「コンプライアンス」は、日本ではバブル崩壊後の1990年代後半から、企業不祥事が相次ぐなかで重要視されるようになりました。それ以降、現在に至るまで、コンプライアンスはあらゆる組織にとって欠かせない概念とされ、その重要性は法令遵守だけにとどまらず、企業内倫理や組織の文化形成にまで広がっています。また、コンプライアンスは、企業全体での統一されたガバナンスとも密接に関連しています。
グローバルな事業活動を行う企業にとって、ガバナンス態勢とコンプライアンスの両立が成功の鍵となります。コンプライアンスを効果的に実行することで、組織は法的リスクを回避し、倫理的かつ透明な業務遂行の基盤を構築できます。コンプライアンスは組織の持続可能な発展にとって不可欠です。特に最近では、グローバル化や社会の変化に伴い、コンプライアンス対応の重要性は増していますが、同様に複雑さも増しており、長年コンプライアンス態勢を構築してきているにもかかわらず、不祥事がなくならないという悩みも複数の担当者から聞かれます。
本稿では、まずは現在のコンプライアンスに関するトレンドをPwCのグローバルコンプライアンス調査2025とともに紹介し、企業のコンプライアンス態勢構築におけるありがちな課題を、ガバナンスの視点から提示します。
なお、文中の意見は筆者の私見であり、PwC Japan有限責任監査法人および所属部門の正式見解ではないことをお断りします。
PwC Japan有限責任監査法人
ガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部
ディレクター 吉岡 美佳