次世代女性リーダー育成プログラム「Design Your Future」を開催~女子中高生が、デザイン思考を使って社会課題の解決に挑戦!~

2019-09-18

日本に持続可能な成長をもたらし地域コミュニティを活性化していくうえで重要なことの1つが、次世代を担っていく女性リーダーの育成です。そのために、PwC Japanグループと一般社団法人スカイラボは、女子中高生を対象に女性STEAM1リーダー育成プログラム「Design Your Future~デザイン思考で未来を描こう」を共同で開催しました。ワークショップに参加した女子中高生は、2019年7月23日(火)~25日(木)の3日間、東京・大手町にあるPwCの最先端イノベーション施設「PwCエクスペリエンスセンター」に集い、持続可能な開発目標(SDGs)に関連する国内の社会課題に対して、デザイン思考を使って解決案を考える取り組みに挑みました。PwCがなぜ今、このようなプログラムを開催するのか、その詳細をお伝えします。

「Society 5.0」に向けて、次世代を担う人材を育成するために

「Design Your Future」は、PwC Japanグループ(以下、PwC)と、トロント大学マンク国際研究所准教授(元スタンフォード大学教育学部講師)の木島 里江 氏が代表を務める一般社団法人スカイラボ(以下、SKY LABO)が協働して実施する、女子中高生を対象にした次世代女性リーダー育成プログラムです。SKY LABOはスタンフォード大学で博士号をとった女性3人が創業した非営利の教育機関であり、Science・Technology・Engineering・MathematicsからなるSTEM領域に、人文領域(Arts)を加えた「STEAM教育」を推進し、次世代のイノベーション人材の育成に取り組んでいます。

「Design Your Future」では、SKY LABOがスタンフォード大学教育学大学院のファカルティーとともに独自に開発したカリキュラムをベースに、日本でもここ数年注目を集めている「デザイン思考」を学びます。現場で活躍するPwCのコンサルタントとSKY LABOのデザインコーチたちが、女子中高生からなるチームをファシリテーターとしてサポートします。プログラム講師は米国から招聘したデザイン思考の専門家たちで、参加者は英語でデザイン思考を学び、最終日には英語で自分たちのアイデアをプレゼンします。都内の女子校に通う12歳~18歳の中高生21名が参加者としてチャレンジしました。

「Design Your Future」の開催にあたり、PwCでCorporate Responsibilityリーダーを務める森下 幸典は、その意義と目的をこう述べています。

「PwCのPurpose(存在意義)は『社会における信頼を構築し、重要な課題を解決すること』です。そのため、私たちの武器である『知』を生かして、日本社会のためにできることを問い続けています。人口減少が進む中で、生産性が高く国際競争力のある人材を育成することはまさに重要な課題です。そこで、私たちがクライアントとともに取り組んでいるデザイン思考による課題解決を、学生の皆さんにも体験していただきました。このようなPwCの専門性を生かしたプログラムは、社会からのPwCへの期待に応える活動であり、私たちのビジネスにも中長期的によい影響を与えると考えています」

女子中高生を対象にしたことについては、第一に「STEAM領域に関心を持つ女子の裾野を広げたいと考えている」とのこと。PwCの調査2によると、テクノロジー領域に興味を抱く女子が少ないことが明らかになっています。この点についてSKY LABOの木島 氏も「STEAMは女性よりも男性の方が向いているというステレオタイプが、学校にも、それぞれの家庭にも、そして社会にもいまだに多く存在しています。特に日本は、科学や数学のテストのスコアにおけるジェンダーギャップがOECD諸国の中で最も大きい国として知られています」と指摘します。

さらに森下は、「AIと人間が共存する時代において、STEAM領域で活躍できる女性を増やすことは、経済・社会全体を活性化させるために必要不可欠です。今回のようなファンダメンタルな機会を通じて、STEAM領域で活躍する女性人材が育ち、『Society 5.0』の時代に1人でも多くの女性リーダーが活躍してくれることを期待しています」と続けます。

デザイン思考とは何か? 実際にSTEAM教育を体験

「Design Your Future」では、デザイン思考を用いたSTEAM教育の体験プログラムの中で、SDGsに関連する課題を考えるというワークショップを行いました。例えば、SDGsの目標4.「質の高い教育をみんなに」を達成するために、「未来の教育」とは何かをデザイン思考を使って考え、チームが発案したアイデアを最終日にプレゼンします。

「デザイン思考」とは、シリコンバレーにあるデザインコンサルティングファームの創業者で、スタンフォード大学の教授でもあるデイビッド・ケリー 氏らが考案した、イノベーション創出につながる発案メソッドです。サービスや製品を使う人、すなわちユーザーを中心に考える方法論であり、「人のニーズ、テクノロジーで実現可能なこと、そしてビジネスが成功するために必要な条件という3つの要素を統合した、デザイナーがよく使う手法」と定義されます。

プログラムでは、そもそも課題の本質がつかめていなかったり、すぐには解決できなかったりといった「SDGsに関連するチャレンジ」に取り組みます。木島 氏は、「まだ誰も考えたことのない解決策を探っていくプロセスで、自分たちの固定観念から離れて奇想天外なアイデアをひねり出すためにも、デザイン思考というメソッドはとても有効」だと述べています。

デザイン思考で優先されるのは、徹底的にユーザーを優先して人間を中心に発想していくという姿勢です。「実現可能なこと」や「やらなければいけないこと」に束縛されずに、「その人のニーズが何なのか」を探り、チームで協働しながら発案していくことです。このデザインチャレンジに取り組むにあたり、あらかじめ6本のテーマが用意されました。

このラインナップについて木島 氏は、「PwCのようなグローバルな企業がかかわっている案件からテーマを提案していただいたので、実にバラエティに富んだ内容になったと思います。実際に世の中で起こっている問題をデザインチャレンジとして設定できる点においても、協働のメリットを感じました」と述べていました。

ワークショップでは、参加者たちは4人一組のチームに分かれて、インタビューの仕方を学びます。労働力不足への対応に取り組む企業の方や、育児中、介護中の方など、設定された課題に近い取り組みをしている方々がユーザーとして参加します。中高生たちは「普段どのような生活・取り組みをしているか」「今どんなことに困っているか」など、ユーザーを知るための質問を重ねていきます。

その後、チームごとにブレーンストーミングしてアイデアを出し合います。女子中高生たちにとって「自分がつくりたい」モノをつくるのではなく、徹底的にユーザーの気持ちに寄り添って発案するという挑戦は、決して簡単なことではありません。アイデアを絞ったところで、今度はそのアイデアを形にするために、プロトタイプづくりを経験します。各チームとも、作成したプロトタイプをユーザーに紹介してさらにフィードバックをもらい、2日間にわたってテストと改良を繰り返した後、最終日のプレゼンに臨みました。

プロトタイプを英語でプレゼン。自分たちのアイデアを世界に向けて発信するという女子中高生の自信につなげる

いよいよ、最終日のプレゼンです。チームごとに全て英語でプレゼンを進める参加者たちの表情は、初日とは明らかに違います。

「未来の教育」をテーマに取り組んだチームは、学習者1人1人の興味や関心にフォーカスをおいて主体性を大事にしながら学べる環境が重要だとして、生徒同士や教員とのインタラクティブな学びを実現するための新しいスマートデバイスを提案しました。最新のデジタル技術とコミュニケーション手法を用いつつ、楽しみながら学べる手段を考えていこうという提案は、まさにSTEM+Aのアウトプットがなされた形です。「訪日外国人」をテーマに取り組んだチームでは、寸劇方式でストーリー仕立てのプレゼンを行うなど、アイデアを伝えるための工夫を凝らしていました。

プログラム初日には「英語が聞き取れるかどうか不安」と心配そうな表情を浮かべていた女子中高生たちが、講師たちから発せられた質問にもひるまず自分たちの考えをしっかりと英語で述べようと果敢にチャレンジする姿に、知識や経験をどんどん吸収していく潜在的な、大きな可能性が感じられました。

参加した女子中高生からは「ユーザーへのインタビューが大変だったけれど、相手に興味を持って話を引き出す方法などを学ぶことができて有意義な経験でした」「英語がまったくわからずどうなることかと思いましたが、最終日にはみんなの言っていることが大体わかってきて、自分でもリスニング力がずいぶん向上したと感じました」「問題を解決するときに、自分がこうしたいということと、相手がこうしてほしいということが必ずしも一緒ではないことを知ることができてよかったです」「大人や、年上の人たちが大勢いる中で、物怖じせずに自分の意見を言えて自信になりました」など、充実感に満ちた声が多く聞かれました。

引き続きパートナーシップを続けながら、女性活躍推進に取り組んでいく

3日にわたった「Design Your Future」を終え、木島 氏に日本の女子中高生の印象、今後のPwCとのかかわりについて聞きました。

「米国の同年代の女子に比べるととてもシャイで、自分の意見を述べることに躊躇する人が多いとは感じました。ですが、このような場で発信する機会を与えられ、大きな自信をつけたのではないかと思います。さらに、勤勉さ、手先の器用さ、哲学的で創造的な面といった日本人だからこそのよさが、最終プレゼンではいかんなく発揮されていたと思います。チームで協力しながら枠にとらわれない発想をすることの楽しさを実感してもらえたのではないでしょうか。今回のプログラムを通して、女子中高生のマインドセットに影響を与えることができたと実感しています。そこから先、企業活動や国の政策立案という、より高いレベルでの女性のリーダー育成については、世の中を変える力のあるPwCが発展的に影響を与えていってほしいと期待しています」

PwCの森下は、「女性リーダーの育成は、国家の人材育成戦略として長期的に取り組まなければなりません。女性活躍を阻む要因として、幼少期からのアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)による機会の不平等により、女性の潜在力が充分に引き出されていないということがあります。彼女たちの可能性を最大限に引き出せるように、既存の仕組みやシステムを変えることが必要だと感じています。SKY LABOとも、引き続きパートナーシップを続けながら、ぜひその可能性を探っていきたいと考えています」と述べています。

PwC Japanグループでは、今後もクライアント企業や教育機関、自治体などとのコラボレーションを加速させ、10年後、20年後を見据えて、国際的に活躍できる女性リーダーを育成する取り組みを行っていきます。

注釈

1 Science 科学・Technology テクノロジー・Engineering エンジニアリング・Mathematics 数学にArts(芸術・デザインといった従来のアート領域に加えて、哲学・文学・歴史・文化人類学といったリベラルアーツを含む)を加えて提唱された教育領域

2 PwC UK調査レポートWomen in tech Time to close the gender gap report[English][PDF 1,037KB]

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