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世界遺産の保護、宣伝、活用:英国における遺産事業

John Hoy氏

Blenheim Palace CEO/英国/ブレナム宮殿

Blenheim Palace(ブレナム宮殿)は、英国および世界遺産の中で最も荘厳な建築物の一つです。この建物は、初代マールバラ公爵の戦勝を祝って建設され、300年後の現在も第12代公爵一家の住宅です。当社がこれまでにプロファイリングを行った中でも極めて長期間続いている「ファミリービジネス企業」と言えるでしょう。

Blenheim Palaceは企業でもありますが、この15年間、一族と管財人の監督の下で、初めて雇用したプロのCEOであるJohn Hoy氏がその企業活動を大きく変革しました。私たちは、この美しい場所へ出向き、この宮殿という立場の特殊な課題についてインタビューしました。

 

なぜプロのCEOが必要だと判断したのですか?決断はいつですか?

この宮殿は、実際には家族信託によって所有されています。ここでは、家族のメンバーが管財人となっている他、法律や土地管理の分野を専門とする外部の有名なアドバイザーも存在します。

約15年前、第11代公爵が、都市と事業について経験を持つ一族の若者二人を起用することを決めました。それがきっかけでした。彼らはすぐに、Blenheimがその潜在力を発揮し、適切な修繕を行う資金を作るには近代化する必要があると気付いたのです。近代化には、事業構造の変革も含まれました。その一環として、さまざまな人材を起用することになりました。そのとき、私が採用されました。私は土地管理の資格を有しており、ネブワースの大きな不動産やマダム・タッソー館、ウォリック城などの大型観光施設の運営経験があり、適任だったと言えます。私にとっては、すばらしい機会でした。

John Hoy氏 ブレナム宮殿 CEO

John Hoy氏 ブレナム宮殿 CEO

着任時のBlenheimはどのようなものでしたか?印象をお聞かせください。

魅力的な観光名所ですが、「ビジネス」とは呼べないと思いました。予算プロセスも、適切な報告も、戦略も、長期計画もありませんでした。世界遺産の管理計画すらありませんでした。世界遺産ともなれば、これは絶対に必要です。そこで、業務を専門化することが急務となりました。当時はマーケティングやPRが一切行われていませんでした。それは70年代や80年代に、このような場所では扉を開ければ人が来ると考えられていた時代の名残でした。実際に、それが長年にわたって機能してきたのですが、2003年頃には、競争が激しくなり、それでは不十分となりました。いくつかの大きな課題に直面しましたが、それらは大きな機会でもありました。

 

どのようにしたのですか?

過去に何をしたか、現在何をしているか、徹底的に見直しました。当初から、公爵と管財人の両方から十分な支援をいただきました。第12代公爵の代になってからも、その支援は変わりません。そのようにかかわっていただかなければ、これほど多くの変化を実行することはできなかったでしょう。公爵家は、この規模の事業体に期待される専門的な事業プロセスの策定を支援してくれました。その後、私は宮殿が人々に何を提供しているかに注目しました。最優先事項は中核的な活動、つまり観光だったからです。

私たちは、宮殿の中のより多くの部分を開放し、「The Untold Story」という新たなアトラクションを建設しました。さらに、チケットの価格体系をフレキシブルなものに変更し、年間パスも導入しました。パスの導入は当時はまだまれでしたが、大成功を収めました。ここのような場所は、一度訪れると「済んだ」と思われてしまうため、リピーターの獲得に苦労しがちです。そこで、再訪を促すような方法を見出す必要がありますが、年間パスはその点で非常に有効でした。私たちは営業シーズンをほぼ通年にまで拡大しました。これもこの部門では非常に珍しいことでしたが、冬期にも特別イベントを提供できるようになりました。

ブレナム宮殿

ブレナム宮殿

また、補助的な商活動も刷新しました。ケータリング施設を改良し、この種のものとしては国内で最高の水準とも言える、豪華な新ショップを開設しました。それら全てを実行した後、次の目標は、私たちがどのように多様化し、これまでにない新たな収益源を得られるかを探ることでした。

私たちは、国の中心部に位置しており、交通の便も良く、英国国内で最も華やかな地域に2,000エーカーの土地を所有しています。しかし、そのほとんどを活用しきれていませんでした。例えば、私たちはイベントをほとんど開催していませんでした。

この10年間で全てが変わりました。今では、セレブの結婚式から、12万5,000人以上を集めたBBC Countryfile Liveなどの大規模な公開イベントまで、年間を通じてイベントを開催しています。スポーツ大会、自動車ラリー、ファッションショー、近代アートの展示なども行います。2014年の艾未未(Ai Weiwei)の展示会は驚異的でした。これも皆に「できない」と言われつつ、「いや、できます」と答えたイベントの一つです。

このように多くのイベントがありますが、うまくいっています。私が着任した頃の年間訪問者数は30万人ほどでした。今年は、全ての活動を通じて、100万人の大台に届きそうです。

ブレナム宮殿

ブレナム宮殿

他の面でも多様化しましたか?

もちろんです。映画のロケ地として非常に好評を博しています。『007 スペクター』や『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の他、各種の小規模な制作物に利用されています。これには、新しいスキルが多数かかわってきます。建物の建材を保護(場合によっては文字どおりに「保護」)する必要性と映画制作会社の効率的な作業に必要な内容のバランスを取る必要があります。業務責任者はこの点に非常に明るく、チームの責任も豊富です。その結果として、仕事がしやすいという評価を得ることができました。これは非常に重要です。

また、私たちは、宮殿そのものでの企画だけでなく、より幅広い敷地、つまり1万エーカーという所有地を生かした事業の多様化にも目を向けています。例えば、私たちはウィットニーの産業施設に投資し、産業、農業、および住居のバランスを取るようにしました。皮肉なことに、その施設は、先の大戦前に政府が強制的に買い上げるまでは、当地の所有物でした。さらに私たちは、建設会社、Blenheim Estate Contractors Limitedも所有しています。同社は、商用施設の他、市場や公団も建設しています。この分野は全体として非常に複雑であり、税金や計画の問題が多数存在します。

私たちは常に、ある開発が、何世代にもわたる当地の一部として、その土地にふさわしいものかどうかを判断しなければなりません。一方で、これが大きな収益をもたらす可能性もあります。私たちは、その一部を新たな慈善信託に割り当てることを検討しています。そうすることにより、宮殿の投資計画や修繕プロジェクトのための宝くじ収益金基金へ応募がしやすくなるでしょう。どの時点でも、約4,000万ポンド規模の作業が必要ですが、現時点で私たちは年間約200万ポンドを確保できています。つまり、20年サイクルということになります。しかし、フォース鉄道橋のように、修繕が終わればまた同じことを繰り返していかなければなりません。

もう一つの別事業は、Blenheim Palaceボトルウォーターです。当施設を訪れるお客様が好みそうなレストランやホテルで宮殿の名前を広めることができるという点ですばらしいアイデアです。現在は、特に中国と香港に力を入れて、このボトルウォーターの輸出も進めています。北米と中国は、訪問者数の観点から、私たちにとって最も重要な海外市場です。

 

訪問者に働きかけるという点で、デジタルはどの程度重要ですか?

非常に重要です。私たちは、Facebook、Instagram、Pinterestなど、全てを利用しています。

 

より幅広いコミュニティの中で宮殿が果たす役割についてどう思いますか?

この質問には多くの答えがあります。商業的なレベルでは、Blenheimは、オックスフォードシャー地域の観光の基軸となっていると思います。私たち全員が協力し、ここを訪れる観光客の価値を最大化していくことが不可欠です。協力を惜しまなければ、より良い成果が得られるでしょう。そのため私は、Visit England Advisory Boardに参加するとともに、Experience Oxfordshireの設立にも携わりました。

より地元に目を向けると、私たちは近隣地域に対する責任を真剣に考えています。公団事業はその重要な一部です。また、私たちが開催するイベントが施設の垣根を越えて大きな経済的メリットをもたらす場合もあります。前回のGame Fair at Blenheimを調査したところ、地域全体に対する経済効果は約5,000万ポンドだったことが分かりました。Countryfile Liveなどの新しいイベントも、地域経済に大きく貢献するでしょう。教育事業もあります。また、環境的な実績を改善するために全力を尽くしています。ゴミの削減、省エネ、節水などを行っていますが、宮殿でこのようなことが行われていることは想像できないかもしれません。

しかしこれも全て、一つの全体目標、同じ責任感の一部なのです。この地所は300年も前からここにあります。私たちは、この土地を持っているというだけでなく、地域の景観の一部になっています。私たちがすることは全て、良識ある地主として行動し、現在と未来の世代のために一族の伝統を慎重に守っていくというニーズに根ざしています。

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小林 和也

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越田 勝

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