かつて監査業務は、膨大な紙の書類をひとつひとつ確認する、いわば「人海戦術」的な作業でした。しかし、テクノロジーの発展とともに監査業務も変革を続けており、デジタルツールの導入、デジタル化によるデータの利活用など、監査品質の向上が図られてきました。そして現在、AIの加速度的な進歩と普及により、社会全体と同様に監査を取り巻く環境は変化を続けています。
PwC Japan有限責任監査法人(以下、「当法人」)は、2006年の設立以降、PwCグローバルネットワークの一員として、世界最先端のテクノロジーを監査業務に導入してきました。その根幹にあるのが「Human-led, tech-powered」、すなわち「人ならではの発想力や経験と、テクノロジーによるイノベーションとを掛け合わせる」という思想です。リスクを的確に捉え、より深度ある監査を実現するためには、人の判断力や職業的懐疑心といった専門性は不可欠です。しかし、その能力を最大限に引き出し、膨大なデータの中に潜む異常の兆候を見つけ出すためにはテクノロジーの力が欠かせません。AIやデータ分析ツールを駆使することで、監査人は単純作業から解放され、より本質的なリスクの評価や、経営層との深い対話といった、人間にしかできない付加価値の高い業務に集中できるようになるのです。
本稿では、当法人が過去に実現した監査変革を実際の事例を交えて振り返り、現在進めている次世代監査の実現に向けた取り組み、そして監査の将来的な展望について紹介します。なお、文中における意見は、全て筆者の私見であり、当法人の正式見解ではないことをあらかじめお断りします。
PwC Japan有限責任監査法人 DX企画室
シニアマネージャー 先山 剛史