【エネルギー業界におけるアセット・マネジメントの高度化】―日本の環境の転換点と今後の展望―

2023-06-02

※2023年4月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。

日本の設備管理(アセットマネジメント)を取り巻く環境

これまで事業領域や組織ごとに個別に導入されていた「アセットマネジメント」が、統合されたり、刷新されたりするケースが近年急速に増えています。主な要因として、「1.設備の高経年化」「2.労働力人口の減少」「3.法制度の整備」の3点が挙げられます。

1.設備の高経年化

日本においては、戦後の高度経済成長期に大量の設備が集中的に新設されました。現在それらが高経年化し、今後は一斉に更新の時期を迎えることになります。人口減少や省エネの推進に伴い、需要の増加が見込めない中で、いかに効率的に事業の安全・安定を確保するかが喫緊の課題になっています。

2.労働力人口の減少

急速に進む少子高齢化により、ピーク時の1995年には8,700万人いた労働力人口は、2030年には2割以上減少し、さらに2065年には半分になると予測されています。これは単に働き手が減少するという問題だけにとどまらず、これまで現場を支えてきた熟練者が一斉に引退することで、技能や知識が喪失されるというリスクをも意味しています。

3.法制度の整備

火力発電所においては、IoTを活用した高度な設備監視や異常検知を実現できた場合には、法定定期検査期間を4年から6年に延ばすことが認められる特例措置が設けられました。また、送配電設備の高度な設備管理を目的に、電力広域的運営推進機関が高経年化設備更新ガイドラインを策定するなど、法制度の観点からも高度なアセットマネジメントの推進が求められるようになってきています。

設備管理(アセットマネジメント)の定義

そもそも「アセットマネジメント」の定義とはどのようなものなのでしょうか。また、私たちはそれにより、どこを目指すべきなのでしょうか。

アセット(設備)のメンテナンス(保全)について、4つの世代に分類して検討してみます。事後保全中心の第1世代(メンテナンス1.0)に対し、壊れる前に一定の周期でコンピュータを利用しながらメンテナンスする第2世代(メンテナンス2.0)。企業レベルで情報を一元管理して設備の価値をライフサイクルで最適化する第3世代(メンテナンス3.0)、そしてIoT、AI、アナリティクスなどを活用した状態監視や予知保全のほか、リスクベースメンテナンス(RBM)を実現する第4世代(メンテナンス4.0)に大別されます。

これまで「アセットマネジメント」というと第3世代を指すことが一般的でした。しかし、近年ではメンテナンスを自動化したり、熟練スタッフと同等のことをシステムで実現したり、より投資コストを最適化する第4世代と併せて指すことが多くなっています。また、第4世代では、技術の発展と低廉化にともない、ドローンやロボットを活用することでメンテナンスの遠隔化および自動化や、デジタルツインによるメンテナンス計画の精度向上およびコスト低減の検討が進んでいます。さらに、スマートグラスを使うことで必要な情報を確認したり、遠隔地のスタッフとコミュニケーションを行ったりすることで現場業務の効率化を図ることなどが考えられ、実際に各社がさまざまな研究を進めています。

必要性に迫られてアセットマネジメントに取り組んでいる企業も多いですが、現在は時代の転換点にあり、革新的なアセットマネジメントを実現できれば、ゲームチェンジャーになることができるかもしれません。

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    (例:予知保全や、スマートグラス・ドローンなどを活用したメンテナンス高度化など)

執筆者

中倉 有希

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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