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いま、多くの企業がサステナビリティや脱炭素社会への向き合い方を考えるにあたって、これを機会としてソーシャルビジネスの創出と、投資家たちに対するリスクの低減に力を入れています。企業によっては「攻めと守り」という言い方をしています。そしてその「攻めと守り」について検討する際、一部の企業では敢えていつもの業務環境と異なる空間に社員を集め、ワンショットでのワークショップでアイディエーションを行い、必死にビジネスのアイデアを生み出そうとしています。
しかし、何らかのヒントを得たとしても、アイデアを作り上げるところまではなかなかいきません。アイデアを1つの形にしていく工程はとても苦しく、泥臭いものです。毎日検討を重ね、仲間との熟議を通して形作られていくものです。
本稿では、アイデアの「芽」を持っている人、あるいはもう少しでその「芽」の輪郭が見えきそうなところまできている人が、そのアイデアをどうやってあたためていったら良いかを考察します。
あなたがあるアイデアについて毎日考え続け、その考えがある程度まとまってきたところで信頼できる人に相談するとします。その際の代表的な返答は「社会に良いことは分かるが、マネタイズできるのか」との指摘です。あなた自身も、マネタイズモデルができあがっていないことを認識しているため返答に窮してしまうというわけです。
是が非でも取り組みたいアイデアを育てている過程で、このようなコメントを直球で受けたとき、どうすれば良いのでしょうか。
アイデアをあたためて事業化を目指すからには、社内起業の場合は自社への還元や本業とのシナジーを考えなければいけません。
また、ソーシャルイノベーションを起こすには、経済性だけでなく社会的インパクトも追求するモデルでなければなりません。また、いま対峙しているクライアントのニーズやリクエストに応えるといった応答的なものではなく、社会を起点に自律的に課題を特定し、解決方法を編み出していくことが求められます。社会課題は広範なため、自ずと取り組む期間も中長期にわたります。よって、短期で収益を上げるというよりも、中長期的な視点で地道に収益と社会的インパクトを創出していくことが、ほぼ大前提となります。
ソーシャルイノベーションの創出にはこのような特徴があるため、アイデアを形作ること自体難しいのですが、マネタイズモデルを作ることはさらに難しいと言えます。この2つの完成度を同時に高められる人は、ほぼいないと思った方が良いでしょう。
したがって、「社会に良いことは分かるが、マネタイズできるのか」と言われた時、「それは今考えています。まず、アイデアについてご意見をください」と切り返すのが良いと思われます。アイデアを調整しつつ、3年後のビジネスの絵姿を描いていく中で、マネタイズモデルのヒントが見えてくることも往々にしてあります。
「アイデアを聞いてもらう、いわゆる壁打ち相手は、どのような人にお願いするのが良いのでしょうか」という質問をよく受けます。筆者は、前向きに建設的な意見を言ってくれる人が良いと思っています。特に、アイデアを検討している初期段階では、自分でも自分が何を言っているのか分からなくなる時があります。「結局、何がしたいのか」と言われても、即答できないぐらい頭の中がぐちゃぐちゃしている時にネガティブな意見を言われたら、継続検討ができないぐらいに落ち込んでしまうかもしれません。したがって、ポジティブな反応をしてくれる人、もっと良くなるための意見を遠慮なく言ってくれる人、自分のこんがらがった頭の整理に付き合ってくれる人に話すのが良いです。
この「最初に話す人」を間違えてしまったがために、イノベーションに富んだアイデアが芽吹かずに、途絶えてしまった――。こういった例は多いのではないかと思います。特に、初期段階のアイデアは論理的な合理性に欠けるケースが多いため、ロジックを追求されてしまったら、ほとんどのアイデアがボツになってしまうのではないでしょうか。
デザイン思考や右脳思考など色々な言われ方をしていますが、まずは「社会課題が解決した先にある社会は、こんな状態だったら良い」というデザインやイメージを描くところから始めましょう。そして、そのデザインやイメージの解像度を上げていく過程で、論理的合理性やロジックを埋め込んでいき、デザイン的にもロジック的にも、成り立っている状態に仕上げていくというプロセスを採用するのが良いです。
自分にしかできないことを探し、見つけ、作り上げたりしても、実際にそのアイデアを形にするために動かしていくには、相当大きな力が必要です。仲間が見つかったり、協力者が動いてくれたりといったうれしい場面もあるでしょうが、実際には、幾多の抵抗や非難、挫折に耐えて、それでもなお雑音に惑わされずに集中力を保って、先頭に立って進んでいかなくてはなりません。
着実に前に進むために、自分自身へのコミットメントが必要になります。自分のアイデアにコミットメントをするということは、そのアイデアに対して自信を持つということに他なりません。
その際、アイデアが正しくできているということだけでは限界がきます。「このアイデアを、どうしても試してみたい」という気持ちを大切にすることが大事です。なぜなら、正しいというロジックを重視する場合、どうしても否定されてしまう時がくるからです。特に社会課題の解決に取り組む場合には、経済合理性が十分に伴わないケースが多いため、現状における経済社会で使用されているロジックでは、否定されやすい傾向があります。その時に「これは正しい」と言うだけでは立ち行かなくなるので、「このまま放置していてはならない」「これをやったらきっともっと興味深いことが見えてくるはずだ」という気持ちを合わせ持っていれば、多少の抵抗には惑わされずに集中力を維持することができます。
従来の仕事の進め方には、緩急の波や定常・非定常業務の分量の違いこそあれ、一定のリズムがあるものです。ある程度決まったタイミングでQCDなどの報告を行い、いつどのような作成物を提出するかもおおよそ決まっています。緊急事態が発生したり、成果物が適切な品質に達していなかったり、クライアントとのコミュニケーションに齟齬があったりと、いろいろなトラブルが起きることはありますが、納期に向けて着実に進めていくことがミッションとなっています。
一方で、イニシアチブを進める上での一番の難しさは、そもそもそのイニシアチブのど真ん中にいる当の本人ですら、進んでいるのか進んでいないのか分からなくなることにあります。あるいは、後退している可能性を感じて、突如として強いプレッシャーを抱えてしまうこともあります。上手くいっていたはずのことも、想定外のことが発生し、1日にしてゼロリセットされたりすることもあります。「私はこの数カ月、何をやっていたのだろう」と絶望的な気持ちになるかもしれません。
そんな折に、そこに周囲から「進んでいるのか」「早く全体観を見せてほしい」と聞かれると、困り果ててしまいます。
しかし、コミットしたからにはやり遂げたいはずです。その際に求められるのが、このいかんともしがたい状況に対処して耐える能力。明快な答えが簡単に出せない状況下においても事実の解明を急ごうとせず、不確実さの中に身を置くことができる能力。先行きが分からず、良くなるのか悪くなるのかもわからず宙ぶらりんの状態に耐える能力――。これらの能力は「ネガティブケイパビリティ」と呼ばれており、新しい取り組みをやり遂げたければ、この能力を自己開発しなくてはなりません。
創造力をいかんなく発揮するためには、ユーモアは大切です。ユーモアがあると、言いにくいことが言いやすくなります。大切にあたためてきたアイデアや意見を周りに伝えて「どういう反応があるだろうか…」と気にしすぎなくていい安心感があると、大胆な発想の転換を図り、リスクにも挑む勇気が湧いてきます。すると、不思議とストレスにも対処できるようになってきます。
八方ふさがりなときにこそ、ユーモアでネガティブな雰囲気を吹き飛ばし、型破りなやり方で難局を乗り越えていきたいものです。