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2024-09-30
2024年6月17日、OECD/G20 BEPS包摂的枠組み(IF)は、第2の柱のグローバル税源浸食防止モデルルール(GloBEルール)の運用明確化を目的とした第4弾の執行ガイダンスを公表した。本ガイダンスは、2024年4月に改訂されたGloBEルールのコメンタリーに組み込まれる。本ガイダンスには2つのFAQ文書が添付されている。一つ目はさまざまなトピックをカバーする一般的なFAQで、もう一つは各国・地域におけるGloBEルールの適格性判定に係るピアレビューの方法にフォーカスしている。またOECDは、第1の柱(利益B)に関する追加ガイダンスを公表した。本追加ガイダンスには、営業費用ベースのクロスチェック、およびデータ利用可能性メカニズムを適用するための「適格国・地域」の定義が含まれている。また、利益Bに関する政治的コミットメントの適用範囲となる「対象国・地域」(以前は、「低キャパシティー国・地域」)のリストも含まれている。
本GloBEガイダンスのパッケージには、これまで企業や税務当局が明確化と簡素化を求めてきたいくつかの分野、すなわち、繰延税金負債(DTL)のリキャプチャー、GloBEと会計上の帳簿価額との乖離、クロスボーダー当期税額の配分、クロスボーダー繰延税額の配分、フロースルー事業体を含むストラクチャーにおける利益と税額の配分、証券化ビークルの取扱い、について明確化している。今後、さらなるガイダンスの公表が確実とされるが、早くて2024年末になるとみられる。今後のガイダンスに含まれる可能性のあるトピックとしては、紛争解決に関するルールや、移行期間CbCRセーフハーバーに係るハイブリッド裁定ルールのGloBEルールへの完全適用、といったものが考えられる。また、さらなる恒久的セーフハーバーも検討の余地があろう。
DTLリキャプチャー – Section 1では、(5会計年度以内に取り崩されない場合に)GloBEルールに基づき、リキャプチャーの対象となるDTLカテゴリーの特定・追跡管理(トラッキング)の方法と、その算定に係る複数の手法の適用方法について概説している。本ガイダンスでは、適用対象企業が、項目ごとや単一の総勘定元帳(GL)勘定ではなく、これらを組み合わせた「Aggregate DTL Category」ベースでDTLをトラッキングできることを明確化している(特定の勘定は、個別トラッキングが可能)。また、本ガイダンスでは、一定の要件のもと、先入先出(FIFO)処理も認めている。
GloBEと会計上の帳簿価額との乖離 – Section 2では、GloBEと会計上の資産・負債の帳簿価額との間に乖離が生じる場合における、GloBE上での繰延税金資産(DTA)およびDTLの算定や調整、および取得事業体が原価で会計処理するグループ内取引の取扱いを説明している。GloBE上のDTLおよびDTAについて、財務会計上の属性項目(attributes)に加えて、継続的なトラッキングが必要となる。
クロスボーダー当期税額の配分 – Section 3では、国内税制で通算控除(cross-crediting)が認められている場合に、親事業体の当期税額を、その恒久的施設(PE)に配分するための4段階のプロセスを説明している。これらの原則は、PE、税務上透明/ハイブリッド事業体、被支配外国会社(CFC)税制(米国GILTIのような(グローバル)合算CFC税制を除く)、分配税、に係る配分に適用されることが明確化されている。なお、今後、GloBEルールの申告後調整や税率変更との相互作用についても、さらなる検討が必要であるとしている。
クロスボーダー繰延税金の配分 – Section 4では、繰越欠損代替税金資産(Substitute Loss Carry-forward DTA)ルールを、ハイブリッド/PE/リバースハイブリッド(CFCに限らない)制度に拡張しており、その配分のための5段階のプロセスを規定している((グローバル)合算CFC税制に係る税額は、配分できない)。なお、多国籍企業(MNE)グループは、これらを考慮しないこともできる(国・地域単位の5年選択)。以上の他、事例を用いて、CFC税制関係国の構成事業体間における繰延税金の配分原則などについても説明している(設例(4.4.1(e)-3など)も掲載)。
フロースルー事業体を含むストラクチャーにおける利益と税額の配分 – Section 5では、フロースルー事業体を含むストラクチャーにおける構成事業体間の利益と税額の配分方法、およびそのようなストラクチャーにおける所得や税額の潜在的な二重計上や非計上に対処する方法についてのガイダンスが示されている。本ガイダンスは、フロースルー事業体が、税務上透明な事業体またはリバースハイブリッド事業体であるかどうかの判定は、一般的に、それ自体がフロースルー事業体ではない、所有権連鎖の中でフロースルー事業体に最も近い構成事業体所有者(‘reference entity’)の税法を参照して決定すべきと結論付けている。なお、タックスヘイブンは一般的に、フロースルーとみなすことはできず、また他の事業体をフロースルーとみなすこともできない。ハイブリッド事業体の定義は、透明でない(not fiscally transparent)、タックスヘイブン(法人所得税率ゼロの国・地域)に所在する事業体にも拡大されている。
証券化ビークルの取扱い – Section 6では、証券化ビークルがGloBE上の構成事業体であるかどうかの判定方法、および構成事業体である証券化ビークルに対して、その収益、費用、税の特殊性を考慮したGloBEルールの適用方法についてガイダンスを示している。なお、本ガイダンスによれば、QDMTT を採用している国・地域は、証券化ビークルにトップアップ税額を課す必要はないが、課してもよいとしている。いずれのアプローチも、QDMTT セーフハーバー上、整合性基準を満たすことになる。
本FAQでは、「移行期間における適格性の認定措置」の主な特徴について説明している。これは、OECDがルールの適格性を有する国のリストを公表する前段階の措置であり、各国・地域は、自国・地域の法律(草案を含む)の適格性を最初に自己認定する。一方、他のIF加盟国・地域は、これに意見を述べることが可能である(各国・地域に、自国・地域のルールの適格性認定を無制限に認めるものではない)。FAQによれば、実施国・地域は、他の実施国・地域の法律に係る移行期間の適格性を認める必要があり、法令の適用については、そのプロセスの結果に依拠することになる。ピアレビューの仕組みによる「完全な法律のレビュー」は、法律の発効日から2年以内に開始される予定である。なお、本レビューにより、ある国のルールが適格でないと判断された場合でも、移行期間の適格性が遡及的に失われることはないとしている。継続的モニタリングも、ピアレビュープロセスの一環で行われる。
利益Bは、基本的な(卸売)マーケティング・販売活動に対する独立企業間原則の適用を簡素化することを目的とし、低キャパシティー国・地域に焦点を当てている。策定の完了を待って、IFは2024年2月19日に報告書を公表し、各国・地域は2025年1月1日までに導入を開始できるようになった(本誌2024年4月号参照)。利益Bに係る2024年6月の追加ガイダンスには、まず「対象国・地域」(以前は「低キャパシティー国・地域」)となる国・地域の定義とリストが含まれている(なお、IFの政治的コミットメントの下で、表向きは、採用する国・地域が対象国・地域である場合、利益Bに基づいて決定された移転価格の結果を尊重することに合意している)。第2に、売上高利益率を用いた算定結果に対する「営業費用クロスチェック」に関連して、より高い上限利益率レンジが適用される「適格国・地域」のリストを定義し、記載している(利益B報告書のSection 5.2関連)(注)。第3に、データの入手可能性が限られているため、国・地域のソブリン信用格付けに基づく上方修正を基本価格マトリックスに適用できる国・地域のリストを別途提示している(利益B報告書のSection 5.3関連)。これらの国の定義とリストは、OECD移転価格ガイドラインの第4章の附属書(Annex)にある利益Bのガイダンスに直ちに組み込まれることになる。定義と国・地域のリストは、5年ごとに見直される。OECDのプレスリリースによると、利益Bを含む第1の柱パッケージに関するさらなる作業が進行中である。
(注) 世界銀行の国別分類を用いた営業費用ベースでの上限に係る「適格国・地域」の定義には、利益B報告書に留保を表明しているインド、ブラジル*、コロンビアをはじめ多くの国・地域がリスト化され、中国、インドネシア*、マレーシア*、フィリピン*、タイ、ベトナムなどのアジア諸国も含まれる。これらの国々は、より高い営業費用ベースの上限率の適用による恩恵を受けることから、本アプローチの他の側面(定性的スコープ基準のオプションの必要性を含む)の懸念が緩和される可能性がある。なお、*は、Section 5.3関連のリストにも含まれている。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2024年8月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年6月5日、公開国別(CbC)報告規定を含む財務省改正法案が、議会に提出された。本法案に規定されている措置は、大規模な多国籍企業グループに対し、国別に特定の税務情報および税へのアプローチに関する声明について公表を求めるもので、2024年2月に公表された修正法案の内容とほぼ一致している(本誌2023年6月号、および2024年4月号参照)。
本法案では、前回の修正法案に含まれていた以下の詳細事項を確認している。
本法案では、以下のとおり、若干の修正がある。
出典:PwC Australia, Tax Alert
「月刊 国際税務」2024年8月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年6月20日、米国連邦最高裁判所は、2017年の減税・雇用法(TCJA)に基づくSection 965の移行税(MRT:Mandatory Repatriation Tax)の合憲性を支持する判決(No. 22-800)を公表した。本判決では、第9巡回区連邦控訴裁判所の判決を支持している。5人の判事が多数意見に賛成し、2人の判事が判決に同意する別の意見に賛成、2人の判事が反対した。多数意見では、その判断が狭く限定されており、パススルーとして扱われる事業体に限定されることを強調している一方、本判決は、議会がすべてのパススルー事業体に対して同じ方法で課税しなければならないと示唆しているわけではない、としている。さらに、本判決では、所得税(income tax)における実現(realization)が憲法上の要件であるかどうか、議会が事業体とその株主の両方に同じ未分配所得に対して課税できるかどうか、または保有、富(wealth)、純資産、価値の上昇に対する他の種類の税が憲法上の問題を提起する可能性があるかどうかなど、他の仮定の問題については取り上げておらず、解決もしていない。多数意見では、議会は、従前より、事業体の未分配所得について、その事業体の株主に課税してきており、それはMRTでも同様であるということ、また、最高裁ではこの種の課税を従前から容認してきたところであり、MRTについても同様である、と強調している。なお、MRTの合憲性に関しては、(i)修正第5条(デュープロセス条項)、および(ii)修正第16条(連邦所得税の賦課・徴収条項)、として争われており、納税者(個人)は、そのうち(ii)のみの上訴審判決を求めた(最高裁判所は、下級裁判所で提起された(i)のデュープロセス条項には対応しないとしている)。最高裁は、本件について、議会が、実現した未分配所得を、その事業体の株主やパートナーに帰属させ、当該帰属部分について、各株主やパートナーレベルで課税できるか、という問題としてとらえている。
本件は、2017年にTCJAの下で制定されたSection 965の合憲性に関わるものである。納税者は、2005年にインド法人(非上場)に出資し、同社の普通株式13%を取得した(これまで、配当や株式譲渡はなし)。納税者は、同社株式を10%超保有していたため、2017年のサブパートF所得として、米国連邦所得税が課税された。納税者は、本移行税が、米国憲法が求める直接税(direct tax)の州間按分に違反していると主張した。納税者は、株主が法人から所得を実現、または直接受領することなしにはその所得に課税できず、実現がないのであれば、それは、(所得ではなく)財産(インド法人株式)に対する直接税である、と主張した(1920年の米国最高裁判所の判例(252 U.S. 189(1920))に依拠)。なお、本件に関し、アメリカ合衆国ワシントン州西部地区連邦地方裁判所は、修正第16条の違反はないとの判決を下し、納税者の1920年最高裁判決への依拠を否定した。当該判決を受け、納税者は、第9巡回区連邦控訴裁判所に控訴したが、同裁判所は、納税者による所得の実現は、憲法上の要件ではない旨の見解を示した。
最高裁判所の多数意見では、MRTを、外国法人(CFC)の実現された未分配所得をその法人の株主に帰属させ、当該帰属部分の所得について株主に課税するものととらえた。これにより、MRTは、議会の憲法上の権限を超えていないと判断した。最高裁判所は、その判決が狭く限定されており、所得が所有者に帰属するように扱われる事業体(すなわち、パススルーとして扱われる事業体)に限定されることを明確にした。最高裁判所は、その判決の中で、議会が同じ未分配所得について法人とその株主またはパートナーの両方に課税することを容認するものではない、としている。(注)
(注)多数意見では、所得税は、間接税(indirect taxes)で、修正第16条によって、按分は必要ない、としている。直接税とは、人や財産(persons or property)への課税であり、事業活動や取引(activities or transactions)への課税は、間接税とされる。直接税は、人口比で州間按分が求められる一方、間接税は、全米で統一的である必要がある(按分不要)。また、納税者が依拠する1920年の最高裁判決では、所得の帰属には触れていない一方、他の判例では、所得の帰属について触れ、それを認めている、としている。なお、所得税として、その実現が憲法上求められるかについて、裁判官の意見は分かれており、未解決のままである。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2024年8月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年6月17日、米国は、ロシアに正式な通知を行い、同国との租税条約第1条第4項、第5条から第21条、第23条、およびこれに伴う議定書の運用を、相互合意により停止することを確認した旨を公表した。これは、源泉税およびその他の税に関して、2024年8月16日に発効し、両政府により別途の決定があるまで継続される。本措置は、ロシアが、2023年8月8日に、同条約の第1条第4項、第5条から第21条、第23条、および議定書の運用を停止する意向を通知したことに対応したものである(本誌2023年10月号参照)。
出典:U.S. DEPARTMENT OF THE TREASURY
「月刊 国際税務」2024年8月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2024年6月7日、国連(UN)は、UN国際租税協力枠組み条約(枠組み条約)の協議事項草案(「ゼロ・ドラフト」Terms of Reference(ToR))を公表し、公開協議を行った(コメント期限は、2024年6月21日)。本草案では、交渉の目的、原則、実質的および構造的要素、交渉期間を含む、枠組み条約の基本的な項目とメカニズムが示されている。また、デジタル化およびグローバル化した経済、クロスボーダーサービス、富裕層への課税など、初期的議定書で取り組むべき優先分野も挙げている。また、本草案では、将来の議定書の対象候補となるトピックをいくつか挙げている(環境・気候変動、情報交換、執行共助、等)。UNが、国際租税への取り組みを強化する動きは、これまでのところハイレベルで議論されており、プロジェクトの具体的な狙いに関する情報は限られている。本ToRで扱う分野は、OECDなどの他のフォーラムで扱われている分野と重複する可能性がある(注)。なお、公開協議の結果は、改訂版の草案(特別委員会の第2回会合(2024年7月29日から8月16日に開催予定)での議論と交渉のベースとなる)に反映される。本草案では、枠組み条約について、加盟国主導の交渉委員会が2025年と2026年に交渉し、最終文書と初期的議定書を2026年9月の国連総会に提出することを提案している。初期的議定書については、枠組み条約と同時に交渉され、枠組み条約の交渉終了後6カ月以内に議定書の交渉終了を目指すとしている。
(注)欧州連合(EU)をはじめ、米国や英国などは、OECDで合意された税制措置を覆すような枠組み条約を支持しない、と表明している。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2024年8月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
その他、海外税務ニュースを含む当法人発行ニュースにつきましては、https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/member/tax/tax-news.htmlをご参照ください。
本ニュースは、各国の税制改正の動向をお知らせする目的で、各国のPwCが作成する速報ニュースや各国省庁等のホームページ掲載の情報等を翻訳してお伝えしています。税制改正案の段階の情報が多いため、最終的な法制度につきましては、専門家にご確認くださるようお願いいたします。
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