「コネクテッドホーム・スマートデバイス市場意識調査2020」調査結果―使用状況の実態と普及に向けた課題

2021-04-20

2020年度は多くの企業にとって生き残りをかけた非常に大きな変革の年になりました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を経て、社会環境、顧客のニーズも大きく変化しており、その変化に対応できるかが重要な鍵を握っています。

エネルギー企業の事業環境においても、近年の市場の自由化、デジタル化などと合わせて、変化は待ったなしの重要な課題となっています。特に海外では、一足早くディスラプターと呼ばれる企業が、顧客のニーズの変化を捉えて、業界に大きなインパクトをもたらし始めており、スマートデバイスを用いた家庭内機器制御や蓄積データの活用により大手企業さえも対応を迫られる事態に発展しています。

このような状況下で、PwCコンサルティング合同会社では「コネクテッドホーム・スマートデバイス市場意識調査2020」を実施し、その結果を取りまとめました。

本調査は、全国の一般消費者を対象に、PwC Japanグループ内の専門組織「電力・ガスシステム改革支援室」が2018年度に引き続き実施したもので、家庭内で過ごす時間が増加した現在の国内のコネクテッドホーム・スマートデバイス使用の実態と普及に向けた課題を分析しています。調査結果から、以下の4点について見えてきました。

  • スマートデバイスに関連するキーワードの認知度は上昇傾向にある
  • コネクテッドホームのサービス導入を検討中の層が約3割、スマートデバイスの導入を検討中の層が約4割存在し、情報収集チャネルとしては対面でのフォローが可能な家電量販店を活用する傾向にある
  • コロナ禍の影響により、消費者の意識において健康管理、世帯収支、防災/危機管理、娯楽/エンターテイメントへの関心が特に高まっている
  • コネクテッドホーム・スマートデバイスを知人に勧めたい層は増加傾向にある

 

※調査結果の詳細は、「コネクテッドホーム・スマートデバイス市場意識調査2020」に掲載しています。ページ下部のリンクからダウンロードの上、ご覧ください。

Smart device

スマートデバイスに関連するキーワードの認知度は上昇傾向にある

コネクテッドホーム・スマートデバイスに関するキーワードの認知度について調査を実施した結果、コネクテッドホームにおいては2018年度の前回調査時と比較し、「ホームオートメーション(家の状態監視・コントロール、自動空調制御、オートロックなど)」「デジタル監視カメラ」など、セキュリティに関連した一部のキーワードの認知度が上昇していることが確認できました(図表1)。一方、スマートデバイスにおいては、「スマートホームアシスタント」「スマートホームセキュリティ」などを中心に、全てのキーワードの認知度が上昇していることが明らかになりました(図表2)。スマートデバイスの概念が消費者に徐々に浸透しつつあると考えられます。

図表1:コネクテッドホームに関するキーワードの認知度
Q: あなたは以下のような「コネクテッドホーム/スマートホーム」に関するキーワードについて知っていますか?(複数回答可)

図表1:コネ クテッドホームに関するキーワードの認知度

図表2:スマートデバイスに関するキーワードの認知度
Q: あなたは以下のような「スマートデバイス」に関するキーワードについて知っていますか?(複数回答可)

図表2 :スマートデバイスに関するキーワードの認知度

サービス導入を検討中の層は、コネクテッドホームについては約3割、スマートデバイスについて約4割存在し、情報収集チャネルとしては家電量販店を活用する傾向にある

コネクテッドホームのサービスについて、「今後2年以内に導入する予定がある」「時期はわからないが導入したい」を合算した、導入を検討中の層は31.3%存在していることが明らかになりました。前回調査時(20.5%)と比較し、約11ポイント上昇しています。また、「現在使っている」「かつて使っていた」を合算した普及率は16.1%と、前回調査時(5.9%)より約10ポイント上昇しました(図表3)。

スマートデバイスについても、40.4%が導入を検討中であることが明らかになりました。前回調査時(21.9%)と比較し、約19ポイント上昇しています。また、普及率は11.8%と、前回調査時(4.9%)より、約7ポイント上昇しました(図表4)。普及率、および導入を検討中の層の割合が上昇傾向にあり、市場には成長ポテンシャルがあると考えられます。

図表3:コネクテッドホームに関するサービスの利用状況
Q: あなたは、自分の住宅(持ち家・賃貸を問わない)で、「コネクテッドホーム/スマートホーム」に関するサービス等を使っていますか?

図表3: コネクテッドホームに関するサービスの利用状況

図表4:スマートデバイスに関するサービスの利用状況
Q: あなたは、「スマートデバイス」を使用していますか?

図表4 :スマートデバイスに関するサービスの利用状況

PwC英国の調査によれば、スマートデバイス先進国である英国では、デバイス所有割合が2016年から2018年の間で大幅に増加しました。また、日本との比較においては、2018時点で2020年の日本を上回る所有割合を示しています。英国では電力・ガスの小売自由化やホームIoTサービスの浸透も日本より先行しており、PwC英国では、今後もスマートデバイス市場の成長は続くと予測しています(図表5)。

なお、スマートデバイスなどのデジタル機器に関する情報収集時に利用されるチャネルとしては、「家電量販店」を利用するという回答が最も多いという結果になりました(図表6)。店員による対面のフォローが可能な点や、各デバイスの形状や機能、使い心地などを自ら直接確認し、デバイスを購入したいという消費者の心理がうかがえます。

コネクテッドホーム・スマートデバイスにおけるIoTサービスは、「モノの所有」ではなく、「価値のある体験」として提供されるものであり、英国と比較して普及途中にある日本国内においては「直接の体験」が重要であると考えられます。

図表5:スマートデバイス所有割合に関する日英比較

図表5 :スマートデバイス所有割合に関する日英比較

*英国の2016年度ホームエンターテインメント、スマートスピーカー、スマートアシスタントについては当該情報なし


図表6:デジタル機器の情報収集チャネル
Q: 「スマートデバイス」等デジタル機器に関する情報収集をする際に利用する媒体を教えてください。

図表6 :デジタル機器の情報収集チャネル

*英国の2016年度ホームエンターテインメント、スマートスピーカー、スマートアシスタントについては当該情報なし

コロナ禍の影響により、消費者の意識において健康管理、世帯収支、防災/危機管理、娯楽/エンターテイメントへの関心が特に高まっている

日本国内におけるCOVID-19の拡大、および2020年4月に発令された国内初の緊急事態宣言を受け、消費者の関心事項は感染拡大前から大きく変遷していることが想定されます。コロナ禍で関心度合が高まった項目として、84%と多くの回答者が「健康管理(衛生・傷病)」を挙げています(優先度1位~3位の合算値)(図表7)。

健康管理に続き、関心度合が高まった項目は、「仕事・収入」(同41.7%)、「光熱費/食費」(同24.2%)、「防災/危機管理」(同22%)、「娯楽/エンターテイメント」(同17.5%)となりました。リモートワークや在宅時間の増加による家計への影響、安全対策や余暇の過ごし方に関心が高まったと言えます。

前述のホームオートメーションやデジタル監視カメラ、各種スマートデバイスの認知度の向上(図表1、2)、ホームエンターテイメントやスマートアシスタントに代表されるスマートデバイスの所有割合の増加(図表5)は、これらの関心度合の変化が押し上げ要因となっていることが考えられます。コロナ禍をビジネスにおける障壁として捉えるのではなく、商機として生かすために発想の転換が求められています。

図表7:コロナ禍での関心事項
Q: 新型コロナウイルス感染症による影響を受け、関心度合が高まったものはありますか。優先度の高い順に教えてください(優先度順上位3つ)。

図表7 :コロナ禍での関心事項

コネクテッドホーム・スマートデバイスを知人に勧めたい層は増加傾向にある

「コネクテッドホームを知人に勧めたいと思うか」という質問に対し、「推奨者」の割合は13.4%と、前回調査時(9.1%)よりも約4ポイント増加しました(図表8)。加えて、コネクテッドホームの批判者も約10ポイント低下しています。同様に、「スマートデバイスを知人に勧めたいと思うか」という質問に対し、「推奨者」の割合は15.2%と、前回調査時(9.3%)よりも約6ポイント増加し、批判者においては約20ポイント低下しました(図表9)。「推奨者」の増加はさることながら、コネクテッドホーム・スマートデバイスに疑念を有する批判者が減少していることは注目に値します。

図表8:コネクテッドホームのユーザーロイヤルティ
Q: あなたは、「コネクテッドホーム/スマートホーム」に関するサービス等を、知人等に勧めたいと思いますか(10段階で評価。1~6の回答は「批判者」、7、8の回答は「中立者」、9、10の回答は「推奨者」とする)

※2018年は0~10の11段階で評価しており、0~6の回答は「批判者」、7、8の回答は「中立者」、9、10の回答は「推奨者」として算出

図表9:スマートデバイスのユーザーロイヤルティ
Q: あなたは、「スマートデバイス」を、知人等に勧めたいと考えますか(10段階で評価。1から6の回答は「批判者」、7、8の回答は「中立者」、9、10の回答は「推奨者」とする)。

※2018年は0から10の11段階で評価しており、0から6の回答は「批判者」、7、8の回答は「中立者」、9、10の回答は「推奨者」として算出

また、コネクテッドホーム・スマートデバイスともに、金銭面での効果、ライフスタイルの質の向上、快適さの向上を便益として感じている層が「推奨者」となっている傾向が確認できます(図表10、11)。コネクテッドホーム・スマートデバイスのさらなる拡大に向けては、これらの顧客便益を踏まえた上で、付加価値を訴求していくことが必要であると言えます。

図表10:コネクテッドホームのユーザーロイヤルティ(効果があると感じた割合)

図表10: コネクテッドホームのユーザーロイヤルティ(効果があると感じた割合)

図表11:スマートデバイスのユーザーロイヤルティ(効果があると感じた割合)

図表11: スマートデバイスのユーザーロイヤルティ(効果があると感じた割合)

■「コネクテッドホーム・スマートデバイス市場意識調査2020」調査概要

本調査は、家庭向けサービスとして提供されるコネクテッドホーム・スマートデバイスに関する一般消費者の利用状況や効果に対する満足度に加え、ライフスタイルによるセグメンテーションを調査したものです。

  • 調査期間:2020年5月25日(月)~5月26日(火)
  • 調査対象:日本全国の一般家庭における消費者
  • 調査方法:Webによるアンケート方式
  • 有効回答件数:2,000件(成行回収)
  • 有効回答率:48.4%(2,000件/4,135件)
  • 調査項目:1. コネクテッドホーム/スマートホームの調査、2. スマートデバイスの調査、3. デジタル機器に関する購買意欲の調査、4. ライフスタイルによるセグメンテーション

 

■「電力・ガスシステム改革支援室」概要

2013年11月1日にPwC Japanグループ内に設置した組織。電力・ガス小売の自由化・発送電分離などシステム改革の動きに対応する電力・ガス会社、および新規参入を計画する企業に対し、戦略策定や制度変更対応などの領域において、総合的なコンサルティングサービスを提供。

  • 提供サービス:戦略策定、制度変更対応、組織変革、小売事業参入、内部統制/リスク管理などの領域におけるコンサルティング、海外市場調査
  • 主な対象業界:既存の電力・ガス会社、新規参入を計画する国内外の企業など
  • 室長:PwCコンサルティング合同会社 パートナー 片山 紀生
  • 体制:国内約160名(PwCあらた有限責任監査法人、PwC税理士法人、PwCアドバイザリー合同会社のメンバーを含む)

※調査結果の詳細は、「コネクテッドホーム・スマートデバイス市場意識調査2020」に掲載しています。下記リンクからダウンロードの上、ご覧ください。

主要メンバー

片山 紀生

パートナー,PwC Japanグループ エネルギー・資源・鉱業事業部 リーダー, 常務執行役, Chief Human Resource Officer, PwCコンサルティング合同会社

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佐野 慎太郎

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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