の要素として扱います。個別の技術対策を網羅するのではなく、市場・利用者・規制当局から信頼を獲得するための経営基盤としてデータトラストをどのように実装するかに焦点を当てます。

なお、文中の意見は筆者の私見であり、PwCJapan有限責任監査法人および所属部門の正式見解ではないことをお断りしておきます。

目次

  1. データトラストが重要となる背景
  2. データトラストを支えるデータガバナンス
  3. ブロックチェーンの価値を活かすための統制設計
  4. データトラストの実践に向けたアプローチ
  5. AI活用を見据えた適切なデータ利用の説明力
  6. おわりに

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執筆者

PwC Japan有限責任監査法人
リスク・アシュアランス部
パートナー 須田 真由

PwC Japan有限責任監査法人
リスク・アシュアランス部
マネージャー 望月 夕衣