「2030年のIT/DX部門を語る」第2回:今後のIT組織・DX組織の在り方、体制、位置づけに関する見解

2022-08-02

 IT組織・DX組織が持つべき役割は?

今後企業が事業の成長を加速させていくためには、事業部が独自のシステムを導入することは避けて通れません。IT組織はそのために経営や事業に寄り添い、新しいテクノロジーを迅速に導入できるようにサポートする必要があります。

また、誰もがテクノロジーを最大限に有効活用し、迅速かつ快適に業務を遂行するための環境を整備し、ナレッジを提供することも求められます。

これらの実現のために、IT組織・DX組織が果たすべき役割として、以下の6つが挙げられます。

1. テクノロジー戦略

役割
テクノロジーの活用方針と、時代の変化や経営および事業の期待に応えるための戦略を策定すること

役割の必要性
企業全体のテクノロジー活用を促進し、ビジネスにおける競争力維持や優位性向上のため、全社的なテクノロジーの活用方針を定めます。また、経営や事業に応えるための戦略を策定し、実行します。

役割遂行における留意点
テクノロジーの活用方針は、経営戦略、事業部の動向、社会環境の変化、IT/DXのトレンドなどをもとに策定します。

また、戦略を策定した後も、そこに頑なにこだわり続けるのではなく、その時々の状況に応じて柔軟に見直すといった姿勢が求められます。

2.テクノロジーガバナンス

役割
全社・全グループのテクノロジーに関するガバナンスを有効にすること

役割の必要性
社会的な信頼を失うことなくテクノロジーを活用していくためには、全社・全組織にテクノロジーに関するガバナンスをしっかり効かせていく必要があります。

役割遂行における留意点
事業部による開発やクラウドをはじめとする外部資源の活用が積極的に進む、ということを前提としたガバナンスを整備します。

また、リスクの抑制だけに比重を置くことなく、ポートフォリオアプローチなどを用いてリスクとリターンのバランスを図ります。

3.ソリューションの提案

役割

事業部に対して、テクノロジーを活用したソリューションを提案すること

役割の必要性

テクノロジーを活用したビジネスの検討を促進するため、自社の課題に向き合い、事業部のDX推進を技術的な側面からリードします。また、部門を跨いだ連携を促し、社外との連携や協業(エコシステム)も積極的に推進してきます。

役割遂行における留意点

ITやDXに関するトレンドに高い感度を持ち、自社での活用をいち早く検討していきます。先進企業や競合他社と自社の状況を比較検討し、自社のビジネスにおいて最適なテクノロジーの活用シーンを社内に共有するなど、ソリューション活用を提案したり、そのための相談を受けたりします。

4.システムの開発・運用

役割

既存システムの開発や、安定運用を行うこと

役割の必要性

IT部門が開発・運用してきたシステムについても、引き続き安定的に利活用することが求められます。また、DXの一環で事業部が導入したシステムであっても、部門横断的に活用する場合には開発や保守を一手に請け負い、効率化を図ることが求められます。

役割遂行における留意点

自前のサーバやネットワークなどのプラットフォームは保持せず、PaaSやIaaSなど、積極的に外部サービスを活用します。また、ノンコアシステムはSaaSを活用して独自のシステムは極力削減し、一部の基幹システムなどに限定して開発・運用を行います。空いたリソースは、DXなど新しいテクノロジーを活用する領域にシフトしていきます。

5.社内インフラ環境の整備・提供

役割

業務の効率化および高度化を実現するIT環境を整備・提供すること

役割の必要性

社員が新しいテクノロジーを活用することによって自社の競争力を向上させ、生産性の高い業務を遂行できる環境を整備することが必要です。

役割遂行における留意点

RPAやBI、ノーコードツールなどのDX技術を社内インフラとしていち早く導入します。

6.テクノロジーリテラシーの向上

役割

全社員のテクノロジーリテラシーを高め、一定レベルに保つこと

役割の必要性

所属組織に関係なく、競争力強化や生産性向上のため、全ての社員が一定程度のITやDXのスキルを持つ必要があります。

役割遂行における留意点

テクノロジーに関する専門性やトレンドを踏まえて、テクノロジー人材の育成計画を策定し、実行していきます。

IT組織・DX組織の組織体制は?

クラウドをはじめとする外部リソースの活用が拡大し、新しいテクノロジーが次々に導入されていくことを前提に体制を整備します。例えば、工程やシステムごとに組織を作るのではなく、機能や役割に合わせて全社のフォーメーションに組み込みます。

なお、ビジネスに直結するDXの実現を担うチームにはスピードが求められることから、事業部門内に配置します。

今後のIT部門・DX部門の 在り方、体制、位置づけに関する見解

Point1. 「テクノロジー戦略・ガバナンス」のCoE化

全社でテクノロジーの戦略やガバナンスの整合を図るため、戦略やガバナンスの役割を担う組織は経営直下に配置し、全社のCoE(センター・オブ・エクセレンス)として機能させます。

Point2. 事業部門でDXを促進しているメンバーとの連携

IT組織は、企業の競争力強化をDXにより加速させるために「会社から望まれること」や「事業部が取り組みそうなこと」についての対応方針を定めるなど、一手先を読んで活動していく必要があります。そのためには、事業部門内でDXをリードしているメンバーとの連携が鍵となります。

IT組織・DX組織が変化するために経営層がすべきこと

CIOを含む経営層は、現在のIT組織をレガシーシステムのお守り役として機能させるのではなく、テクノロジーがさらに進展した未来においても活躍できる組織に作り替えていく必要があります。

そのためには、IT組織・DX組織への期待やミッションを明確化し、全社に浸透させることが重要です。また、新たな役割に見合うチャレンジを推奨し、イノベーションにトライして失敗したとしても、それを許容できる企業風土および制度を整えていくことが求められています。


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執筆者

野口 杏子

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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高梨 道子

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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