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PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問
岡田 至康 監修
デジタル経済への課税に対する多国間で合意されたアプローチがないことから、多くの国は税収の不足に対処するために、デジタルサービス税(DST)を含む一方的な税制措置を採用している。これは、特に米国からの国際的な緊張をもたらし、各国に政策対応を促している。デジタル経済への課税は、グローバルの政策立案者にとって依然として中心的でありながら未解決の課題となっている。OECDの2本の柱による税制改革のうち、第1の柱(利益A)では、これらの課題に対処し、DSTなどの一方的な措置の拡散を抑制しようと試みているが、当面実施される可能性は低いとみられる。しかしながら、利益Aの背後にある考え方(例えば、物理的プレゼンス(physical presence)に関係ない、市場国・地域への課税権の拡大)は引き続き存在する。
DSTsは、法人所得税、売上税、または付加価値税(VAT)ではない。通常、利益ベースではなく、特定のデジタル活動に係る多国籍企業の総収入に基づいて課税される。これらの活動には、多くの場合、オンライン広告、デジタルマーケットプレイス、検索エンジン、ソーシャルメディア、ユーザーデータ送信が含まれる。DSTsは、企業の物理的プレゼンスがなくても、実質的な経済活動を行っている国で課税することを目的としている。DSTsは一方的に実施されるため、適用範囲、税率、申告期限などのルールは国によって異なる。対象活動に対する税率は通常2%から5%程度となっている(トルコは 7.5%)。一部の国では、DSTの代わりに、重要な経済的プレゼンス(SEP)規定を採用しており、従来の物理的プレゼンス基準ではなく、持続的なデジタルエンゲージメントやユーザー参加を含めるよう、課税対象のネクサスの定義を拡大している。DSTs、SEPルール、および同様の措置は、利益を特定の場所に結び付け、ユーザー価値が生み出される場所で課税する。これにより、課税権が支払い場所や物理的資産から、ユーザーが価値を創造するとみなされる場所に移行する。ほとんどの国では、DSTsは特定のグローバルおよび国内の閾値を満たす場合にのみ適用される。一般に、DSTsは、グローバル収益が7億5,000万ユーロ(8億7,500万米ドル)以上の多国籍企業に適用される(国内の閾値は、0ユーロから約2,500万ユーロ)。通常、免除には、物品販売、規制金融サービス、および一部の企業間取引が含まれる。
フランスは、2019年に3%のDSTを導入した最初の国である(最終的に加盟国間で合意を得ることができなかったEU指令案をベースにしている)。フランスのDSTは他国の先例となったが、これは第1の柱が導入されるまでの一時的な措置として意図されていた。DSTsを採用しているEU域内の他の国として、オーストリア、イタリア、スペインなどがある。なお、2024年12月、イタリアは3%のDSTを改正し、2つの閾値のうちの1つである550万ユーロのデジタルサービス収益(国内)閾値を撤廃している(本誌2024年12月号および2025年3月号参照)。2025年6月17日、フランス行政最高裁判所(Conseil d'État)は、フランスDSTの合憲性に関する論点(preliminary question)について、フランス憲法裁判所(Conseil constitutionnel)に付託した(なお、原告は、フランス企業)(注1)。EU以外にも、トルコ、ケニア、ネパール、英国などが、独自のDSTsを採用している。これにより、グローバルでデジタル税制がパッチワークで形成されている。DSTは国際貿易政策と深く関連している。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のような自由貿易協定には、DST関連の紛争で援用されている無差別(non-discrimination)とデジタル貿易に関する規定が含まれている(注2)。カナダ政府は2025年6月、2022年以降に得た収入に遡及的に適用される2024年施行のDSTを撤回し、米国との貿易交渉を再開する旨を公表した。2025年には、ニュージーランド、パキスタン、ブラジルなどが、政治的状況を踏まえて、DST計画を再考または撤回している。同様に、2025年5月に公表された米英貿易枠組み協定に先立ち、英国は貿易摩擦を緩和するためにDSTを再検討する可能性を示唆している。貿易摩擦により一部の国がDSTを撤回しているにもかかわらず、DSTなどのデジタル税制措置を制定し、提案している国もある。2025年、ベルギーの新政府は連立合意の一環として2027年までにDSTを実施することを確約している。オーストラリアは独自の3%の「Big Tech Tax」を公表した。ポーランドとスロバキアは最近、新しいDSTsを採用する意向を公表した。アフリカ税務行政フォーラム(ATAF)もまた、グローバルな解決策が整うまで暫定的なデジタル課税措置を検討するようメンバーに促している。ケニアは2024年12月にSEP税を採用している(1.5%のDSTから切替え)。非居住者企業が提供するデジタルサービスに課税する他のアフリカ諸国には、タンザニア(2%)、ナイジェリア(法人税率で利得課税)、ジンバブエ(5%)、チュニジア(3%)、シエラレオネ(1.5%)、そして最近ではルワンダ(1.5%)が含まれる。ウガンダは2025年に5%のDSTを改正し、ウガンダで関連当事者にデジタルサービスを提供する非居住者に対して15%の源泉税を課すこととした(他の取引に対するDSTは廃止されない)。ラテンアメリカでは、課税権の再配分について地域的コンセンサスを形成しようとする取組みが行われており、さまざまな多国間または一方的な措置の出現につながる可能性がある。ブラジルは最近、主要なデジタルプラットフォームの総収益に7%を課すDST(Digital Social Tax)を提案している。また、コロンビアでは、非居住者のデジタルサービス所得に対してSEP(10%源泉税または3%の(総収入)課税)を課している(本誌2023年3月号参照)(米国など、コロンビアと租税条約のない国が対象)。
(注1)2025年9月12日、フランス憲法裁判所は、同国のDSTが憲法に準拠している旨の判決を下した。米国では、2025年8月15日、米国第4巡回区控訴裁判所が、米国地方裁判所の判決を覆し、メリーランド州のデジタル広告税(DAT)法における「パススルー」条項は、「別途の手数料、追加料金、または明細項目」によって顧客に直接税金を転嫁することを禁止しており、米国憲法修正第1条に違反していると判示した。同裁判所は、この法令は言論を規制しているなどとして、適切な救済策を求めて決定を地方裁判所に差し戻している。
(注2)日本の場合、「日米デジタル貿易協定」第8条で、「デジタル・プロダクトの無差別待遇」が規定されている。
米国はDSTに反対し、DSTは米国のテクノロジー企業を不当に標的にし、総収入に課税することで国際税制に違反していると主張している。トランプ大統領の1期目、政権は9カ国のDST政策に対する301条の調査を開始し、関税の可能性を示唆した。これらの行動は、第1の柱に関する進行中のOECDの議論を考慮して一時停止された。トランプ大統領の2期目において、DSTに関連する論点は継続している。米国議会は税制法案にSection 899(案)を盛り込んだが、この条項は法律の最終可決前に削除された。当初提案されたSection 899(案)では、DSTを含む域外適用的または差別的な税を採用した国に対して報復税を課すことになっていた(本誌2025年7月号および8月号参照)。直近では、2025年8月25日、トランプ大統領は、米国のハイテク企業を差別するDSTやその他のデジタル措置をとっている国に追加関税と特定の輸出制限を課すことを示唆した。Section 899(案)は、G7諸国との外交協定(OECDの第2の柱関連)を受けて2025年6月に撤回されたが、DSTやその他の同様の措置が引き続き数多く採用される場合(G7の目標に向けて十分に迅速な進展がない場合も同様)、いくつかの修正を加えて再提案される可能性がある。
国連は、2025年2月に国際租税協力に関する国連枠組条約の交渉を開始し、デジタル経済の課税における役割を主張している。条約の議定書の1つは、「デジタル化とグローバル化が進む経済におけるクロスボーダーサービスの提供から得られる所得への課税」に焦点を当てている。2025年3月に国際租税協力専門家委員会で採択された国連モデル租税条約新Article 12AAは、これらの交渉の基礎となる可能性がある。DSTと同様に、新Article 12AAでは、締約国が、他方の締約国の居住者に支払われるサービスフィーに対して総額ベースで課税することを認めている。国連での議論が展開される中、加盟国はさまざまなアプローチの有効性と公平性について、さまざまな意見を表明している。(本誌2024年8月号、2025年3月号および5月号参照)。
現在のデジタル課税の状況下では、DSTsに代わる一般的な代替手段は、デジタルサービスに対する付加価値税(VAT)である。デジタルサービスに対するVATは、デジタルサービスを一般消費税の一部として組み込むために課税ベースが効果的に拡大する。これは、DSTとVATの主な違いでもある。DSTsはデジタル企業によって生み出される収益源を直接課税対象とするのに対し、VATは消費に課されるさまざまな段階で物品やサービスに課税する。アフリカのいくつかの国では、同じ取引に対してVATとDSTsの両方を課している。
Source:PwC, Global Tax Policy Bulletin
第2の柱の一部を構成するグローバルミニマム税(GMT)ルールは、2021/2022年にOECD包摂的枠組み(IF)によって140超の国・地域が政治的に合意した一連のルールで構成されている。このルールでは、BEPSの残りの課題を解決し、租税競争に係る下限を国・地域別に最低実効税率(ETR)15%に設定することを目的としている。2025年半ば(8月21日)の時点で、56の国・地域がGMTの全部または一部を実施している。これらの国・地域におけるGMTルールだけでも、大規模な多国籍グループのグローバル事業体のほとんどが対象となる。多くの場合、GMTは、企業の投資収益率(ROI)に影響を与える可能性があり、大多数の国・地域が批准した国際投資協定(IIA)に基づく国・地域の義務に違反するリスクがある(注)。特に、GMTは投資保護基準(公正衡平待遇(法的枠組みの安定性・予測可能性・一貫性の要件、および投資家の信頼または正当な期待の保護)、義務遵守条項(アンブレラ条項)、(税による間接的な)収用の禁止と迅速・十分・効果的な補償(特に、軽課税所得ルール(Undertaxed Profits Rule:UTPR)に関係)、内国民待遇(判例法では、立法意図にかかわらず結果を考慮)など)と抵触する可能性があり、多国籍グループは、IIAに基づいて国・地域を相手に仲裁手続きを開始するか、少なくとも代替解決策を見つけるために国・地域と交渉する可能性がある。本件は、特にGMTと米国税制の間で「共存」アプローチを追求するという米国とG7の合意(本誌2025年8月号参照)と、UTPRの有効性に係るベルギー憲法裁判所の決定(欧州連合司法裁判所への付託、本誌2025年9月号参照)を受け、現在非常に重要となっている。これらの動きはいずれも、GMTが(特に米国の)多国籍企業のROIにどの程度影響するか、ひいては関連するIIAに基づく納税者の正当な期待に影響する可能性がある(間接的な収用や内国民待遇の問題もある)。GMTとIIAの相互作用は、(i)法的(安定性と保護)および(ii)金銭的な理由から、多国籍グループや国・地域にとって非常に重要である。
(i)IIA(国際法)は、ほとんどの国・地域でGMT(国内法)よりも優先される。憲法が条約オーバーライドを認めていたとしても、慣習国際法(CIL)は一般に、国内法はこれらの国際的義務を尊重すべきであると規定している。GMTとIIAとの間の抵触は、クロスボーダー訴訟または仲裁の対象となる。
(ii)GMTとIIAの間の緊張は、国・地域の投資環境に影響を与え、投資家の意欲を削ぎ、計画されているプロジェクトの価格を上昇させる可能性がある。最も脆弱なのは、GMTの直接的な影響を受ける低所得発展途上国(外国投資家にタックスホリデーの税恩典(実効税率0%)を付与する経済特区が多い)である。
多国籍グループや国・地域は、次の予防措置を検討することが考えられる。
(注)OECDは、2022年の時点で、GMTとIIAの間に潜在的な抵触があることを認識している。2023年、OECDは各国・地域に対し、GMTを実施する国内法にルールを追加するよう勧告し、IIAなどのGMTルールよりも優位な法に基づいて、多国籍グループがQDMTTに対して法的異議を申し立てた場合、納税者がIIAを適用して節税することを防止するために、別の国・地域がIIRまたはUTPRに基づいて追加の税を徴収することを認めるとしている(ただ、QDMTTによる間接的収用の場合において、QDMTTの減額以外による補償が行われる場合、このような結果にはならない可能性がある)。一方、国連は、GMTとIIAの関係を明確にし、IIAが前者の実施を妨げないようにする多国間措置を制定するために、国際面での税制と投資の政策決定に関して協調的な行動をとるよう各国に勧告している。国連はまた、各国が、さまざまな政府の利害関係者が経験を交換し、投資に対する税制上のインセンティブに対する一貫したアプローチを確保するのに役立つ統合的な方法で作業できるようにする省庁間タスクフォースを組織することを提案している。また、国連は、投資家が、IIAに依拠して、関税の引下げや生産分配協定の再交渉など、法人税優遇措置に対して経済的に同等の利益をもたらすインセンティブを与えるよう各国を説得できることを強調している。国連は、税制上の優遇措置を非税制上の優遇措置に置き換えたり、QRTCを提供したりすることに焦点を当てた宥和的プロセスを通じて、国・地域や多国籍グループがIIAに基づく仲裁を回避するよう促すことを目指している。このようなアプローチが広く採用されれば、税務および投資分野における法的安定性が高まる可能性がある。
Source:PwC, Tax Policy Alert
2025年8月20日、財務省とIRS(内国歳入庁)は、Notice 2025-44を公表し、2025年1月10日に最終決定された特定支払い損失(DPL:disregarded payment loss)規定(注1)、および関連する二重欠損金(DCL:dual consolidated loss)修正規定(注2)(規則案について、本誌2024年2月号および10月号参照)を廃止する規則案を公表見込みとしている。また、本Noticeでは、DCL規定とGloBEモデルルールの相互作用に関する移行緩和措置が拡大され、2028年1月1日前開始課税年度に係る損失について、適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTTs)およびトップアップ税を考慮せずに、DCL規定が一般的に適用見込みである旨を公表した。
(注1)米国のBEPS行動2(anti-hybrid rules)に係る規定として、他にSection 245A(e)やSection 267Aがある。
(注2)DCL規定に関して、いわゆる、‘all or nothing’原則などの見直しも検討されている(納税者からのコメント提出期限は2025年10月21日)。
Source:PwC, Tax Insights
アフリカ各国では、社会経済的課題の中で、歳入増の必要性に対応するための税制改革を進めている。デジタル経済の台頭に伴い、各国政府は、デジタルサービスに効果的に課税するための戦略を立てている。同時に、歳出をより効率的にすることは、政府の財政管理方法を改善するための鍵となる。これらの租税政策では、増税や新税の導入に伴い企業の税負担増加につながる可能性がある一方、(外国直接)投資を誘致するための税制上の優遇措置を継続することになろう。近年、アフリカの租税政策は、国内資金動員(DRM)の緊急性とデジタル経済によってもたらされた複雑性、そして最近のグローバルな動向に伴う社会経済的および財政的影響で、大きく変化している。各国は、調達資金ギャップを埋め、持続可能な開発を促進し、急速に変化するグローバルな税制環境に合わせるために、税制改革を優先している。デジタル経済の拡大に伴い、デジタルサービスへの課税は機会と課題の両方をもたらしている。従前、デジタル経済への課税の取組みとしては、主に間接税に焦点が当てられてきたが、租税政策は国・地域によって大きく異なり(課税対象デジタルサービスの定義、納税義務の閾値、適用税率、登録・コンプライアンス・執行に係る要件など)、複雑で分散化した状況になっている。なお、ケニアとナイジェリアは重要な経済的プレゼンス(SEP)、タンザニアとルワンダはデジタルサービス税(DST)を導入しているが、ほとんどのアフリカ諸国は、SEPやDSTを導入していない。
国連枠組条約がアフリカグループのイニシアチブであるという事実を考慮すると、ほとんどのアフリカ諸国は、クロスボーダーサービスに対する源泉地国課税(国連条約の議定書案)を支持することが予想される。
Source:PwC, Tax Policy Bulletin
その他、海外税務ニュースを含む当法人発行ニュースにつきましては、https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/tax/tax-news.htmlをご参照ください。
本ニュースは、各国の税制改正の動向をお知らせする目的で、各国のPwCメンバーファームが作成する速報ニュースや各国省庁等のホームページ掲載の情報等を翻訳してお伝えしています。税制改正案の段階の情報が多いため、最終的な法制度につきましては、専門家にご確認くださるようお願いいたします。
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