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SDGsやESGに関する取り組みが世界的に広がっています。PwC弁護士法人は、企業および社会が抱えるESGに関する重要な課題を解決し、その持続的な成長・発展を支えるサステナビリティ経営の実現をサポートする法律事務所です。当法人は、さまざまなESG/サステナビリティに関する課題に対して、PwC Japanグループや世界90カ国に約3,500名の弁護士を擁するグローバルネットワークと密接に連携しながら、特に法的な観点から戦略的な助言を提供するとともに、その実行や事後対応をサポートします。
近時、日本を含む世界各国において、ESG/サステナビリティに関する議論が活発化する中、各国政府や関係諸機関において、ESG/サステナビリティに関連する法規制やソフト・ローの制定又は制定の準備が急速に進められています。企業をはじめ様々なステークホルダーにおいてこのような法規制やソフト・ロー(さらにはソフト・ローに至らない議論の状況を含みます。)をタイムリーに把握し、理解しておくことは、サステナビリティ経営を実現するために必要不可欠であるといえます。当法人のESG/サステナビリティ関連法務ニュースレターでは、このようなサステナビリティ経営の実現に資するべく、ESG/サステナビリティに関連する最新の法務上のトピックスをタイムリーに取り上げ、その内容の要点を簡潔に説明して参ります。
今回は、以下の2つのトピックを紹介します。
I. 金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告
II. 政府「女性版骨太の方針2022」の公表
企業情報の開示においては、投資家の投資判断の基礎となる情報を十分かつ正確に、また適時に分かりやすく提供することが求められています。近時は、企業と投資家の対話や開示実務の進展などにより、特に記述情報の開示が充実し、その有用性が着実に高まっています。また、企業経営や投資判断においては、1の重要性が急速に高まるなど、大きな変化も生じています。
こうした状況の中、金融審議会は、2021年6月に金融担当大臣からの諮問を受けてディスクロージャーワーキング・グループ(以下「本WG」といいます。)を設置しました。本WGは、同年9月から、合計9回にわたり、企業情報の開示の在り方について検討及び審議を行い、2022年6月13日、「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告-中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて-」2(以下「本報告」といいます。)を公表しました。
本報告では、本WGが審議を行った以下の4つの項目について、検討の結果が取りまとめられています。
(i) サステナビリティに関する企業の取組みの開示
(ii) コーポレートガバナンスに関する開示
(iii) 四半期開示をはじめとする情報開示の頻度・タイミング
(iv) その他の開示に係る個別課題(「重要な契約」の開示、英文開示等)
以下では、(i)サステナビリティに関する企業の取組みの開示について、概要を説明します。
日本では、2022年7月、公益財団法人財務会計基準機構(FASF)が、サステナビリティ開示に関する国際的な意見発信等を行うサステナビリティ基準委員会(SSBJ)を正式に立ち上げる予定です。
また、国際的には、2022年3月、国際会計基準(IFRS)の設定主体であるIFRS財団が設立した、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)により、サステナビリティ開示基準(サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項及び気候関連開示)の公開草案が公表され、これらの基準は2022年末までに最終化される予定です。
このような国内外の状況を踏まえ、また、我が国の企業情報の開示の主要項目としてサステナビリティ開示を位置付け、その内容について継続的な充実を図ること等の要請に基づき、本報告では、サステナビリティ情報を一体的に提供する枠組みとして、有価証券報告書において、独立した「記載欄」を創設すること等の取組みを進めることが重要であるとされています。
企業が重要なサステナビリティ情報を有価証券報告書において開示する事例も増えつつありますが、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、【事業等のリスク】、【経営者による財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】といった項目に分散して記載されるなど、明瞭性や比較可能性の確保が必要となっています。
そこで、本報告では、投資家に分かりやすく投資判断に必要な情報を提供する観点から、有価証券報告書にサステナビリティ情報の「記載欄」を新設することを提言しています。
サステナビリティ情報の記載欄には、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの構成要素に基づく開示を行うこととされています。これらの構成要素は、国内外のサステナビリティ開示で広く利用されている気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)3のフレームワーク及びISSBの公開草案と整合的で、国際的な比較可能性の観点にも配慮されています。
また、有価証券報告書提出会社の業態や経営環境がそれぞれ異なることや、企業の開示負担を考慮して、各構成要素については、以下のとおり整理されています。
| 構成要素 | 開示の要否 |
「ガバナンス」 「リスク管理」 |
|
「戦略」 「指標と目標」 |
|
本報告には、サステナビリティ情報の記載欄における具体的な開示内容が挙げられていません。この点については、国際的な比較可能性の担保等の観点から、SSBJにおいて、ISSBが策定する基準を踏まえて速やかに検討した後、本WGにおいて、当該具体的開示内容を有価証券報告書の「記載欄」へ追加する検討を行うことが提言されています4。
サステナビリティ情報は、企業の中長期的な持続可能性に関する事項であり、将来情報を含むこととなりますが、投資家の投資判断にとって有用な情報を提供する観点からは、事後に事情が変化した場合において虚偽記載の責任が問われることを懸念して企業の開示姿勢が委縮することは好ましくありません。
本報告では、「一般に合理的と考えられる範囲で具体的な説明がされていた場合、提出後に事情が変化したことをもって虚偽記載の責任が問われるものではないと考えられる」5という過去の金融庁の見解について、実務への浸透を図るとともに、企業内容等開示ガイドライン等において、サステナビリティ開示における事例を想定して、更なる明確化を図ることを検討すべきであるとされています。
有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の「記載欄」への記載については、統合報告書やサステナビリティ・レポート等の任意開示書類に記載した詳細情報を参照することも考えられます。その際の虚偽記載の責任の考え方について、本報告では、以下のとおり整理されています。
| 金融商品取引法は有価証券報告書の記載内容に虚偽記載があった場合の責任を規定しているが、任意開示書類に、事実と異なる実績が記載されている等、明らかに重要な虚偽記載があることを知りながら参照するなど、当該任意開示書類を参照する旨を記載したこと自体が有価証券報告書の重要な虚偽記載になり得る場合を除けば、参照先の任意開示書類に虚偽記載があったとしても、単に任意開示書類の虚偽記載のみをもって、同法の罰則や課徴金が課されることにはならないと考えられる。 |
本報告では、国際的な比較可能性の担保等の観点から、日本独自の開示項目を早急に決めてしまうのではなく、まずはISSBの気候関連開示基準の策定に積極的に参画し、日本の意見が取り込まれた国際基準の実現を目指すことが望ましいとされています。その後、SSBJにおいて迅速に具体的開示内容の検討に取り掛かることが想定されています。そのため、現時点においては、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の「記載欄」で開示すべきという内容にとどまっています。
なお、「指標と目標」の枠で開示することが考えられる温室効果ガス(GHG)排出量については、投資家と企業の建設的な対話に資する有効な指標となっていることに鑑み、各企業の業態や経営環境等を踏まえた重要性の判断を前提としつつ、特にScope1・Scope26のGHG排出量について、企業において積極的に開示することが期待されるとしています。
また、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき、Scope1・Scope2のGHG排出量の公表が求められている企業については、投資家の投資判断や企業価値との関係で重要性を持つ可能性も高くなることを踏まえ、特にその重要性を適切に評価した上で、開示を検討することが期待されるとしています。その他の企業においても、重要性に基づいた適切な対応が期待されています。
人的資本、多様性に関する開示についても、国内外における議論及び取組みが進んでおり、長期的に企業価値に関連する情報として、近年、機関投資家においても着目されています。こうしたことを踏まえ、本報告では、有価証券報告書の記載項目との関係で、以下のような提言がされています。
| 記載項目 | 開示内容 |
サステナビリティ 「戦略」 |
|
サステナビリティ 「指標と目標」 |
|
「従業員の状況」 |
|
なお、本報告では、「人」に関連する事項として、企業における人権への取組み(いわゆる「人権デューデリジェンス」)の議論に関し、①人権の開示を進めることは重要であること、②人権の開示はより一層難しい課題であり、今後考えていく必要があることの指摘があった旨のみ、脚注において付言されるにとどまっています。
政府(すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部)は、2022年6月3日、女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)(以下「本重点方針」といいます。)9を公表しました。
男女共同参画は国際社会で共有された規範である一方、我が国の共同参画は、昭和の時代に形作られた各種制度、男女間の賃金格差を含む労働慣行、肯定的な性別役割分担意識など、制度・慣行・意識の3つの要素が相互に強化し合っているという構造的な問題を背景として諸外国に比べて立ち後れています。特に、人生100年時代を迎え、女性の人生と家族の姿は多様化しており、もはや昭和の時代の想定が通用しないのが実態です。
このような認識を踏まえ、本重点方針は、下記の4つの柱に基づき、政府全体として今後重点的に取り組むべき事項を定めています。
本稿では、企業の実務への影響が特に想定される点に重きを置いて、本重点方針の概要を紹介します。
人生100年時代を迎え、女性の半分以上は90歳まで生き、離婚件数は結婚件数の3分の1となり、また、有業の既婚女性の6割が所得200万円未満、単身未婚女性の約半数が所得300万円未満である状況が生じています。かかる状況の下、女性が長い人生を経済的困窮に陥ることなく生活できる力をつけることが、女性本人のためにも、また日本の経済財政政策の観点からも、喫緊の課題であるとの認識の下、下記の方針が掲げられています。
男性と女性が同じ組織で働いていても、職務や職責が異なること等から、女性はより低賃金となるといった社内格差(垂直分離)の傾向への対応として、下記の方針が掲げられています。
2022年夏に、女性活躍推進法(省令等)を改正し、男性の賃金に対する女性の賃金の割合に関する開示を常用労働者301人以上の事業主(連結ベースではなく、企業単体ごと)に義務付けるととともに、金融商品取引法に基づく有価証券報告書の記載事項にも、上記開示の記載と同様のものを開示するよう義務付ける。
企業に対して、労務管理の専門家による無料相談や先進的な取組事例の周知等を実施するとともに、労働局による助言・指導等による法の履行確保を図ることにより、正規雇用と非正規雇用の同一労働同一賃金を徹底し、女性が多い非正規雇用労働者の待遇を改善する。
男性と女性は異なる業種や職種に集中しており、女性がより多く占めるサービス業や看護・介護・保育は、比較的低賃金であることが多いといった職種間格差(水平分離)が生じています。かかる傾向に対し、女性がより多く働く業種の賃金を引き上げるとともに、高賃金が見込まれる成長分野への労働移動を支援するため、①女性デジタル人材の育成(就労に直結するデジタルスキルの習得支援及びデジタル分野への就労支援を今後3年間集中的に推進)、②看護、介護、保育、幼児教育などの分野の現場で働く方々の収入の引上げ(2022年2月から実施している賃金の引上げ措置について、2022年10月以降も継続して実施)及び③リカレント教育の推進(大学等における、デジタルリテラシーの育成やDX推進のためのリスキリングを目的としたリカレント講座の開発・実施)の各方針が掲げられています。
上記(1)の他、女性の経済的自立に関し、①地域におけるジェンダーギャップの解消、②固定的な性別役割分担意識・無意識の思い込みの解消、③女性の視点も踏まえた社会保障制度・税制等の検討、④ひとり親支援、⑤ジェンダー統計の充実に向けた男女別データの的確な把握、といった諸観点からの方針が掲げられています。
若い世代の身近な問題として顕在化したアダルトビデオ出演被害を始めとする性犯罪・性暴力や配偶者による暴力の根絶に向けた対策や、働く女性の月経、妊娠・出産、更年期等、女性特有のライフイベントに起因する望まない離職等を防ぐためのフェムテック製品・サービスの活用の推進、女性の健康に関する知識向上のための取組の強化等、女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現のための諸方針が掲げられています。
男女共同参画の実現に向けては、女性の活躍促進と並行して、男性の活躍の場を家庭や地域社会に広げることが不可欠との認識の下、下記のとおり諸方針が掲げられています。
男性による育児休業取得の推進のため、「産後パパ育休」の創設などを内容とする改正育児・介護休業法が2022年4月から段階的に施行されていること10を踏まえ、ハローワークにおける育児休業中の代替要員確保に関する相談支援や両立支援等助成金の周知等を実施する。
労働基準法に基づく時間外労働の上限規制等法定労働条件の履行確保及び長時間労働是正のため、的確に監督指導を行うとともに、企業における働き方改革推進のために必要な支援等を実施する。
転勤等による就業場所の変更の範囲については、ワーク・ライフ・バランス、キャリア形成を左右しうるものであり、労働契約関係の明確化が特に重要となることから、労働条件明示事項に就業場所の変更の範囲を追加すること等について検討する。
コロナ収束後もテレワーク等の多様な働き方を後退させず、コロナ前に戻さないよう、中小企業におけるテレワークの導入を引き続き支援するとともに、テレワークに関する労務管理やICT活用をワンストップで相談できる窓口を設置する。また、地理的・時間的な条件にかかわらずあらゆる地域で同じような働き方を可能とする環境を整えるため、地方創生に資するテレワーク(地方創生テレワーク)を推進する。
男性の育児参画を阻む壁の解消のため、①男性が育児参画するためのインフラの整備(ベビーベッドの男性トイレへの設置等)、②学校関連の活動・行事におけるオンライン化の推進等、③子育て・介護など各種行政手続におけるオンライン化の推進、④仕事と子育て等の両立を阻害する慣行等への対応(園と保護者の連絡が電話や紙で行われることへの対応等)が掲げられています。また、男性の孤独・孤立対策として、男性相談窓口の充実強化が掲げられています。
2020年12月25日に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画11で掲げた目標達成に向けて、政治、行政、経済、科学技術・学術、国際等の諸分野において諸方針が掲げられています。
このうち、経済分野においては、「女性役員情報サイト12」において、プライム市場上場企業を始め、市場ごとの女性役員がいない企業の状況や女性役員比率ランキングを掲載すること等を通じて、企業における役員への女性登用に係る取組を促すことが想定されています。
1「サステナビリティ」の概念は、様々な主体において説明が行われていますが、本報告において明確な定義はなされていません。コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードでは、「ESG要素を含む中長期的な持続可能性」とされています。また、欧州委員会の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)案では、環境、社会、従業員の事項、人権の尊重、腐敗防止、贈収賄防止の事項、ガバナンスの事項とされています。
2 https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20220613/01.pdf
3 金融安定理事会(FSB)により設置され、2017年6月、企業等に対し、気候変動関連リスク等の開示を推奨する報告書を公表しています。
4 具体的開示内容を規定する場合は、市場区分等に応じて段階的な対応を取るべきかといった点も併せて検討することとされています。
5「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(2019年1月)。
6 米国証券取引委員会(SEC)が2022年3月に公表した、気候関連開示を義務化する内容の規則案において、Scope1とは、事業者自らによるGHGの直接排出をいい、Scope2とは、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出をいいます。なお、Scope3とは、Scope1・Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)をいいます。
7 多様性に関する指標については、企業負担等の観点から、他の法律の定義や枠組みに従ったものとすることに留意すべきであるとされています。
8 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育児・介護休業法)等他の法律の枠組みで上記項目の公表を行っていない企業についても、有価証券報告書で開示することが望ましいとされています。また、開示する際には、投資判断に有用である連結ベースでの開示に努めるべきであるが、最低限、提出会社及び連結会社において、女性活躍推進法及び育児・介護休業法に基づく公表を行っている企業は有価証券報告書においても開示することとすべきであるとされています。
9 内閣府男女共同参画局HP「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/pdf/sokushin/jyuten2022_honbun.pdf
10 厚生労働省HP「育児・介護休業法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
11 内閣府男女共同参画局HP「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」(2020年12月25日閣議決定)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/5th/pdf/print.pdf
12 内閣府男女共同参画局HP「女性役員情報サイト」
https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/yakuin.html
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