【第7次エネルギー基本計画を踏まえた各分野の事業トレンドと論点】―DX/GXトレンドを踏まえた再エネ/火力/分散型電源の将来展望―

2025-04-30

※2025年3月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーションニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。

2025年2月、第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました。2040年までのエネルギー分野の事業トレンドを把握する上では、この改定のポイントを的確に理解することが重要となります。

本稿では、第7次エネルギー基本計画について、改定の特徴と事業上の論点について解説したいと思います。

1. 改定の特徴:3つの考え方と2つの方向性

今回のエネルギー基本計画の改定では、近年の状況変化を踏まえた以下の3つの新たな考え方が示されています。

①エネルギー政策と産業政策の一体的展開

エネルギー政策と産業政策について、両者を一体的に政策展開する旨が強調されています。
具体的には、本計画と同時に閣議決定がなされた「GXビジョン2040」とともに、「脱炭素電源」の活用やGX関連産業の育成支援などが掲げられています。
※「脱炭素電源」として位置づけられ、大きな政策転換となった原子力に関しては、本稿とは別に取り扱います。

②電力需要の増加への対応

DXの進展などにより、これまでの減少トレンドを転換し、将来的な電力需要増を見込んでいます。

③将来像の不確実性

本改定やエネルギーミックスの検討において、「不確実性」を前提とした将来像が示されています。
2040年時点におけるエネルギー関連技術のイノベーションの状況や各国の政策動向、DX/GXの進展状況などについて不確実性を踏まえた上で、複数シナリオを併記し、既存技術も含めた利用可能な方策を幅広く活用することとしています。

こうした3つの考え方を踏まえて示された政策の方向性は、大きく2つに整理することができます。

A)脱炭素電源の最大活用

産業政策上、脱炭素電源が求められることから、これに対応するため、再生可能エネルギー・原子力の二項対立を脱却する形で、両者を包含する「脱炭素電源」を最大限導入する必要性が強調されています。

B)利用可能な技術の幅広い活用

技術進展などに不確実性があることや、需要増に対する供給力確保が必要であることから、利用可能な技術(LNG火力など)の幅広い活用が想定されています。

(出典)第7次エネルギー基本計画を基にPwC作成

2. エネルギービジネスへの影響

こうした傾向を踏まえた、各エネルギー分野における事業トレンドと論点例については、以下のようなものがあります。

①再生可能エネルギー

トレンド:

  • 電源構成上、2040年断面で40-50%程度と示されており、需要増に対応する脱炭素電源として、導入拡大の傾向は継続。

論点例:

  • 太陽光:立地制約や政策支援水準の低下、出力制御の増加といった環境下において、どのように収益性を確保するべきか。また、政策的に推進されているが、耐久性などに課題を残すペロブスカイト太陽電池にどう向き合うか。
  • 洋上風力:入札フェーズから実案件形成フェーズに入っているが、コスト増によって欧州でプロジェクトが危機に瀕している中、どのように収益性を確保するか。その際、どのような追加的な制度措置が必要か。

②火力

トレンド:

  • 電源構成上、2040年断面で火力全体(石炭/LNG/石油の内訳を示さない形)として30-40%程度を維持。再生可能エネルギー導入に伴う供給力、調整力、慣性力・同期化力などトランジション電源として提供価値が変化。

論点例:

  • LNG火力は、NDC実現困難な場合における、上流(権益確保)から下流(発電所の新設・リプレース推進)まで政策支援が想定される中、どのように活用(マネタイズ)すべきか。
  • 水素・アンモニアの混焼/専焼やCCSといった火力の脱炭素化の取り組みを、政策支援も活用しながら加速させられるか。
  • 事業機会が拡大する水素・アンモニアやCCS領域を事業ポートフォリオ上どう位置付けるか。

③分散型電源(蓄電池/DRなど)

トレンド:

  • 脱炭素電源や火力に比して扱いは小さいが、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う調整力・柔軟性の供出主体として言及。

論点例:

  • 蓄電池について、揚水や火力と競合しながら、どのような事業戦略を立てるべきか。また、事業戦略上、必要な制度設計はなにか。
  • DRready機器やスマートメーターのIoTルートなどを活用したアグリゲーションビジネスの展開に必要な技術実証・制度設計はなにか。

3. PwCの提供できる価値

今般の改定内容を分析することにより、エネルギーの各領域における大きな市場トレンドを把握することが可能です。他方、個々のビジネス展開においては、こうした大きなトレンドの把握に加えて、不確実性に関する定量的なシナリオ分析、エネルギー政策・技術を踏まえた事業戦略立案が欠かせません。

PwCコンサルティングでは、GX・エネルギー関連の市場環境・制度・技術動向について知見を持つ専門家が在籍しており、短期から中長期も含めた事業戦略立案支援まで、幅広くご支援します。

執筆者

郷原 遼

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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