オーストラリアの気候変動対策と気候関連開示

  • 2025-12-04

はじめに

オーストラリア(豪州)は、開放性・強靭性・多様性に富む市場経済であり、2025年時点の名目GDPは世界14位、一人当たり名目GDPは約6万4,500米ドルと高い水準にあります。加えて、豊富な資源、先進的なサービス産業、高学歴の労働力に支えられた安定成長の歴史を持つ一方で、気候変動による重大かつ多面的なリスクに直面しており、インフラ、農業、水産業などの主要セクターを横断して脅威が生じています。

2025年9月に公表された同国初の包括的な気候リスク評価結果は、実効性のある対策が講じられない場合、海面上昇だけでも2050年までに約150万人が危険にさらされるおそれがあると警鐘を鳴らしています。こうした課題を受け、豪州政府は経済・環境・財務の観点からリスク分析を強化していますが、気候変動の影響の規模や長期的な意味合いについては依然として不確実性が残ります。そのため、サステナビリティ関連投資の加速、技術導入の前進、そして気候関連開示の拡充・義務化の推進が喫緊の課題となっています。

本稿では、このような状況を踏まえ、豪州の「ネットゼロ2050計画」および「国家気候レジリエンスと適応戦略2021-2025」を概説するとともに、より持続可能でレジリエントな未来の実現を後押しするために2025年に導入された気候関連開示の概要を解説します。

なお、文中の意見に係る記載は筆者の私見であり、PwCオーストラリアおよび所属部門の正式見解ではないことをあらかじめ申し添えます。

目次

  1. 豪州の気候変動戦略
  2. 豪州サステナビリティ報告制度
  3. おわりに

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執筆者

PwCオーストラリア
シニアアソシエイト 岡村 美慧

PwCオーストラリア
ディレクター 江川 竜平