宇宙ビジネスとスマートシティの結節点

2021-10-05

地に足が着くようになってきた宇宙ビジネス

民間企業による宇宙船の開発が進み、民間人のみが搭乗する宇宙船による宇宙旅行が現実のものとなるなど、人々にとって「宇宙」がより身近なものになっています。

これまで衛星データや通信を活用したサービスは、研究機関や公共機関、一部の民間大手企業による利用に限られていました。しかし、衛星技術や通信技術の発展に伴って、これらのサービスは宇宙旅行ビジネスと同様に幅広いユーザーに向けて数多く提供されるようになってきており、誰でも活用することができる「宇宙ビジネスの民主化」とも言える状況になってきています。特にリモートセンシング技術の発展と浸透により、人工衛星に搭載された赤外線やマイクロ波などの各種センサーにより、地球の表面を長時間かつ広範囲にわたって観測することが可能となるなど、衛星データの利活用が大きく注目されています。

宇宙ビジネスの全体像

一般的には宇宙ビジネスは以下の4分野に分類されます。

  1. 輸送産業:地上から発射するロケットや衛星、宇宙ステーション間の補給や物資輸送
  2. 宇宙科学・探査:有人・無人探査、対宇宙・惑星観測衛星
  3. 衛星測位・放送・通信:GPS測位、衛星放送・通信
  4. 衛星リモートセンシング

「輸送産業」と「宇宙科学・探査」の分野はまだまだ学術的な用途や研究・開発分野の取り組みに限られていますが、「衛星測位・放送・通信」や、上述の衛星データの利活用を含む「衛星リモートセンシング」には民間企業の参入が多く、活況を呈しています。この衛星データの民間分野における利活用を積極的に進めるべく、欧州のCopernicus(コペルニクス)、日本の経済産業省がサービスを提供するTellus(テルース)のように、衛星データを扱うプラットフォームが設立されており、クラウド上のプラットフォームで衛星データを誰もが簡単に扱えるようになってきています。

衛星データは単独での活用は勿論ですが、他のデータとの組み合わせによる幅広い分野への活用が見込まれており、

  • 自動車・貨物車両の走行および駐車状況を衛星で把握することによる物流監視
  • 建設現場の作業状況の把握および監視
  • 農場の耕作および生育状況の把握、災害時の被害予見と分析

といった領域での活用が期待されています。

宇宙ビジネス×スマートシティ

衛星データの活用は、スマートシティにおいても期待されています。具体的な活用方法としては、都市の中心部から周辺部まで広範囲にわたって観測することで、人流および物流を解析して最適な交通計画や物流網を形成する、鉄道路線の老朽化や道路の歪みなどを検出してインフラの安全性を向上、都市に再生可能エネルギーを供給するための太陽光パネルの最適な設置場所を算出する、天候データなどを含めた発電量を最適化といったことする、といったことが考えられます。

また、スマートフォンのアプリから得られる位置情報、小売店や商業施設が保有する購買情報、自治体が保有する各種オープンデータなどを衛星データと併せて複合的に分析・解析することで、都市の発展とともに複雑化するさまざまな課題を、地上からの視点だけではなく、衛星を活用した「宇宙(そら)の目」から見てみることで解決することができるかもしれません。

宇宙ビジネスに関連する詳細につきましては、宇宙ビジネス向けコンサルティングをご覧ください。

執筆者

中林 優介

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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