
税務ガバナンス対応支援コラム―企業の税務オペレーションを円滑に進めるためのヒント 第12回:選ばれる税務部門への変革に必要なこととは
昨今の人材不足の中で、徐々に管理部門への人材配置が厳しくなっているなか、税務部門の業務運営に対する危機感が増しています。「社内外の優秀な人材を税務部門に確保するために、何をどうすればよいか」を解説します。
国内外の法制度改正などにより、税務申告対応の複雑化・高度化が見込まれています。企業においては、法令遵守としての納税申告対応に加え、さまざまなステークホルダーへの税務情報の開示など、新たな社会的責務に対応することが求められています。こうした対応にあたり、企業の税務部門には税務テクノロジーの活用を含めた体制整備や税務人材のリソース確保などを早期に検討することが求められています。
「税務ガバナンス対応支援コラム―企業の税務オペレーションを円滑に進めるためのヒント」の第7回は、事業経営において投資やアウトソースで生じるコストの妥当性を検討するアプローチについて、PwC税理士法人の白土晴久が解説します。
日々、事業経営を行っていくうえで、「新規投資するか」「業務をアウトソース(外注)するか」といった検討や議論を経験したことのある方も多いと思います。
私たちは税の専門家として、クライアント企業に向けて、税に関するシステム投資や税務業務のアウトソースに係るサービスの提案を日々行っています。企業の皆様がその検討を行うにあたっては、投資や提供サービスの内容はもちろんですが、それに伴って生じるコストが妥当かという点は重要なポイントとなります。
この「コストが妥当か否か」には大きく2つの考え方があると思います。1つは、中長期的な視点から、投資やアウトソースの導入が現在の運用で生じている費用を低減する効果があるかです。これはコスト削減アプローチに基づく意思決定です。
もう1つは、投資やアウトソースにより、社内の人員をはじめとする経営資源を他の業務に振り向けることで、追加コスト以上にベネフィット(業務の付加価値やキャッシュフローなど)を生み出すことができるかです。これは機会コスト評価アプローチに基づく意思決定です。
こうした2つの考え方を単純化すると、前者はキャッシュアウトを減らせるかを検討するアプローチです。後者はいかにキャッシュ(便益)を生み出すかを検討するアプローチです。実際に私たちがクライアントに提案する際、多くの場合は前者のアプローチが検討されています。
日本企業の課題として、技術革新の創出や賃上げなどが長年議論されていますが、その背景にはこうした経営における検討のアプローチがあるかもしれません。すなわち、コスト削減アプローチでは(全てがそうではないものの)コスト削減を優先するあまり、リスク回避的、活動縮小的な傾向になる恐れがあるからです。また、少子化・人材不足が深刻化している日本社会では、限られた人員でいかに事業を伸ばすかが課題であり、今後は、必然的に機会コストを意識せざるを得ないかもしれません。
また、アウトソースで外部人材を活用するということは、外部のノウハウを活用して協働する、という提携(アライアンス)の要素も出てきます。こうしたアライアンスにより追加的なベネフィットが生じる可能性があります。一方、人材不足、働き方の変化、転職の一般化、突然の休職などにより、これまでの業務運営のリスクやコストが高まっていくことには注意が必要です。
本コラムシリーズでは、これまでに税務部門のKPIについて触れたことがありました(参照先:「第5回:税制改正と税務チームのKPI―優遇税制の社内提案のポイント―」)。今後は、より機会コストを重視し、業務の革新的な変化を生み出すような組織目標を設定する必要があるのではないでしょうか。
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