新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行から見えてきたニューノーマルにおける製薬コマーシャルモデルのあり方、世界観

エグゼクティブサマリー

医師の利用チャネル変化

COVID-19流行を契機に、医師が医薬品情報取得のために利用するメインチャネルは、リアルからオンラインへシフトしていることが改めて確認された。またその傾向はあらゆる世代で同様であった。

リモート面談を利用したことがある医師はいまだ10%未満と少なく、今後の利用意向においても35%程度と低い結果であったことから、すぐにリアル面談を代替するチャネルにはならないと想定される。

医師の求める情報コンテンツ

製品に関する有効性、安全性といった適正使用情報のニーズが高く、その傾向は診療科別、年齢別、施設別に見ても大きな差はなかった。

オンラインチャネルが主流となりウェブサイトにも適正使用情報が掲載されているが、一定数の医師の情報ニーズは満たせていない状況であった。つまり、ウェブサイトには掲載されていない、キーオピニオンリーダー(KOL)の治療戦略、エビデンスといった情報へのニーズが高いと想定される。

医師の求める新たな施策

デジタルを活用した新たな情報提供方法に対し、多くの医師が利用意向を示した。その中でもオンデマンドのウェブセミナーの実施に対する利用意向が高く、多くの医師がオンライン上でKOLを含む他医師と情報や意見を交換する場を求めていると想定される。

医師のデジタルリテラシーなどの理由から難航していたオンラインシフト・デジタルシフトに対し、企業として再度チャレンジする良いタイミングと考えられる。

新たな常態・世界観として、今後製薬企業に求められるコマーシャルチャネル

COVID-19流行を契機に明確となったチャネル傾向の変化や医師の情報取得ニーズを踏まえ、これまで別々のものとしてとらえられがちであったリアル・オンラインの位置づけを見直し、相互補完しあうオンライン・オフラインミックスのチャネル構築が求められる。

従来はMRやウェブサイトが情報への入口としての機能を担っていたが、今後は「医師のニーズを満たす最適なチャネル」への誘導するプル型コマーシャルモデルの構築が必要になると想定される。

ニューノーマルにおける世界観

  1. 利用する医師の立場にたち、オンライン・オフラインといったチャネルの概念にとらわれず必要な情報を提供することが求められる 
  2. 医師とのコミュニケーションでは、属人的関係構築から組織的な関係構築へシフトしていく
  3. オンライン上では、従来の情報提供に加えエビデンス・治療方針などをサポートする環境が求められる
  4. 医師が欲しい時に欲しい情報を依頼・提供できる環境が求められる
  5. フロー情報(時限性あり)をストック情報(時限性なし)として提供する環境が求められる
  6. プル型情報提供を重視したコマーシャルモデルが求められる

調査概要

調査期間:2020年4月23日~5月1日、調査対象:臨床医424名、オンライン調査

調査結果

1.医師の利用チャネル変化

i.メインチャネルは、リアルチャネル※1からオンラインチャネル※2へシフトし、その傾向は全世代で同様であった

ii.オンラインチャネルの中でもウェブサイトとウェブセミナーがメインチャネルに(科別、施設別の差なし)

iii.リモートディテーリングは利用実績・利用意向ともに低く、医師視点では情報取得に利用するメインチャネルにはなりにくい見込み

※1:リアルチャネル(MR/MSL、講演会・セミナー) ※2:オンラインチャネル(MR(リモート面談)、ウェブサイト、ウェブセミナー) ※3:調査対象424名のうち各項目を第1選択とした医師の割合

【見えてきた潮流】

  • 顧客セグメンテーションにデジタルリテラシーの変数は不要となり、今後は医師の情報取得タイミングによって最適なチャネルが変化していく
  • DTL(ディテーリング)数重視のSOV(Share of Voice シェアオブボイス)モデルを改め、新たなコマーシャルモデルのあり方を見直す必要がある
  • MRによる訪問・リモートディテーリングは医師と直接接しニーズを把握する貴重な機会となり、さらに重要な役割が期待される

2.医師の求める情報コンテンツ

i.診療科・所属施設に関係なく有効性・安全性に関する情報のニーズが高く、COVID-19の影響を受けても傾向は変わらない

ii.オンラインが主要チャネルとなったものの、一定数の医師の情報ニーズは満たせていない状況

iii.画一的なコンテンツではなく、個々の興味に合った情報提供・取りまとめなど、コンテンツのパーソナライズとキュレーションへのニーズが高い

【見えてきた潮流】

  • 他医師(KOL)の治療戦略・方針や、関連するエビデンスなどを取りまとめた情報提供、訪問時に提供していたピンポイントな情報がオンライン上で求められてくる
  • オンラインでは、単純な情報送付だけではなく、必要としている箇所だけ抽出・ハイライトすればより情報価値を高めることができる
  • 医師と協同しながら治療戦略に必要となるエビデンス収集をサポートするニーズが高い

3.医師の求める新たな施策

i.紙媒体のデジタル化による情報一元管理や呼び出しアプリ/ボタンなどのプル型の情報提供ニーズが高い

ii.OMO(オンラインとオフラインの融合)的コミュニケーションのニーズが顕在化しつつある。また情報検索サポートやパーソナライズドコンテンツといったAIなどのテクノロジーを活用した情報提供ニーズが高い

iii.講演会・セミナーで提供される情報コンテンツを欲しいときにプル型で取得したい意向が高い(情報提供規制にいかに対応するか)

【見えてきた潮流】

  • MRからMSLへの連携、講演会やウェブサイトの案内など、利用する医師の立場にたち、オンライン・オフラインといったチャネルの概念にとらわれず必要な情報を提供する今後は、プル型の情報提供を重視したコマーシャルモデルがさらに医師から求められる
  • 徹底的に利便性を追求した情報提供ツールが求められる(テクノロジーを活用することで現状の課題の一部は解決できる)

終わりに

COVID-19流行下に実施したアンケートから見えてきたのは、リアルチャネル・オンラインチャネルが相互補完しあう、新しいコマーシャルチャネルのあり方です。これまでは、リアルチャネルではMRによるプッシュ型モデル、オンラインチャネルではウェブサイトによるプル型モデルが、それぞれによって医師への情報提供機能の中心を担ってきましたが、ニューノーマル時代では、両輪で医師の情報ニーズを満たすことが製薬企業に求められているのではないかと考えられます。

主要メンバー

堀井 俊介

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

大森 健

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

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