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2025-02-14
2024年11月5日の選挙において、トランプ氏が次期大統領(2期目)に選出された。共和党は、上院で過半数(53議席)を確保し、下院の過半数(218議席以上)も維持することになった。この選挙結果を受け、トランプ氏が選挙期間中に提案した税および貿易政策が前進するとみられる。2025年は重要な「要成立」税法案の年であり、2017年の税制改革法(TCJA)の主要な個人関係条項が2025年末に期限切れとなり、いくつかの重要な事業関係税条項が改正されることとなっている。対応がなされない場合、事実上全ての個人納税者に対する全面的な増税、および一部の事業関係税の自動的な増税となろう。なお、大統領府と両院議会のいずれもが共和党支配となることで、2017年にTCJAが成立したときと同様に、2025年に共和党の票だけで税法案を成立させるための「予算調整」手続きの使用が可能になるとみられる(ただ、期限切れとなるTCJA税規定やトランプ次期大統領の選挙中の諸提案等への対応に係る合意形成のために調整法案に係る対応が2025年後半になる可能性)。
トランプ氏の税制提案 - トランプ次期大統領は、2025年末に期限切れとなるTCJA個人所得税(最高税率39.6%(2026年予定)から37%への引下げなど)および遺産税条項を恒久化することを求めている。また、米国内で製品を生産する法人に対する法人税率を21%から15%に引下げ、100%の特別減価償却を復活させ、米国内の研究活動に対するインセンティブを強化することを提案している。また、選挙期間中に、多くの個別の個人税制優遇措置を提案しており、チップ収入や社会保障給付に対する課税の廃止、州および地方税に係る連邦項目別控除の復活や、自動車ローン利息の控除まで幅広い提案を行っている。また、現行法では、2025年末に主要な国際事業関係税の税率が引き上げられる予定であり、これにはGILTI(global intangible low-taxed income)(10.5%→13.125%)、BEAT(base erosion and anti-abuse tax)(10%→12.5%)、およびFDII(foreign-derived intangible income)(13.125%→16.4%)が含まれる。また、特定の被支配外国法人(CFC)所得に係るルックスルーの取扱いも期限切れとなる予定である。次の議会では、第2の柱(グローバルミニマム税制)により、米国法人が他国でより高い全体的な税率負担となる可能性への懸念に対処することを目指す可能性がある。共和党議員は、第1の柱(課税権の再配分)と、第2の柱(グローバルミニマム課税)に関するOECD/G20の枠組み合意を支持するバイデン政権のアプローチに強く反対している。一部の民主党議員も、これらの提案について懸念を表明している(特に、第2の柱のガイドラインに基づく米国の研究税額控除の取扱い)。さらに、他国がデジタルサービス税や類似の措置を導入することに対しても、主に米国企業に影響を与えると考えられているため、超党派の反対がある。なお、トランプ氏は、過去数カ月にわたってさまざまなイベントで公表してきた主要な税制提案の詳細をまだ公開していない。今後、大統領府と財務省は、トランプ次期大統領の具体的な提案を議会に提出することになる。米国内で製品を生産する法人に対する15%の法人税率の提案に関しては、TCJAによって廃止されたSection 199の国内製造控除が、適格法人の適格所得に対する税制優遇措置のモデルとなる可能性があるとの見方もある。この他、次の議会では、他のTCJA条項にも対処する可能性がある。2024年8月1日、上院は、H.R. 7024の法案を阻止している(本誌2024年3月号および10月号参照)。この法案は、2025年末までの米国内R&D投資に対するSection 174に係る損金算入、Section 163(j)に係るEBITDAベースの事業関連利子控除制限、およびSection 168(k)に係る100%特別減価償却を選択的に遡及的かつ継続的に復活させるものであった。H.R. 7024には、児童税額控除の一時的な強化や、災害税制救済措置および台湾との二重課税の救済措置(本誌2023年9月号参照)を含む他の条項も含まれていた。トランプ次期大統領は、経済成長により自らの税提案のコストを相殺するとしている。また、全ての外国製品に対して10%~20%の基準関税、中国からの輸入品に対して60%(超)の関税を提案している他、メキシコで製造された車両に対して100%から200%の関税、および全てのメキシコ原産品に対して25%の広範な関税を提案している(選挙期間中)。なお、米国大統領は多くの条件により議会承認なしで関税を課すことができるが、予算調整手続きにおいて、歳入として公式に織り込むためには、立法措置が一般的に必要となろう。トランプ次期大統領はまた、バイデン政権下で2022年のインフレ抑制法の一環として制定されたクリーンエネルギー税額控除およびインセンティブの廃止を求めており、大規模な大学基金に係る連邦税増税を提案している。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2025年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年10月28日、欧州委員会は、税務における執行協力に関するEU指令(DAC9)の改正案を提案した。これらの改正は、加盟国間でのトップアップ税情報の交換を容易にし、多国籍企業(MNE)が各ローカルレベルではなく中央レベルで申告を行えるようにすることを目的としている。EU理事会で採択された場合、これらの規定はMNEグループおよび大規模な国内グループが複数の加盟国での申告を行う代わりに、1つのEU加盟国で単一のトップアップ税情報申告を行うことが可能になろう。DAC9は、OECD/G20のBEPSに関する包摂的枠組み(IF)におけるGloBE情報申告(GIR)をEU法に組み込むことで、報告要件を簡素化することを目指している。この提案により、各国税務当局が他のEU加盟国と情報を交換するためのシステムが構築される。EU理事会およびEU議会によって採択された場合、EU各国政府は、2025年12月31日までにDAC9を実施する必要がある。最初のトップアップ税情報申告は2026年6月30日までに提出され、情報交換は2026年12月31日までに行われる必要がある。最終親事業体(UPE)の所在地国以外でトップアップ税情報申告を行う場合、いずれの加盟国の指定申告事業体とするかを検討する必要があろう。
税務当局間の情報交換制度の導入 - この提案では、加盟国間で標準化されたテンプレートを使用して、自動的にトップアップ税情報申告書を交換することを税務当局に求める制度を設けることになる。加盟国は、これらの申告書の関連部分を受領後3カ月以内(最初の申告書については6カ月以内)に他の加盟国に標準デジタル形式で通知する必要がある。この標準デジタル形式は欧州委員会が策定する。この提案には、EU加盟国間でフォローアップ情報要請の調整プロセスが含まれている。トップアップ税情報申告書の受領および検証後に調整が必要と権限のある当局によって判断された場合、送信元の加盟国の税務当局に通知し、その後、申告事業体から必要なサポート情報または修正情報を取得し、関連する加盟国の税務当局と交換する義務がある。
関連税務情報の報告に係る標準フォームの導入 - この提案では、対象グループがトップアップ税情報を報告するための標準フォームを導入する。欧州委員会は、このフォームが2023年7月にIFによって採択されたGIRと完全に一致しているとしている。一方、OECDはすでにGIRの改訂作業を進めており、提案されたEU標準フォームが変更される可能性があるとしている(今後のGIRの改訂の可能性を考慮して、本DACにおける第2の柱の標準フォームを、OECDのGIRに整合させる欧州委員会の権限を含めている)。トップアップ税情報申告書には、2028年12月31日以前に開始する全ての会計年度(ただし、2030年6月30日後に終了する会計年度を除く)に係る一時的な措置として、簡素化された国別報告フレームワークの選択が含まれている。本簡素化フレームワークの下では、対象グループは一般的に、構成事業体ごとの財務諸表純利益および損失、当期税費用、または繰延税費用の調整を報告する必要はなく、全ての調整を純額で報告できる。本簡素化フレームワークは、(1)トップアップ税負債が生じない、または(2)トップアップ税負債が生じるが、構成事業体ごとに区分する必要がない、国・地域のみに認められる。なお、DAC9提案およびGIR報告書のいずれも、各国・地域において通常、トップアップ税情報申告書以外の追加データポイントの報告を要求することを控えるべきであるとしているが、これとは別途の各国・地域別の申告要件には留意が必要である。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2025年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年11月5日、EU各国の財務大臣は、ECOFIN(経済財務相理事会)にて、2024年10月30日に公表された最新版の「デジタル時代の付加価値税(ViDA)」パッケージ(本誌2024年7月号参照)を承認した。ViDAの提案は、EUの付加価値税(VAT)規定の合理化および調和、クロスボーダーで事業を行う事業者の事務負担の軽減、および各加盟国の税収確保を目的として設計されている。最新版のViDAパッケージには、2022年12月8日の原案と比較して、いくつかの妥協点と新たな開始日が含まれている。ViDAの主要な柱は以下のとおりである。
VATとデジタル報告 - 以下の改正が承認された。
上述の要件は、2030年7月1日から適用される(2024年1月1日時点で既に国内のデジタル即時取引ベース報告義務を有する(あるいは公表している)加盟国に係る特別規定があり、2035年1月1日までに「EUモデル」に統合する必要がある)。
プラットフォーム経済のVAT取扱い - 2028年7月1日から(最も早い場合)、電子インターフェースを使用して短期宿泊レンタル(最大30泊)や陸上旅客輸送の役務提供を扱う課税対象者は、原則として、当該サービスの提供者とみなされる(サービス提供者が、プラットフォームにVAT IDなどを通知し、VATを請求する場合を除く)。加盟国は、遅くとも2030年1月1日から本規定を適用する必要がある(小規模企業や旅行代理店に対する特別なスキームは除外)。プラットフォームは、その販売者にVATの徴収を任せることも可能である。なお、全てのプラットフォームが対象となるわけではなく、支払い処理、リスト作成や広告、または単に顧客を振り替えるだけのプラットフォームには除外措置が設けられる。
単一VAT登録とリバースチャージ – EC(欧州委員会)は、2028年7月1日から、複数のEU加盟国で活動する事業者に係る実務上の課題に対処するため、One Stop Shopの適用を拡大し、自社製品の移転に係る特別制度を導入し、(B2B)強制的リバースチャージメカニズムを適用する。
なお、ECの提案と、妥協案の間には大きな違いがあるため、欧州議会は簡易書面手続き(simplified written procedure)による再協議が必要となる。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2025年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年11月14日、OECDは、新たな報告書「温室効果ガス排出プライシング2024:排出量削減に向けた整備」(以下「報告書」)を公表した。この報告書は、2021年から2023年にかけての79カ国におけるカーボンプライシングとエネルギー課税の動向を包括的に分析しており、世界の温室効果ガス(GHG)排出量の82%をカバーしている。この報告書は、気候目標を達成するために厳格でよりグローバルに整合したカーボンプライシングとエネルギー課税の必要性を強調している。本報告書は、特にパリ協定の第6条に関するCOP29での議論や交渉に直接関連する知見を提供している。第6条の実施に関する情報として、カーボンプライシング措置の有効性、国際的な連携の利点、強力な測定・報告・検証システムの重要性、カーボンリーケージに対処するための戦略、歳入増の可能性、が含まれる。これらの知見を活用することで、各国は気候行動の取組みを進め、国際協力を促進し、パリ協定の目標をより効果的に達成することができよう。一方、進展は見られるものの、既存の政策、公表後未実施の政策、およびネットゼロを達成するために必要な政策の間には依然として大きなギャップが存在することは明らかとなっている。本報告書では、低炭素経済への公正かつ効果的な移行を確実に進めるため、包括的改革とターゲットを絞った支援措置を求めている。この報告書では、カーボンプライシングとエネルギー課税データベースを使用して、炭素税、排出量取引制度(ETS)、燃料消費税、および補助金の動向を追っている。主なポイントは以下のとおりである。
排出量のカバー率 - 79カ国の温室効果ガス(GHG)排出量の約42%が正の純実効炭素税率(実効炭素価格)(ECR)の対象となっている。ECRは炭素価格に総排出量のうちカバーされる炭素排出量の割合を乗じたものである(例えば、全排出量の20%がEUR 100/tの対象の場合、ECRはEUR 20/tCO2eとなる)。GHG排出量の27%は明示的な炭素価格(ETSまたは炭素税)の対象で、23%は燃料消費税の対象となっている。明示的なカーボンプライシング措置による排出量の対象率はほとんど変わらないものの、報告書では、分析期間後に提案および採用された多くの措置があることを強調している。
カーボンプライシング措置 - 新たなカーボンプライシング措置を策定する国々の間で、炭素税よりもETSが好まれる傾向がある。本報告書のデータによると、ETSが排出削減を直接ターゲットにし、無償配分などのメカニズムを通じて柔軟性を提供できることが影響しているとみられる。
エネルギー危機の影響 - 2022年の世界的なエネルギー危機は、燃料消費税の大幅な削減と化石燃料補助金の増加を引き起こし、その結果、純ECRが減少した(平均純ECRは2021年のEUR 17.9/tCO2eから2023年にはEUR 14.0/tCO2eに減少)。一方、ETSおよび炭素税による明示的な炭素価格の対象率はわずかに増加している。
セクター別対象率 - カーボンプライシング措置による排出量の対象率はセクターごとに異なる。道路輸送セクターは主に燃料消費税によって90%の対象率である。電力セクターはETSによって74%の対象率である。建築や産業などの他のセクターは対象率が低く、化石燃料補助金の適用には大きなばらつきがある。
歳入増の可能性 - 本報告書では、ETS許可証の無償配分の段階的廃止、化石燃料補助金の段階的廃止、および最低ECRをEUR 60/tCO2eからEUR 120/tCO2eに設定することを含む改正により、純炭素歳入は現在のGDPの0.6%と比較して、平均でGDPの1.7%から2.3%に増加する可能性があるとしている。
国民の支持 - 本報告書では、炭素歳入を環境支出、社会保護、その他の開発目標に充てることで国民の支持が向上する可能性があるとしている。また、カーボンプライシング政策の機能と分配結果を説明するための透明で効果的なコミュニケーションの必要性も強調している。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2025年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
OECDは2024年7月25日に新しい報告書「不動産に関する国際的な税の透明性の強化 - 概念から実体へ」を公表している。本報告書では、外国所有の不動産に関する情報交換とデューデリジェンスのための措置を提案しており、この分野での現状と国際的な税協力を強化するための潜在的な課題について言及している。本提案では、クロスボーダーの不動産(実質的)所有権に関する税務当局間の国際的な協力と信頼性のあるデータ共有を改善するための枠組みを構築することを目指している。本報告書では、不動産に関する情報報告の枠組みと情報交換制度を、OECDの共通報告基準(CRS)など他の税の透明性報告枠組みに類似した形で提案している。未だ政策策定の初期段階にあり、多くの側面が未定であるものの、2025年の20か国財務大臣・中央銀行総裁会議でのさらなる進展の報告も予定されており、今後の国際フォーラムでの動きに引き続き留意が必要となろう。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2025年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
その他、海外税務ニュースを含む当法人発行ニュースにつきましては、https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/tax/tax-news.htmlをご参照ください。
本ニュースは、各国の税制改正の動向をお知らせする目的で、各国のPwCが作成する速報ニュースや各国省庁等のホームページ掲載の情報等を翻訳してお伝えしています。税制改正案の段階の情報が多いため、最終的な法制度につきましては、専門家にご確認くださるようお願いいたします。
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