トランプ政権税制改革の行方 全10回連載

2017年3月24日、共和党は下院通過を目指していた健康保険制度(Affordable Care Act、いわゆるオバマケア)の改廃(Repeal and Replace)案を撤回しました。 オバマケア改革が一旦止まったことで、議会における税制改革論議が再び注目を集めています。

本連載は、実現すれば30余年ぶりとなる米国の抜本的税制改革の可能性について、その背景、現段階で想定される内容および日系企業へのインパクトについてお伝えします。

第4回 現在議論されている米国税制改革案の概要(2)
 

2014年の下院歳入委員会議長であるデイブ・キャンプ氏(共和党)が中心となった提案(「キャンプ案」)、 トランプ氏が大統領選挙時に提唱していた税制改革案(「トランプ氏選挙時案」)、共和党が2016年6月にブループリントと称して発表した素案(「共和党BP」)の3案を比較すると、いくつかの傾向を見ることができます。

  1. 税率引下げについては、25~15%の範囲で提案されており、パススルー事業体についても構成員個人段階での税率引下げの可能性があること。
  2. 国際課税については、3案ともにテリトリアル課税の導入が含まれている。すなわち、外国子会社配当については100%または95%での益金不算入とし、他方、既存の累積海外留保利益に対しては強制みなし配当課税(トールチャージ)を導入することが提案されている。
  3. 国境調整については、共和党BPのみが提唱している。他方、キャッシュフロー課税は、共和党BPだけでなくトランプ氏選挙時案にも一定程度反映されている。
  4. 国内製造活動の特別控除およびAMTの廃止については3案で一致している。


複数のシナリオ・プランニングの必要性

共和党BPとトランプ氏選挙時案との間にも一定の相違があり、また、具体的な税制改正案が発表されていないため、現段階で税制改革の想定インパクトを測定する場合には、 複数のシナリオを考える必要があります。

一例としては、下記整理の仕方が考えられます。

  1. 税率引下げのみ導入
  2. 上記1.に加えて、テリトリアル税制の導入
  3. 上記2.に加えて、キャッシュフロー課税・国境調整の導入

次回からは6回にわたり、本稿で俯瞰した重要の個別項目につき、その詳細と日系企業にとっての潜在的な影響について解説いたします。


2017年4月6日更新
本連載における税制改革議論の進捗については、更新日現在の情報を基に記載しています。