卒業生インタビュー

楽天グループで経理業務の変革を目指す 楽天グループ株式会社 主計部ジェネラルマネージャー
楽天トータルソリューションズ株式会社 取締役副社長/CFO
公認会計士 谷 淳一 (インタビュー当時)

PwC Japanグループでキャリアを積んだ後、新たな道を切り拓いて活躍している卒業生がたくさんいます。どのようなスキルや経験が、その後の仕事に生かされているのでしょうか。プライスウォーターハウスクーパース税務事務所(現PwC税理士法人)卒業後に楽天グループで活躍し、子会社の経営とグループの経理業務の変革に取り組んでいる谷淳一氏に、現在の仕事に生きているPwC時代の経験と今後の展望について語ってもらいました。

自身のさらなる成長と税務戦略構築のために楽天グループに入社

私は楽天グループ株式会社(以下、楽天本社)で主計部長を担っていますが、2023年に設立されたばかりの楽天トータルソリューションズ株式会社(以下、RTS)の取締役副社長兼CFOも務めています。

RTSは楽天モバイル株式会社(以下楽天モバイル)からいくつかの事業を移管して設立された法人です。移管された事業内容は、主に全国の楽天モバイルショップの運営、携帯基地局の置局・保守、カスタマーセンターの運営などのカスタマーサービス(以下CS)の3つです。そして、楽天モバイルから上記3つの機能を継続受託するとともに、楽天グループの歩みの中で培われた営業力、店舗販売、CS、クリエイティブ、そしてITの力を組み合わせ、楽天グループ内のみならず、楽天グループ外のお客様にもご満足いただける高付加価値のサービスを提供することを目的として設立されました。

私が楽天に入社した理由は、さらなる成長を目指したいという気持ちとタイミングでした。プライスウォーターハウスクーパース税務事務所に入所後、幸いにもさまざまな経験をさせていただきましたが、税務アドバイザーとしてクライアントに尽くす業務は一通りやりきり、自分の成長に行き詰まりを感じ始めていました。その折、楽天が税務のポジションで働く人材を探していると知人から聞きました。当時、楽天はプロ野球への参入や民放テレビ局の買収案件などで話題性があり、インターネットショッピングで急成長している勢いのある企業という認識でしたが、税務戦略の構築を模索していたようで、人材を探している、ということで誘われたのです。

興味が湧いて面接させていただいたところ、お会いした楽天の担当者からタックスプランニングを強化したい、ぜひ入社して集中して取り組んでほしいという打診がありました。企業も個性的ですし、社内における税務ポジションも第1号。自分の成長のためによい環境だと魅力を感じ、2007年の夏に入社を決めました。

ピンチに動揺しないメンタルと、難解な資料を解釈するスキルを習得

私は大学卒業後に就職した会社を辞めて、専門学校に通いながら会計士試験の勉強をしていました。当時、一緒に学んでいたのは主に大学3~4年の学生たち。30代に差し掛かろうとしていた私は、仮に同じタイミングで監査法人に就職したとしても、歳の差がネックとなり最終的なゴール地点で負けてしまう気がしました。そこで皆が選ばないであろう税理士法人を就職先として検討しようとしていたところ、プライスウォーターハウスクーパース税務事務所の募集を見つけました。

面接で説明を聞いているうちに、税務の方に完全に心が傾いていきました。税理士法人であれば、企業買収に関わるタックスプランニングといったスケールの大きい仕事に早いうちから関われると感じたのです。

1999年から2007年までのPwC時代はハードに働いた日々でしたが、なかでもニュースで連日報じられるような大型の事業再生案件に深く関わったことが忘れられません。会計士になった甲斐があった、自分の選んだ道に間違いがなかったと誇らしく思っていました。

いずれも、経営を立て直すために調査対象企業の課題がどこにあるかを調べるデューデリジェンス案件でした。調査する内容は事前に明確に定められていたわけではなく、頭をフル回転させて問いと答えを探す日々でした。大きな案件となると報酬も多額で、調査結果にとても重い責任が生じます。クライアントに不利益をもたらすような見落としがないか、常にプレッシャーと対峙していました。また調査対象企業の関係者から的確な回答を引き出すために多くの知識を身につける必要があり、その状況が自分を高めるモチベーションにもなっていた気がします。

PwCで得たものの一つはメンタルの保ち方です。PwC時代は冷や汗をかくような窮地を何度も経験し、その中で最良でなくても最善の解を見出す努力をしてきましたので、トラブルをそれほど怖れることはなくなりました。ピンチであっても「最終的になんとかなった」という経験をたくさん積んだことで、どこに着地すべきかを見定め、その着地点に向けて動けるようになりました。

またPwC時代には、難解な文献や資料を読み込んだり解釈したりするスキルも磨かれました。税務は厳格な法律によって縛られています。税法は一語一語が厳格な意味を持っていて適当に読むことができません。楽天では日本の会計基準、IFRS、会社法、その他各種事業を規制する法規制に触れることになりましたが、ある程度自力で読み理解・判断できたのは、仕事を進めるうえで、また、仕事のクオリティを高めるうえで、大きな武器になりました。

PwCで得た最たる財産は仲間

他の会計事務所ともお付き合いがありますが、PwCの方々は比較的柔軟でスマートだと感じます。最初から物事を決めつけることがなく、論点の角度を変えたい時にもすぐに対応できる方が多いと思います。またクライアントが望んでいることを実現するために突き詰めていくスタンスは、私が在籍していた時と変わらない印象です。

そして最大の魅力は、若い人材が活躍していることではないでしょうか。数年で成長し、社内外で活躍している後輩たちをみると、とてもうれしい気持ちになります。

さまざまなスキルもさることながら、私がPwCで得た最たる財産は仲間です。特に同期の仲間とは、今でも深いつながりがあり、頻繁に情報交換をしています。

プロフェッショナルを語れることこそプロフェッショナル

これから自分が目指していることとして、楽天グループと言えば、ITだと思いますので、率先してDXに取り組み、グループの模範となる経理業務を構築し、グループ内外へのサービス提供の道筋もつけたいと思っています。

楽天にはおよそ70のサービスがあり、一口に経理と言ってもさまざまなアプローチが求められていますが、昨今生成AIや、新しいテクノロジー・ツールが数多く登場し、毎年のように進化しており、経理業務も大きく変わっていくことでしょう。人間が単純作業に縛られる時代はなくなるはずですし、そうしなければならない。その前提に立つと、これからの経理人材に求めるクオリティやスキルも大きく変わる必要があります。

大企業の場合、経理のシェアードサービスを提供する機能を子会社に集約しているケースがみられ、一貫したやり方、クオリティで経理業務を遂行しています。楽天においても、新しく立ち上がったRTSがその位置づけの会社になれるはず。楽天本社からも背中を押していただいているので、DXの一層の推進、目的意識を持った人材育成、全体的な組織の在り方などを見直しながら理念を実現していきたいです。10年先を見越した経理業務の新しい形を作ってから引退したいと思います。

私は「プロフェッショナル」という言葉がとても好きです。そしてプロフェッショナルの定義は「『プロフェッショナルとは何か』を語れる人」だと考えています。誇りを持ってこだわりを突き詰めてきた人は誰しも、自分の言葉で仕事の本質を語ることができます。

私が思うプロフェッショナルの共通点は、ソリューションを生み出すことができる人です。「起こったことに対してどうしよう」と受け身になるのではなく、「こうありたい。こういう結果が欲しい。そのために今何をすべきか」と主体的に思考錯誤を繰り返す日々が、プロフェッショナルにつながる道となるでしょう。

これからプロフェッショナルファームに就職される方々にはさまざまな選択肢がありえると思いますが、どのような仕事を選ぶにしても、こだわりを突き詰めるプロフェッショナルを目指してほしいというのが私の願いです。プロフェッショナルを目指す上で、成長機会が豊富なPwCは最適な環境だと思います。主体的に機会を求めて、自分の成長の糸口をしっかりと掴んでください。

PROFILE

谷 淳一

楽天グループ株式会社 主計部ジェネラルマネージャー
楽天トータルソリューションズ株式会社 取締役副社長/CFO
公認会計士

早稲田大学政治経済学部を卒業後、一般事業会社を経て、1999年、プライスウォーターハウスクーパース税務事務所(現 PwC税理士法人)に入所。
国内外のクライアントに対し、M&A、国際税務、連結納税等に関する税務コンサルティングを提供。
2007年、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社。
当初は税務戦略に特化し、その後楽天単体・連結の決算・開示も担当。
2023年より楽天グループ株式会社主計部長に加え、楽天トータルソリューションズ株式会社取締役副社長CFOに就任。

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