ESG/サステナビリティ関連法務ニュースレター(2026年1月)

サステナビリティ情報等に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の概要

  • 2026-01-28

金融庁は、2025年11月26日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)(以下「改正案」といいます。)を1公表しました。2025年12月26日までパブリックコメントにかけられており、今後、パブリックコメント回答も公表される予定です。

改正案は、サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備、人的資本開示に関する制度見直し及びその他の改正を扱っており、企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」といいます。)及び企業内容等の開示に関する留意事項(以下「企業内容等開示ガイドライン」といいます。)を改正するものです。改正後の規定は公布の日から施行する予定ですが、一部の規定は2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等への適用が想定されており、近日中に公布される見込みです2。本ニュースレターでは、改正案の概要をご紹介します。

1. サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備

2025年7月に公表された「金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 中間論点整理」3において、2027年3月期から、時価総額が一定規模以上の東京証券取引所プライム市場上場会社に対し、段階的にサステナビリティ開示基準の適用を義務付ける方針が示されたことを受け、必要な制度整備を行うため、開示府令及び企業内容等開示ガイドラインの改正が行われます。

(1)サステナビリティ開示基準の適用

東京証券取引所プライム市場4に上場する会社のうち、「平均時価総額」が1兆円以上の会社に対し、サステナビリティ基準委員会が2025年10月31日までに公表したサステナビリティ開示基準5(以下「SSBJ基準」といいます。)6に従って、有価証券報告書等の記載事項のうちサステナビリティ関連記載事項を記載することが義務づけられることになります7。「平均時価総額」は、有価証券報告書の対象事業年度の前事業年度の末日及びその前4事業年度の末日における時価総額の平均値により判定するものとされており、具体的には下記のとおりです。

「平均時価総額」

原則

有価証券報告書の対象事業年度の前事業年度の末日及びその前4事業年度の末日における時価総額の平均値により判定。

例1:2027年3月期の適用の有無の判断に用いる平均時価総額

2022年3月期~2026年3月期の各末日の時価総額の平均値

例外

前事業年度の末日までに上場後5事業年度が経過していない場合には、経過した事業年度の各末日における時価総額の平均値により判定。

例2:2023年5月に上場した会社における2027年3月期の適用有無の判断に用いる平均時価総額

2024年3月期~2026年3月期の各末日の時価総額の平均値

なお、SSBJ基準の適用開始年度及びその翌年度については、SSBJ基準に従ってサステナビリティ関連記載事項を記載しないことができ、その場合には、それぞれの翌期の半期報告書の提出期限までに、当該事項を記載した訂正報告書を提出すること(二段階開示)が可能とされる予定です8

(2)SSBJ基準の適用に伴う開示項目の追加

改正後開示府令の記載上の注意において、SSBJ基準上開示が求められる事項の記載のほか、SSBJ基準に準拠している旨、二段階開示やSSBJ基準上の経過措置の適用状況について記載が求められることとされており、将来情報やScope3温室効果ガス排出量に関する定量情報9について、推論過程等に関する記載及びこれらの情報に係る社内の開示手続の記載が求められることとなります10

また、前事業年度に係る有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」その他の項目において記載した見積りの方法により算定した数値について、確定値が判明し、見積りによる数値と確定値との間に差異がある場合には、半期報告書において記載することができることとなります11

(3)Scope3温室効果ガス排出量の虚偽記載等に係るセーフハーバー・ルールの整備

Scope3温室効果ガス排出量に関する定量情報について、一般に合理的と考えられる範囲で差異が生じる要因や推論過程等、社内の開示手続等に関する記載がされている場合には、虚偽記載等の責任を負うものではないとする考え方が明示されています12

(4)適用日

サステナビリティ開示基準の適用に向けた環境整備に係る改正の適用は、平均時価総額に応じて次のように予定されています13

2026年3月31日を基準として算定した5事業年度末の平均時価総額

適用開始時期

3兆円以上である会社

2027年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用

3兆円未満1兆円以上である会社

2028年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用

2. 人的資本開示に関する制度見直し

2025年6月に公表された「経済財政運営と改革の基本方針2025」14、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025改訂版」15、「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクションプログラム2025」16において提言されている人的資本に関する開示の拡充のため、次の改正が行われることとなりました。

(1)人材戦略に関する基本方針等の開示

有価証券報告書において、企業戦略と関連付けた人材戦略及びそれを踏まえた従業員給与等の決定方針の開示が求められることになります17。

(2)従業員の状況の記載の変更

「従業員の状況」の記載が「第1【企業の概況】」から「第4【提出会社の状況】」に移動します。その上で、次の事項の開示が求められます18

(ア)従業員の平均給与の対前年比増減率

(イ)(提出会社が主として子会社の経営管理を行う会社(持株会社)である場合)「最大人員会社」19の従業員給与の平均額、その前年比増減率等

また、使用人その他の従業員のみを対象としたストックオプション制度や役員・従業員株式所有制度を導入している場合には、「従業員の状況」に記載することもできることとされました。

(3)適用日

人的資本開示に関する開示の見直しに係る改正については、2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用される予定とされています。

3. その他の改正事項

総会前開示に関して、会社の開示負担を軽減し、株主総会前の有価証券報告書の開示を促進する観点から、開示府令について次の改正が行われることとなりました。

(ア)有価証券報告書において、総会前開示を行う場合であって、有価証券報告書の記載事項等が定時株主総会又はその直後に開催される取締役会の決議事項となっているときにおける当該決議事項等の概要(剰余金の配当に関するものを除く。)の記載を原則不要とする20

(イ)半期報告書において、中間配当基準日現在における「大株主の状況」及び「議決権の状況」を記載することが可能性とされる21

その他、特定有価証券に係る半期報告書の提出期限延長申請に係る手続規定の整備、株式転換条項の付された社債券について、あらかじめ定められた条件に基づき株式を発行する場合には「有価証券の募集」に該当しない旨の明確化及びその他所要の改正が行われます。これらの改正についても、2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用される予定とされています。

The takeaway

改正案は、サステナビリティ開示基準の適用開始に向けた環境整備、人的資本開示に関する制度見直し等を扱うものですが、人的資本開示に関する制度見直しに関しては2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用される想定であり、早急に対応する必要があります。また、サステナビリティ開示基準についてSSBJ基準の適用は段階的に行われることとされていますが、今回の改正では適用されない時価総額5000億円超1兆円未満の会社も含め、自社に適用される見込みの時期を確認し、準備を進めていくことが必要となります。CSRD等に基づく海外での連結ベースでの開示を行った場合の臨時報告書による開示等についても別途の改正が検討されており、今後の金融審議会における議論の動向についても引き続き注視することが必要です。

1 https://www.fsa.go.jp/news/r7/shouken/20251126/20251126.html

2 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」第9回事務局説明資料(以下「WG事務局説明資料」といいます。)(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/shiryou/20251030/01.pdf)において、2026年1月中の公布・施行を目指すものとされています。

3 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20250717/01.pdf

4 改正案では、「金融庁長官が指定する取引所金融商品市場」とされていますが、株式会社東京証券取引所プライム市場が告示指定されるものとされています。

5 https://www.ssb-j.jp/jp/ssbj_standards.html

6 改正案では「一般に公正妥当と認められるサステナビリティ情報の作成及び開示の基準」とされていますが、SSBJ基準が告示指定されるものとされています。

7 改正後の開示府令第19条の9

8 開示府令改正附則で定められる予定です。

9 提出会社のバリュー・チェーンで発生する間接的な温室効果ガス排出量(提出会社が第三者から購入または取得したうえで消費した電気、蒸気、温熱または冷熱の生成から発生する間接的な温室効果ガス排出を除く)

10 開示府令第二号様式記載上の注意「(30)サステナビリティに関する考え方及び取組」等

11 開示府令第四号の三様式「第一部 第2【事業の状況】」及び同様式記載上の注意「(9-2)サステナビリティに関する考え方及び取組等に関する特記事項」等

12 企業内容等の開示に関する留意事項について「B基本ガイドライン5-16―2」

13 なお、平均時価総額5000億円以上1兆円未満である会社については、2029年3月31日以後に終了する事業年度からの適用が検討されています(WG事務局説明資料参照)。

14 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/2025_basicpolicies_ja.pdf

15 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/ap2025.pdf

16 https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/statements_8.pdf

17 開示府令第二号様式「第二部 第4【提出会社の状況】」及び同様式記載上の注意「(58-2)人材戦略に関する基本方針等」等

18 開示府令第二号様式「第二部 第4【提出会社の状況】」及び同様式記載上の注意「(58-3)従業員の状況」等

19 外国会社を除く連結会社のうち、従業員数が最も多い会社を指します。なお、最大人員会社の従業員数が、外国会社を除く連結会社の従業員の過半数を超えない場合には、次に従業員数の多い会社も含まれます。

20 開示府令第三号様式「記載上の注意(1)一般的事項」等

21 開示府令第四号の三様式記載上の注意「(15)大株主の状況」及び同様式記載上の注意「(16)議決権の状況」

サステナビリティ情報等に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の概要

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執筆者

北村 導人

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山田 裕貴

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