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2025-06-20
米国は、米国市民や米国企業に対して差別的または域外適用的な税を課すと見なされる外国に対応するためのさまざまなアプローチを検討している(注1)。2025年1月20日公表の大統領令(本誌2025年3月号参照)によれば、これらの税にはデジタルサービス税(DST)などや、第2の柱に係る税(軽課税所得ルール(UTPR)など)が含まれる可能性がある。一つのアプローチは、Section 891に基づくもので、大統領の宣言に従い、当該宣言が行われた課税年度において、特定の外国企業や個人に対する特定の米国税率を2倍にするものである。もう一つのアプローチは、下院に提出されたSection 899(案)で、租税条約にかかわらず、特定の外国企業や個人に対する特定の所得に対して最大20%の追加税を課すものである。
Section 891 - Section 891では、外国が米国市民や米国企業に対して差別的または域外適用的な税を課していると判断した場合、大統領はその旨の宣言を行うことができ、当該外国の企業や個人(米国居住者である外国市民(企業幹部など)も含まれる)に対する税率が2倍になる。具体的には、米国源泉の一定の所得(利子、配当、使用料その他の受動的(FDAP)所得)に係る税率が30%から60%と2倍になる他、申告所得税(個人・法人)に係る税率も2倍となる(課税所得の80%(一定の特別控除や免除の適用前)が限度)。
Section 899(案) - Section 899(案)は、財務省の報告書に記載された外国に係る差別的および域外適用的な税に関して、これらの国の特定の外国市民、外国法人、および外国パートナーシップに対して課される所得税(支店利益税を含む)および源泉税率を引き上げるものである。税率引上げは、初年度に従前の適用税率を5%引上げ、4年間で最大20%まで、毎年5%ずつ行われる(差別的または域外適用的な税が有効である限り、引上げ後の税率が継続)。Section 899(案)には、差別的および域外適用的な税を有するとしてリストに掲載された外国に対する他の措置として、連邦政府の調達に関する制限や、二国間租税条約や貿易協定の締結に関する制限が含まれている。なお、Section 899(案)は租税条約に明示的に言及しており、いかなる租税条約の定めにも関わらず、同法に基づく米国内法の源泉徴収規定(Section 1441およびSection 1442)が適用されるという条項が含まれている(一方、上述のSection 891は、現在有効な全ての米国の租税条約よりも前に制定されているため、後の条約によりSection 891に基づく課税が制限されるかという論点がある)。
上述のSection 891またはSection 899(案)の対象となる税には、DSTなどの他、第2の柱のUTPRも含まれる可能性がある。これらの規定の適用や、それに伴う米国との租税条約の停止/終了の可能性を含め、今後の米国政権や米国議会の動き、また各国の対応する動きに引続き留意が必要となろう。
DSTに係る大統領令 – 2025年2月21日、トランプ大統領は、フランス、オーストリア、イタリア、スペイン、トルコ、英国のDSTに関して、1974年通商法のSection 301に基づく調査を更新するかどうかをUSTR(米通商代表部)に決定させる大統領令に署名した(本誌2025年4月号参照)。本大統領令ではまた、1974年通商法のSection 302(b)に基づいて、米国企業に対して差別的、もしくは負担となる、または米国の商取引を制限する可能性のある他国のDSTを調査するかどうかをUSTRに決定するよう指示している。また、USTRに対し、カナダのDSTに関して、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく紛争解決を追求するかどうかを判断し、Section 302(b)に基づいて調査するかどうかを検討するよう指示している(本誌2024年11月号参照)。さらに、財務長官、商務長官、およびUSTRに対し、他国によるDSTを含む貿易およびその他の規制慣行について特定し、米国企業のデジタル経済および一般的競争力への差別的・不均衡な影響の観点から評価し、適切な対策を推奨するよう指示している。USTRに対し、この評価結果を上述2025年1月20日公表の大統領令(「America First Trade Policy」)に係る報告書(2025年4月1日報告期限)の一部として含めるよう指示している。また、財務長官に対し、同じく2025年1月20日公表の大統領令(「Global Tax Deal」)に係る報告書(2025年3月21日報告期限)の一部として、差別的または域外適用的な税(またはSection 891の下で対象となるその他の措置)の決定結果を含めるよう指示している。政権は、DST以外の慣行にも焦点を当てるとしており、例えば、不公平な罰金、慣行や罰則が、米国企業の事業を阻害し、追加のコンプライアンスコストとなり、米国のグローバル経済競争力を低下させるか否かについても焦点を当てている。さらに、外国政府が米国企業に課すDST、罰金、慣行、政策に対抗するために、関税などの対応措置を検討するとしている(注2)。
(注1)2025年3月27日、BEAT(税源浸食濫用防止税)の改正法案(H.R.2423)が下院に提出された(2023年7月18日提出法案(H.R.4695、Unfair Tax Prevention Act)の改訂版)。この法案は、外国が米国の企業などに対して域外適用的な税(UTPRなど)を課す場合に、米国が同等の税制措置を講じ、その外国の不公平な税制が続く限り適用されることを保証するというものである。具体的には、①対象事業体に対して、3%の基礎浸食率の下限および5億ドルの総収入テストを廃止、②対象事業体による特定サービスおよび源泉税対象支払いの他、売上原価の50%も対象に含める、③対象事業体に対して、BEAT税率の引上げなどの改正早期化、が含まれる可能性がある。
(注2)2025年3月26日、「米国への自動車および自動車部品の輸入調整」に係る大統領令(および「Fact Sheet」)が公表された。2025年4月3日以降、自動車および特定の自動車部品に対して25%の追加関税を課す(USMCAに基づく自動車は、米国コンテンツ割合に応じて関税を調整)他、自動車部品についても、遅くとも2025年5月3日までに、非米国コンテンツの価値に基づく関税の適用プロセスを確立するとしている(「ドローバック」(一定の輸入貨物の再輸出に係る関税の還付)は利用不可)。商務長官は、輸入状況を監視し、必要に応じて追加の措置を大統領に報告することになる。また、米国国際貿易委員会および税関・国境警備局と協力して、関税の適用範囲を拡大するプロセスを確立することになる。なお、「Fact Sheet」によれば、2023年の自動車部品に係る米国貿易赤字は900億ドル超になるとしている。また、2024年の経済分析によると、今回の10%のグローバル関税は経済を7,280億ドル成長させ、280万人の雇用を創出し、実質家計所得を5.7%増加させるとしている(以下の大統領令に係る「Fact sheet」でも同様の記載)。
2025年4月2日、各国・地域との相互関税に係る大統領令が公表された。2025年4月5日から新たな基本税率10%、また同4月9日から国別関税率(日本は24% ※4月9日の大統領令で90日間一時停止))、米国関税が上乗せとなる。自動車(および同部品)、鉄鋼、アルミニウムなどは除外(既存の法律規定などを踏まえて別途対応)、カナダ、メキシコは対象外(既存の条約などを踏まえて別途対応)となる。エネルギーおよび同産品、その他一定の重要鉱物などは対象外で、半導体、医薬品、銅と木材も対象外だが、銅と木材は関税適用に係る調査命令があり、医薬品や半導体についても同様の調査を示唆している。今後、各国・地域の対応状況に応じて、見直しの可能性があるとしている。これら貿易関係の相互性欠如のみならず、その他の有害政策として外国為替操作や付加価値税など(非関税障壁)についても言及している。なお、米国は、一連の関税措置で年間数千億ドルの税収増になるとしている。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2025年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2025年3月26日、財務大臣は、春季声明(Spring Statement)を議会に提示した(注1)。移転価格に関しては、費用分担取極め(「CCA」)のみ含まれている。CCAに関して、政府は既存の法律に基づき事前確認(「APA」)を通じてCCAの取扱いに関するクリアランスを提供することを公表した(2025年6月17日まで、公開協議に係るコメント募集)(注2)。本クリアランスを付与するための必要条件を詳述した改訂文書(Statement of Practice)を公表予定であるが、CCAの営利性(commerciality)およびその対象期間中の英国参加者の予想利益が、HMRC(歳入関税庁)のAPA締結決定要因となる可能性があるとしている。また、詳細を示すQ&A文書が公表されている。これは、2024年秋季予算(Autumn Budget)において、英国に経済的利益をもたらす投資の抑制要因とならないよう、CCAの移転価格上の取扱いを見直すとしたことを受けたものである。
(注1)米国政権の動きを踏まえたデジタルサービス税(DST)に係る対応は、現時点では示されていない。
(注2)R&D投資租税特別措置(法人税税額控除)に係るクリアランス(「advance clearances」)についても、2025年5月26日まで、公開協議に係るコメントを募集している。
出典:PwC, Knowledge Navigator
「月刊 国際税務」2025年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2025年3月27日、2025年度財政法案が議会で可決された(3月29日官報掲載)。オンライン広告サービスなどに適用される6%の平衡税(Finance Act 2016)は、2025年4月1日から廃止される。これは、2024年8月の電子商取引物品・サービス販売事業者に係る2%の平衡税の廃止に続くものである。
出典:PwC, Knowledge Navigator
「月刊 国際税務」2025年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
国連の国際租税協力専門家委員会は、2025年3月24日から27日にかけて第30回セッション(本委員会の現4年任期に係る最後のセッション)を開催した(議題には、デジタル化およびグローバル化された経済の課税、国連モデル租税条約、採掘産業の課税、移転価格、環境税、富裕税・連帯税、保健税(health taxes)、暗号資産課税、間接税、紛争回避・解決、税と貿易および投資の関係などの論点が含まれた)。本セッションでは、これまでArticle XXと呼ばれていたクロスボーダーサービスに関する条項をモデル租税条約の新Article 12AAとして採用することとし、Article12A(テクニカルサービスフィー)とArticle14(自由職業所得)を結合させて各Articleを置き換えることとされた。本条項では、各国が源泉税などを課す権利が強化される。国連租税委員会はすでに2024年10月の第29回セッションでArticle XX(Article 12A改訂)を多数決で承認している。今回の案では、国連モデル租税条約にいくつかの整合的な変更を加えている。本条項は、サービスがどこで行われるかに関係なく、国がクロスボーダーサービスの支払いに課税することを容認し、恒久的施設(PE)やサービス提供者に係る最低日数の物理的な存在などの要件なしに、課税することを可能にする。これは、より多くの種類のクロスボーダービジネスサービスに対して、総額(gross-basis)課税の使用を拡大することを目ざしている(適用税率は各締約国間で決定)。本委員会の少数派メンバーは、すでに懸念を表明しており、特に低マージンのビジネスに対する過剰な課税の可能性など、本条項の潜在的な問題を強調している。
出典:PwC, Knowledge Navigator
「月刊 国際税務」2025年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2025年の立法会期中に、いくつかの州で、デジタル広告、消費者データの使用、またはデジタルサービスに係る税法案が提出された。
デジタル広告 - ミシガン州では、2025年2月26日提出の法案H.B.4142において、デジタル広告サービスに係る年間総収入(州間配分後)に対して、2026年1月1日より、2.5%~10%の税率で課税するとしている。なお、ミシガン州の提案は、メリーランド州のデジタル広告税(現在、連邦および州レベルで訴訟の対象)と類似している。メリーランド州は、デジタル広告税に係る納税者の不服申立て手続きを提案している(H.B.546およびS.B.605)。その他、マサチューセッツ州、モンタナ州、ニューヨーク州、 ロードアイランド州でも、デジタル広告に係る税法案が提出されている。
データ使用 - メリーランド州は、2025年1月28日に法案S.B.904、同2月6日に法案H.B.1089を提出し、データブローカーへの配分総所得の6%に「データブローカー総所得税」を課すとしている(デジタル広告税との関連は示されていない)。本法案は、2025年7月1日に発効し、2026年12月31日後の課税年度に適用される。本税は、仲介個人データの収集、集計、分析、購入、販売、共有を行う事業者に適用されよう(総収入に係る配分上、場所は「個人データ内の住所」で決定されるが、人口その他の方法が認められる場合もあろう)。その他、コロンビア特別区、ニューヨーク州、テネシー州、ワシントン州でも、データ使用に係る税法案が提出されている。
デジタルサービス - バージニア州は2025年1月8日、法案H.B.1755において、デジタルサービス(ソフトウェアアプリケーションサービス、コンピューター関連サービス、ウェブサイトのホスティングとデザイン、データストレージやデジタルサブスクリプションサービス)に係る売上税/使用税を再提案している。デジタルサービスに係る税法案を提出しているその他の州には、ハワイ州、メリーランド州、ニュージャージー州、ニューヨーク州がある。
出典:PwC, US Indirect Tax Digest
「月刊 国際税務」2025年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
ルワンダ政府の包括的な税制改革計画(2024/2025~2029/2030までの6会計年度)には、他国(ケニア(2021年にデジタルサービス税(DST)を導入後、2024年に重要な経済的プレゼンス税(significant economic presence tax)に切替え)、韓国、南アフリカ、フランス)に倣ったオンラインサービスを提供する外国法人に対するDSTが含まれている。DSTはオンラインプラットフォームによる稼得収入(income)への適用となろうが、コンプライアンスを容易にするために、簡素化された登録および税制が確立されよう。なお、適用対象法人の多くが米国に拠点を置くため、トランプ大統領の新たな税政策の影響なども考慮する必要があろう。
出典:PwC, Knowledge Navigator
「月刊 国際税務」2025年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
EU(欧州連合)加盟国は、2015年3月11日のECOFIN(経済財務相理事会)会合で、DAC9(税務における執行協力に関するEU指令)に関して政治的合意に達した(本誌2025年1月号参照)(注)。DAC9は、理事会の正式採択後、EU官報に掲載される。EUミニマム税指令(第50条)に基づき第2の柱の実施延期を選択した加盟国を含め、加盟国は、2025年12月31日までに、DAC9を国内法に取込む必要がある(最初のトップアップ税務情報申告書(TTIR)の期限は2026年6月30日予定)。なお、TTIRの変更はEU理事会指令を通じて行われなければならず、EU加盟国の全会一致が必要となる。一方、加盟国は、OECDの第2の柱に関するすべての資料を「説明や解釈の情報源として、それらが[第2の柱指令]およびEU法と一致している範囲で、加盟国間の適用の一貫性を確保するために」使用するよう求められる。
(注)第三国(日本を含む)とトップアップ税申告情報を交換するためには、加盟国は依然として適切な国際協定を締結し、これらの国・地域と情報の自動的交換を可能にする必要がある。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2025年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
外国助成金規制(FSR)(本誌2021年7月号、2022年10月号および2023年2月号参照)におけるM&Aのレビューは、EUの合併レビュープロセスと似ているが、事前通知フェーズとそれに続く正式な通知(25営業日以内のクリアランス、または詳細な調査が最大100営業日かかる場合がある)が必要になる。現在までに、約100件のM&Aの通知(日系企業によるM&A案件を含む)があり、詳細調査の一例では、無制限の国家保証をやめ、外国助成金をEU域内の市場活動に還流させないようにするという条件付きで承認されている。なお、一定の閾値を下回るケースでも、欧州委員会が単一市場の公平な競争条件にリスクをもたらすと考えるM&A取引(「コールイン取引」)もレビュー対象になる可能性がある点に留意が必要である(2026年1月公表予定のFSRガイドラインでのさらなる明確化が期待される)。一方、公共調達に係るFSRについては、200件以上の入札に関連する1,000件以上の通知があった。詳細な調査が必要なケースでは、時間的制約から実質的に入札プロセスからはずれることになる(2件の入札案件に係る詳細調査の結果、対象3社のすべてが入札を取下げている)。なお、欧州委員会は、M&Aや公共調達とは無関係に、FSRの下で職権調査を行い、EU域内市場を歪めているかどうかを評価する権限も持っている。情報の提供を求め、インタビューや「無予告実地調査」(対象企業による控訴に係る棄却例あり)を実施し、暫定措置を命じることができる。クリーン産業ディールを含む最近のEU「Omnibus」(包括)パッケージ(本誌2025年4月号参照)では、欧州委員会が戦略的セクターでFSRの職権調査を活用する意向であるとしている。欧州委員会は、これまでに2件の職権調査を行っている。合併における外国助成金の調査に焦点を当てる可能性があり、今後数年間、厳しい調査が行われる可能性に留意が必要である。2026年1月までに、追加事案の開示と、正式なガイドラインを通じた明確化が期待される(なお、2025年3月5日、欧州委員会は、ガイドラインに関する公開協議を行った(2025年4月2日期限))。
出典:PwC, Tax Policy Bulletin
「月刊 国際税務」2025年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
その他、海外税務ニュースを含む当法人発行ニュースにつきましては、https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/tax/tax-news.htmlをご参照ください。
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