【米国の関税政策による影響と、日系企業に求められる対策】―関税の激動の時代を生き抜くために―

2025-05-30

※2025年5月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーションニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。

米国のトランプ政権による関税政策により、どの国・地域の企業も、関税についてより真剣に考慮する必要性に迫られています。今回は、エネルギー業界への影響と課題について説明します。

米国の関税政策によるエネルギー業界の影響

現地時間3月24日、米国はベネズエラに対する制裁の一環として、ベネズエラ産の原油を輸入する国から米国へ輸入する製品に対して、一律25%の関税を課す大統領令を発動し、4月2日より施行されています。ベネズエラ産の原油をほとんど輸入していない日本への影響は限定的とみられるものの、過去にはトランプ大統領がこれと同様の制裁をロシア産の原油に課すと言及したことがあるため、今後の動向を注視する必要があります。

また、現地時間4月3日に米国にて発表された相互関税は、基本的には業界や国隔てなく、米国に輸入されるあらゆる貨物に課されることとなっているものの、多くのエネルギー製品は例外的に対象外となっています。ただし、全てのエネルギー製品が対象外となっているわけではない点に注意が必要です。

さらには、米国からの輸出への影響も懸念されます。相互関税自体はあくまでも米国への輸入に課せられますが、相手国によっては対抗措置として対米関税を課す国も想定され、米国から輸出されるエネルギー製品が対米関税の対象となる可能性は否定できません。

トランプ政権による交渉手段の一つであるとの見方がある一方で、関税による製造業の国内回帰や財源の確保を目指しているため、上記の相互関税やその他の追加関税は、即時撤廃されない可能性も十分に考えられます。

したがって、エネルギー業界においても静観することなく、事業戦略やサプライチェーン戦略の段階から、関税を十分に考慮することがより一層求められます。

日系企業における課題

エネルギー業界にとどまらず、日系企業の多くには関税の管理体制が十分に備わっているとはいえません。戦略の段階から考慮することはもとより、現行の事業・サプライチェーンにおいても、例えばグローバルでどの程度の関税コストが発生しているか把握しきれておらず、その関税コストの削減余地なども十分に検討されていない企業がほとんどです。

昨今の情勢に鑑みると、関税の管理がある程度できる欧米系の企業に対して、日系企業の関税の戦略検討や管理体制の欠落は、企業の競争力に如実に影響する可能性があります。

PwCの支援体制と内容

PwCでは、2025年1月にPwC関税貿易アドバイザリー合同会社を新設し、日系企業における関税管理を全体的に底上げする体制を整えさまざまな形でご支援を強化しています。PwCコンサルティング合同会社、PwC Japan有限責任監査法人、PwCアドバイザリー合同会社、PwC税理士法人、PwC弁護士法人などと連携しながら、例えば以下のような幅広い領域をサポートしています。

戦略立案

  • トランプ政権などの各国の最新動向に基づく事業への影響評価。自社事業のみならず、買収先事業への影響を含む。
  • サプライチェーン戦略検討時における関税コストのシミュレーションや輸出入規制の影響評価。ダッシュボードを用いた可視化を含む。
  • 自由貿易協定(FTA)などの活用による削減額試算と、FTA活用の最大化を目指した生産・調達戦略の策定
  • 商流変更などによる関税コスト削減余地の検討と、移転価格や法人税を含めた適正化。

管理体制構築

  • 日本本社および海外拠点の関税管理体制の現状把握と、課題の抽出を行った上でのグローバルでの関税ガンバナンス体制の構築。
  • 関税・貿易管理システムの検討、導入。
  • 関税の観点も考慮した関連会社間契約書の整備による商流変更や新規ビジネスの後押し。

実行

  • 関税管理業務のアウトソース。
  • FTA活用時の原産判定自動化システム「Origin Compliance」(SaaS)の提供。
  • 附番根拠などを含む、HSコードの一元的な附番とグローバルでの画一的な活用。
  • 現地税関当局との協議・各種ルーリングなどの取得。
  • 現地当局による監査対応。

執筆者

芦野 大

ディレクター, PwC関税貿易アドバイザリー合同会社

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