月刊国際税務 Worldwide Tax Summary 7月号

2021-07-05

2021年7月号Worldwide Tax Summaryトピックス

  1. 不確実な税務処理に関するHMRCへの通知(英国)
  2. EU議会・加盟国における大規模多国籍企業グループの公開国別報告に関する暫定的政治合意(EU(1))
  3. 小規模・低収益企業(STEs)への新たな法人所得税優遇政策、および研究開発特別控除(中国)
  4. 電子商取引規則案(ベトナム)
  5. 欧州委員会、21世紀の事業者課税に関する連絡文書を公表(EU(2))
  6. 外国の助成金による市場の歪曲に対処するための欧州委員会(EC)提案(EU(3))
  7. 一般裁判所、Amazonへの内部市場不適合の補助との欧州委員会の決定を破棄(EU(4))
  8. 一般裁判所、GDFスエズ(現在のEngie)の国家補助事件における欧州委員会の最終決定を支持(EU(5))
  9. 財務省、バイデン大統領の税制案の詳細を提示(米国)

不確実な税務処理に関するHMRCへの通知(英国)

2022年5月より、大企業(法人およびパートナーシップ)は、納税申告書に不確実な税務処理(「UTT」)が含まれている場合、HMRC(英国歳入関税庁)に特定の通知を提出する必要がある。UTTは、取引または商品に関連して税法を解釈または適用する方法が複数あり、採用された処理方法がHMRCの公知の見解に反する場合、またはHMRCの見解が不明な場合に存在することになる。これは、2022年4月後(注)にHMRCへの提出期限が到来し、関連する税額が5百万ポンドを超える申告について、法人税、所得税(PAYE(源泉課税)を含む)および付加価値税の法律の解釈に適用される。HMRCにUTTを通知しなかった場合、5千ポンドの罰金が課される。これらの通知は、HMRCに早期に注意喚起するシステムを効果的に提供することになる。これにより、HMRCはより対象を絞った方法で、より多くの申告書を調査することが見込まれる。この新しい義務は、現在HMRCのコンサルテーションの対象であり、UTTが存在するかどうかを識別するための7つのトリガー(以下に示す)が提案されている。法案は2021年夏に提出される見込みである。

(注)例えば、法人税の場合、2020年5月2日後に開始し、2021年5月1日以後に終了する会計期間の場合、申告書の提出日は2022年4月後になる。

  1. 解釈の結果が、HMRCの公知の見解と異なる
  2. 公知で確立された業界慣行に従っていない
  3. 以前の申告で同等の取引が処理された方法とは異なる方法で処理されており、その違いが、法律の変更、判例法、またはHMRCの公知の見解に合わせるためのアプローチの変更、の結果ではない
  4. 新規性があり、合理的に確実であるとみることができない
  5. 一般に公正妥当と認められた会計慣行(GAAP)に従って、会社またはパートナーシップの会計で、異なる税務上の処理方法が取引に適用される可能性を反映して、引当金が認識されている
  6. 事業で生じた金額を超える税務上の控除、または、同等の金額が税務上反映されない収入(HMRCがその処理方法を受け入れるのが公知の場合を除く)、のいずれかの結果となる
  7. 法的専門家の特権によって保護されていない専門家のアドバイスの対象となっており、その税務上の処理方法に関して、他の専門家のアドバイスと矛盾している、または、特定の取引の正しい税務処理を決定する上で従っていない

出典:PwC UK
「月刊 国際税務」2021年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

EU議会・加盟国における大規模多国籍企業グループの公開国別報告に関する暫定的政治合意(EU)

EU理事会のプレスリリースによると、2021年6月1日、欧州議会と、EU理事会(EU27加盟国)を代表して議長国ポルトガルの交渉担当者が、大規模多国籍企業グループの公開国別報告(「Public CbCR」)に関するEU指令案について、暫定的合意に達した。

本政治的合意は、いったん承認されると、欧州連合内に本社があるかどうかにかかわらず、その会計年度と前会計年度に7億5千万ユーロ以上の連結総収入がある多国籍企業グループまたは独立企業は、各EU加盟国に加え、税務上の非協力的法域のEUリスト附属書I掲載国(「EUのブラックリスト」)または附属書IIへの2年連続での掲載国(「EUのグレーリスト」)で支払う法人所得税を公開することが求められる(EUでの活動範囲が小さいグループへの免除規定あり)。

未払所得税、売上、従業員などを含む公開情報は、EUの共通テンプレートに従って、機械で読み取り可能な電子形式で表示する必要がある。本政治合意案によると、EU加盟国は、公開CbCR指令が発効してから18か月以内に、指令を国内法に置き換えなければならない。

公開CbCR指令は、企業が特定要素の開示を最大5年間延期できる条件を定めている。また、報告義務の遵守を確保するため、実際の責任を誰が負うかも規定している。EU理事会のプレスリリースによると、関係する企業の過度の管理上の負担を回避し、開示情報を効果的な公開精査に不可欠なものに限定するため、公開CbCR指令では、完全・最終的な開示情報のリストを規定している。欧州委員会は、国内法への置き換え日から4年後に指令の適用状況を審査する。

本暫定的合意文書は、EU理事会の特定多数決および欧州議会の単純多数決で承認される必要がある。

出典:PwC, EU Direct Tax Newsalert
「月刊 国際税務」2021年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

小規模・低収益企業(STEs)への新たな法人所得税優遇政策、および研究開発特別控除(中国)

STEsについて、2021年1月1日から2022年12月31日まで、年間課税所得の最初の百万元に対する法人所得税(CIT)がさらに50%減額され、CITの実効税率は2.5%になる。STEの年間課税所得が百万元以下の場合、年間課税所得は87.5%減額され、20%の税率でCITが課される(実効法人税率2.5%)。STEの年間課税所得が百万元超3百万元以下の場合、年間課税所得は50%減額され、20%の税率でCITが適用される(実効税率10%)。(注)中国のCIT標準税率は25%

製造会社について、2021年1月1日以後、研究開発費の特別控除率が75%から100%に引き上げられる。研究開発費が無形資産を形成しない場合、納税者は課税所得計算上、適格研究開発費の100%の追加控除を申請できる。研究開発費が無形資産を形成する場合、資産原価の200%に基づき償却できる。

出典:PwC, International Tax News
「月刊 国際税務」2021年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

電子商取引規則案(ベトナム)

商工省(MOIT)は、パブリックコメントのために、電子商取引に関する法令52/2013の改正案を公表した。電子商取引への課税を強化するために起草されている新しい規定と合わせて、これらの改正案は、成長段階にある電子商取引部門を規制し、課税するというベトナム政府の意向を示している。

本法令案の重要なポイントには以下が含まれる。

  • 銀行、保険、両替、オンラインゲーム、ラジオ、テレビサービスに関連する電子取引など、他の個別専門法の下で扱われる活動を除外することにより、本法令の範囲を狭める
  • 本法令で管理される事業体の範囲を拡大し、ベトナムに物理的な拠点があるかどうかにかかわらず、「ベトナムで電子商取引活動を行う外国のトレーダーおよび組織」をすべて含むようにする

出典:PwC Vietnam Legal NewsBrief
「月刊 国際税務」2021年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

欧州委員会、21世紀の事業者課税に関する連絡文書を公表(EU)

2021年5月18日、欧州委員会(EC)は、21世紀に向けたEU事業課税に関する連絡文書を公表し、その中で、短期および長期のビジョンと対策を示した。本取り組みは、公正、持続可能で、雇用豊富な成長と投資につながる環境の創出により、公共の資金調達のニーズを満たし、COVID-19からの回復取組と、グリーン化・デジタル化への移行を支援する、将来適合性があり、安定的で、効率的かつ公正なEUの税制の枠組みを創出するECの取り組みを反映している。本文書では、ECが、課税権再配分と、ミニマム実効課税に関する、今後のグローバル合意を実施するため迅速に行動することを望んでいる、としている。ECは、今後2年間で最も差し迫った課題に対処し、「今後数十年間に適合する包括的なEU事業者課税の枠組み」の計画を策定するための措置を講じる。ECは、以下のような一連の新たな措置の概要を示している。

EUにおける第1・第2の柱(Pillars)の実施

ECは、EUで第1の柱と第2の柱を実施するための指令を提案する。ECによると、ミニマム実効課税のグローバル合意の実施は、既存および保留中のEU指令および取り組みにも影響する。ECはまた、国際協定に参加するインセンティブを与えるため、非協力的国・地域のEUリストに係る第3国の評価基準に、第2の柱を追加することを提案する。ECは、条約特典否認ルール(subject-to-tax-rule)を、利子・ロイヤルティー指令に含めるとする、保留中の提案を復活させる予定である。

ペーパーカンパニー(shell companies)の利用に関連するアグレッシブなタックスプランニングに対処するための規則案(「ATAD 3」)

ECは2021年第4四半期に指令案を提示する予定であり、これによると、EU内の法人は、実質的なプレゼンスと実際の経済活動を行っているかどうかを評価し、濫用的なペーパーカンパニーの存在または利用に関連する税制上の恩典を否認するために必要な情報を税務当局に報告することが求められる。本提案では、新しい課税情報、モニタリング、税の透明性に関する要件も導入される。ECは、ロイヤルティーと利子の支払いによりEUでの課税を逃れること(「二重非課税」)を防ぐためにさらなる措置を講じる予定である。ECは2021年5月20日にフィードバックのための初期的影響評価を公表しており、6月17日後に公開コンサルテーションが行われる。

Debt Equity Bias Reduction Allowance(「DEBRA」)に関する規則案

ECは2022年第1四半期に指令案を提示し、エクイティーファイナンスの控除制度(allowance system)を通じて、法人税における負債資本のバイアスに対処し、財政的に脆弱な法人の再資本化(re-equitisation)を促進する予定である。ECは、意図しない目的で利用されないように、濫用防止措置を組み込む予定である。

EUで事業を行う大法人が支払う実効税率の年次公表に関する規則案

OECDで検討中の第2の柱で議論されている方法に基づく。この提案は2022年に予定されており、大規模なEU法人の「実際の」実効税率に関する公的な透明性を向上させることを目的としている。

欧州でのビジネス:所得課税の枠組み(Business in Europe: Framework for Income Taxation;「BEFIT」)

本提案(2023年に向け)では、以下を行う。

  • 課税ベースの共通ルールブックを、定式配分を通じて加盟国間で課税権を配分するための「より単純で公平な」方法と組み合わせる
  • 税務当局と納税者の単一市場における複雑な形式主義を簡素化し、コンプライアンスコストを削減する
  • 租税回避に対処し、雇用創出、成長、投資を支援する
  • EU加盟国にとっての信頼できる予測可能な法人税収を確保する
  • 共通連結法人課税ベース(CCCTB)の検討中の提案を差し替える
  • 加盟各国と緊密に協力、欧州議会の見解も考慮し、産業界や市民社会グループと協議する

新しいEU独自のリソース

ECは、欧州理事会からの委任に従い、NextGenerationEUの返済(repayments)に貢献する新しい独自のリソース提案も公表する。ECは2021年7月にデジタル税制(Digital Levy)を提案する予定であり、ECによると、これは、デジタル移行を支援・加速するという主要政策目標ならびにWTOおよび国際的義務に適合するものである。本デジタル税制は、国際税制改革に関する今後予定されているグローバル/OECD合意から独立しており、一旦採択されれば、共存することになる。デジタルサービス税と重要なデジタルプレゼンスに関する2018年のEC提案は撤回される。また、2021年7月にECは、EUの気候目標をサポートするための新しく改革された価格メカニズム、特に炭素国境調整メカニズム(CBAM)と、EU排出量取引制度(ETS)の改訂案を提案する。これらも、エネルギー課税指令(Energy Taxation Directive)で予定されている改革とともに、グリーン化への移行支援を狙いとしている。この後、ECは、金融取引税と、企業部門にリンクされた独自のリソースを含む可能性のある他の独自リソースを提案する。

本文書に加えて、ECは、2020年より前に利益を計上し税金を払っていた企業が、2020年と2021年の損失をこれらの課税済の利得と相殺できるようにするため、COVID-19回復中の中小企業(SMEs)の損失の国内処理(domestic treatment)について加盟国に勧告を発出した。

ECは、EUの税制の将来についてより広範な検討を開始し、2022年に「2050年に向けたEUのタックスミックス」に関するタックスシンポジウムを開催する。

出典:PwC, EU Direct Tax Newsalert
「月刊 国際税務」2021年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

外国の助成金による市場の歪曲に対処するための欧州委員会(EC)提案(EU)

2021年5月5日、欧州委員会(EC)は、外国の助成金(foreign subsidies)に対処するための新しい規則を提案した。これらの助成金は、場合によっては域内市場を歪めていると見られている。本提案は、域内市場で同等競争条件を確保することを目的としている。本提案は、2020年6月にECが歪曲的助成金に関する白書を公表したのに続く重要な次のステップである。本白書では、外国の助成金によって生じる歪曲的影響に対処するためのいくつかのアプローチを示している。本提案は、「戦略的自律性の強化(enhancing strategic autonomy)」の原則に基づく、より広範なEUの2020産業戦略の一部である。

提案規則によると、ECは、欧州連合(EU)で活動している事業に対して、EU非加盟国政府によって与えられた財政支援を調査する権限が与えられる。本規則案によると、財政支援により域内市場に歪曲的影響を与えているとECが考える場合において、当該企業による助成金の返済、市場でのプレゼンスの削減、特定資産の引き揚げなど、いくつかの是正措置(または関連企業によるコミットメント)を規定している。

本規則における「外国の助成金(foreign subsidy)」の定義は、国家補助(State aid)の定義に近いと思われる。EU非加盟国の政府から直接/間接に生じた、域内市場で経済活動に従事する企業に法律上/事実上恩典を与える財政支援であることが要件となる。これらの助成金は、税制上の優遇措置、欠損金の相殺、国による無制限の保証、外国投資に係る減免税または国による資金提供など、さまざまな形態をとる可能性がある。

本規則案では、合併に係る通知ベースのツール、公開買い付けに係る通知ベースのツール、および一般的な市場調査ツールの3つのツールを導入する。合併、買収、または公開買い付けプロセスを開始する企業は、過去3年間にEU非加盟国政府から受け取った財政支援をECに通知する必要がある。合併および買収の場合、買収される企業または合併当事者の少なくとも1社のEU総売上高が5億ユーロ以上であり、外国の財政支援合計が5千万ユーロ以上である場合、通知義務が生じる。公開買い付けに関する通知義務は、公開買い付けの価値が2億5千万ユーロ以上の場合に適用される(同様に、過去3年間を見ることになる)。

本提案は、2021年7月8日まで一般からのフィードバックの対象となる。欧州委員会、欧州議会、欧州理事会の3者合意後、理事会および議会で最終規則が採択され、発効日から6か月間でEU全体に直接適用される。

本提案により、EU域内市場への投資または参入を希望するEU域外の企業にとって、規制上の負担が増える可能性がある。さらに、合併や買収に対する監視が強化され、公開買い付けプロセスが長期化する可能性がある。

出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2021年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

一般裁判所、Amazonへの内部市場不適合の補助との欧州委員会の決定を破棄(EU)

2021年5月12日、欧州連合の一般裁判所(「GC」)は、Amazonグループ企業とルクセンブルグが、欧州委員会(EC)による2017年10月4日付けの国家補助(State aid)の最終決定(SA.38944)に対して提起した訴訟に関して、その決定を破棄する判決(T-816/17およびT-318/18)を下した。

2014年、ECは、ルクセンブルグ税務当局が2003年にAmazonグループのルクセンブルグ税務上の居住法人に発出したルーリング(2011年に延長)の調査を開始した。その決定で述べられた事実によると、調査対象期間(2014年まで)においてAmazon EU Sarl(AEU)は、Amazonの欧州オンライン小売・サービス事業のグループ欧州本部および主要事業者として機能し、EUのウェブサイトを通じて行われる小売・サービス事業に関連する戦略的決定を担当していた。業務遂行に当たり、AEUは、ルクセンブルグのパートナーシップである Amazon Europe Holding Technologies(AEHT)と知的財産(IP)権のライセンス契約を締結した。AEHTの機能は、IPを保持し、Amazon USとの費用分担取決めの下で、そのIPの開発に参加することであった。ルーリング取得時に実施された移転価格分析では、AEUがAEHTに支払うロイヤルティーは残余利益分割法に基づいて決定された。移転価格レポートでは、同様に分析された独立価格比準法(CUP)よりも、この方法が望ましい理由を説明している。ECは、その決定において、Amazonは、独立企業原則に従っていないとECが考える移転価格結果と算定方法を設定していることから、Amazonが税務ルーリングの形で個別の選択的利益を受け取ったと結論付けていた。

GCは、以下の通り、ECが恩典の存在を十分に実証していないと結論付けた。

  • ECは、AEHTの独自の機能分析のみに依拠しており、ロイヤルティーの金額を決定するに当たり、ルクセンブルグ税務当局が、検証対象者として不適切にAEUを選択した旨の証明をしていない
  • ECが提案する「独立企業間」報酬は、無形資産の価値増加を考慮することなく、無形資産の開発費をAEHTに転嫁するのみでは計算できない可能性があることから、ECは恩典の存在を立証していない
  • ECが、「低付加価値」サービスの提供に基づきAEHTの報酬を確定したのは誤りである
  • ECは、AEUの報酬の過小評価を証明できず、AEUの機能の点から見て、算定方法の選択を必要な法的基準に照らして正当化できていない

ECは、本判決の通知から2か月と10日以内に、EU司法裁判所に上訴できる。

出典:PwC, EU Direct Tax Newsalert
「月刊 国際税務」2021年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

一般裁判所、GDFスエズ(現在のEngie)の国家補助事件における欧州委員会の最終決定を支持(EU)

2021年5月12日、欧州連合の一般裁判所(「GC」)は、Engieグループ企業およびルクセンブルグが、欧州委員会(EC)の2018年6月20日付け国家補助(State aid)の最終決定(SA.44888)に対して提起した訴訟に関して、判決(T-516/18およびT-525/18)を下した。

ECの調査は、2008年から2014年の間にルクセンブルグ税務当局によって発出されたルーリングに関連するものであった。本ルーリングでは、2つのルクセンブルグのグループ子会社(「借り手」)が他の2つのルクセンブルグのグループ法人(「貸し手」)に対して発行した特定の商品(mandatorily convertible instruments)について、以下の税務処理を確認していた。

  • 借り手は、本金融商品を負債として扱い、費用控除可能なものとして記帳
  • 貸し手は、第三者と先渡売買契約を締結し、対価は資本参加免税の対象

ECは、その決定の中で、ルクセンブルグ法人の課税ベースを不適切に引き下げたとし、本ルーリングで国家補助を与えたと認定した。より具体的には、ECの決定は、本ルーリングが、借り手の控除費用と、対応する債権者の国内資本参加免税所得について、一貫性のない取り扱いを是認したと主張している。

GCは、個々の取引毎にその時点で適用されるルクセンブルグ法に基づいて適用される特定の税務取り扱いを無視して、最終的な経済結果を見ることによって、グループ内資金調達ストラクチャーを検証するECのアプローチを認めた。本判決につき、上訴されるかどうか注目される。

出典:PwC, EU Direct Tax Newsalert
「月刊 国際税務」2021年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

財務省、バイデン大統領の税制案の詳細を提示(米国)

2021年5月28日、米国財務省は、バイデン大統領の2022会計年度(FY)の議会への提出予算に含まれる税制案に関する114ページの「グリーンブック」の一般的解説を公表した。グリーンブックは、バイデン大統領が以前に提案した米国雇用計画(American Jobs Plan)と米国家族計画(American Families Plan)の合計4.1兆ドルの歳出を賄うために、法人税と個人税を引き上げる提案に関して、新たな詳細を提示している。本大統領予算では、2022会計年度の防衛・国内支出全体で1.5兆ドルが提案されており、税務コンプライアンス対策強化で10年間7,780億ドルの税収をあげる取り組みの一環で、IRSの予算を13億ドル増額し132億ドルにする提案が含まれる。本大統領予算では、2022会計年度に1.8兆ドルの赤字(GDPの7.8%相当)になるとし、連邦政府の赤字は、本予算の10年間を通じて、年間1.3兆ドル(即ち、GDPの4.2%超)を超えるとしている。パンデミックと関連経済効果への対処の取り組みに言及し、政府は、現会計年度(2021年度)の連邦政府の赤字は、3.7兆ドル(GDPの16.7%)になるとしている。

法人税の提案には、米国の法人所得税率の21%から28%への引き上げ(2022年から2031年の10年間で約8,578億ドルの増税見込み)、全世界ベースの会計上の所得が20億ドル超の法人に新たに15%のミニマム税を創設(2022年から2031年の10年間で約1,483億ドルの増税見込み)、グローバル無形資産低課税所得(GILTI)の税率を21%に引き上げ(グローバルミニマム税制度の改正、免除所得に起因する控除の否認、インバージョンの制限により、2022年から2031年の10年間で約5,335億ドルの増税見込み)、税源浸食濫用防止税(BEAT)を有害インバージョンの阻止および軽課税開発の終了(SHIELD)条項に置き換え(2023年から2031年の9年間で約3,900億ドルの増税見込み)、外国由来の無形資産所得控除(FDII)の廃止(2022年から2031年の10年間で約1,239億ドルの増税分を、研究開発費支出の追加支援に充てる)等の提案がある。個人税では、通常所得の最高税率の37%から39.6%への引き上げ、所得百万ドル超の個人のキャピタルゲインと適格配当所得を通常税率で課税、「ベーシス・ステップアップ」規則の使用制限(相続/贈与による特定財産の移転を実現事象と扱う)等がある。

本予算では、通常、増税案のほとんどは2021年12月31日後に開始する課税年度に発効するとしているが、一部は制定日以降に開始する課税年度に発効するとしている。しかし、BEATのSHIELDへの置き換えは2022年12月31日後に開始する課税年度に発効するとされている。なお、キャピタルゲイン税率引き上げ案は、「発表日後に認識が必要な利益について」遡及的に発効するとされている。当局者は、「発表日」は2021年4月28日(バイデン大統領が米国家族計画を発表した日)としている。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2021年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

※発行元の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

PwC税理士法人 お問い合わせ