「素材を生かした洋菓子の流通革命」を世界へ:日本における成長とグローバル化

齊藤 寛氏

シャトレーゼホールディングス 創業者/日本/和菓子・洋菓子の製造小売

シャトレーゼは日本の和菓子・洋菓子製造販売業で、地元山梨の素材を生かした製品を自社工場で生産し、フランチャイズシステムにより販売するという方式で、日本国内で急成長を果たしました。

シャトレーゼの創業者であり、現シャトレーゼホールディングスの社長である齊藤寛氏は、1954年(20歳の時)に弟が4坪の広さで始めた菓子店の経営を任されることになりました。「やるからには日本一のお菓子屋に」と大手メーカーとの差別化を図ることで、今では3,000人の従業員を擁し年商630億円企業に育てました。

シャトレーゼホールディングスは、長男である齊藤寛社長の娘が専務、妹が常務としてグループ全体を統括し、甥の誠氏はシャトレーゼの社長であり、オランダ事業を管轄するなど一族経営を続けています。海外にも目を向け、グローバルでさらなる成長を遂げようとオランダやアジア各国に進出し、布石を打っています。洋菓子・和菓子チェーンとして知られるシャトレーゼが現在扱う商品は500種類以上と多彩で、店舗には旬の果物を使った生ケーキなどの洋菓子をはじめ、どら焼きなど和菓子の他、アイスクリーム、各種飲料、山梨特産のブドウを生かしたワインまでが並びます。それだけでなく、今ではワイナリーや日本各地のリゾートホテル、ゴルフ事業も手掛ける一大企業グループです。

地元山梨で今川焼風のお菓子の店として創業した同社が今日に至る過程は容易ではありませんでしたが、その後1967年(33歳の時)に圧倒的な安さと品質にこだわった「10円シュークリーム」が大ヒットし、起爆剤となりました。自社で生産して既存の流通経路で販売する苦労体験などから、「小売業も他と同じことをやっていたのではダメ。大手メーカーのできないことをやる。」というポリシーと、問屋を通さない独自の直販スタイルが生まれました。

齊藤 寛氏 シャトレーゼホールディングス 創業者

齊藤 寛氏 シャトレーゼホールディングス 創業者

そして創業30年目である1984年(50歳の時)、まだ売上48億円の時代に、自分の経験を信じ思い切って50億円を投資し、本社工場を移転したことが転機になったと齊藤社長は語ります。当時は移転直前の主力工場火災や、専務、工場長の病死など災難が続きましたが結束して乗り越え、首都圏から日本全国にFC店舗を中心に拡大し、右肩上がりの成長を遂げました。

そんな成長を支える人材育成もユニークです。グループ会社の社長の募集は社内公募を行い、やる気のあるチャレンジ精神旺盛な社員には自ら手をあげるチャンスがあります。現在、グループ会社の経営者の最年少は32歳の若手の生え抜き人材です。経営という難しい判断を迫られる仕事を比較的小規模なグループ会社で経験させることは、経営者視点・考え方を養う登竜門であるといえます。また、寛氏自らがグループ会社の社長含む幹部を対象に、これまでの経営における自身の失敗談、成功談、経営者としての考え方などを伝える研修も開始し、創業経営者から直接経営を学べる貴重な機会もあります。

同社が始めた「素材を生かした洋菓子の流通革命」を、シャトレーゼは世界に広げようとしています。洋菓子の伝統あるオランダで、フランスブルターニュ産の乳製品を原料とした製品作りに取り組むほか、近年はシンガポール・台湾・マレーシア・中国などアジア各国、2016年にドバイにも出店、今後は韓国・インドネシア・香港にも出店予定です。

シャトレーゼの洋菓子

シャトレーゼの洋菓子


「日本は少子高齢化が進んで洋菓子の消費が減り、国内だけでは先が見えています。将来は海外売上の割合を多くしたいです」と齊藤社長は語ります。目標としては、現在1割に満たない海外の売上比率を5年後には5割程度まで引き上げることです。

寛氏は、企業の長期ビジョンである100年企業の構想を自ら書面化し、幹部社員に発表しました。100年企業の実現に向け、向こう3年、5年にどうあるべきかのビジョンを共有するだけでなく、幹部社員一人ひとりが何をすべきか、深く考えさせる風土も根付いています。また両親の教えに基づいた社是である「三喜経営」(顧客・取引先・社員に喜ばれる経営)の理念も、さらに社内に浸透させ、守り育てて行きたいと言います。

現在82歳となる齋藤社長ですが、「30年プラン」が構想としてあるといい、「グローバル展開の先を見届けたいです。達成する頃には110歳になりますが。」と笑いながらも中長期ビジョンを見据え、さらなる飛躍へと挑戦を続けています。

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越田 勝

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高田 佳和

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